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管理職などの役職員が、ある一定の年齢で企業から役職を外される役職定年制度。この制度を廃止する企業が増えてきている。一方で、公務員は新たに役職定年制度導入するなど組織によってさまざまな状況だ。雇用に関して流動性が高まる昨今、シニアはキャリアとどう向き合うべきだろうか。
役職定年制度廃止が増える背景とは?
役職定年制度を廃止する企業が増えている。
最近では、2021年に役職定年制度を廃止したNECの事例などが多く報道され、その他も大企業の事例を中心に注目されている。中小企業でもこれまで役職定年を設けていた会社が廃止にかじを切る事例が増えている。
役職定年制度廃止の背景には、「ジョブ型雇用」などの新たな人事制度へと刷新する一環や、人材不足への対応も挙げられるが、社会の流れとしてシニアが長く働き続けるように変わりつつあることも、大きな要因と言える。
日本企業の定年が55歳から60歳へ延長したことによって、ポストをシニアから若手に引き渡し、会社組織の新陳代謝を図るために誕生した役職定年制度。
今や定年上限が、65歳へ、さらに70歳、また定年廃止へと向かう中で、役職定年制度はどのように変化しているのか。それによって会社員終盤から定年後のキャリアはどう変わるのか。役職定年の前後の年代の転職に影響はあるのか。これらの点を解説していきたい。
役職定年のメリット・デメリット
そもそも、なぜ役職定年制度が生まれたのか。それは前述のとおり、1998年に60歳未満の定年制度を禁止する法律が施行されたことに伴い、役職を外すことだけでもこれまでの定年と同じ55歳で行おうという動機だった。
雇用側にとっては、55歳になった社員を役職から外すことによって、60歳まで雇用し続けても人件費を削減することができる。役職手当がなくなることはもちろん、職位が下がることなどからそれまでの年収よりも2~3割減となることも珍しくない。また、限られた役職の席が空き、下の世代に渡されることによって、組織の新陳代謝を図ることができる。
企業が役職定年制度を導入する目的・メリットは、おおむねこの人件費抑制と組織の若返りの2つだ。中には、加齢による能力の低下に応じて役割や責任を下げるという意図を持った会社もあるだろう。
一方、役職定年のデメリットとして最も代表的なものは、役職定年を迎えた社員のモチベーション低下だ。
自身は降格し、これまでの部下が新たな上司となる。自身の年収が大きく下がる。役割もこれまでとは変わってマネジメント側でなくなる上に、新しい仕事にやりがいが持てるとは限らず、モチベーション低下を生じやすい。
また、働き続ける年齢が上がっていることによって、役職定年以降の在籍期間が非常に長期間となる場合があり、そのことも問題の深刻さを高めている。
【次ページ】有能な社員ほど役職定年前に転職…
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