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厚労省が7月に発表した日本の最新の貧困率は、3年前に比べて改善したものの、米韓にも抜かれ先進国の中で最悪となった。実際、コロナ前の2018年よりも、生活が苦しくなった実感がある人は少なくないだろう。しかし、数値を見れば日本全体の貧困率、子どもの貧困率、ひとり親世帯の貧困率も改善はしている。この状況をどう捉えるべきだろうか。仕組みとともに、日本の貧しさの実態を解説する。
先進国で最悪の数値、米韓に抜かれた日本の相対的貧困率
日本の相対的貧困率が米国や韓国にも抜かれ、先進国で最悪の数値となったことが報道され、話題となった。これは厚生労働省が2023年7月4日に公開した「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」で、2021年の相対的貧困率が15.4%と示され、これを経済協力開発機構(OECD)が公表している各国の貧困率と比較したものである。
OECDが公表している各国の貧困率は、引用データごとに異なる年次のものが出ている。8月1日現在、韓国は2020年のもので15.3%、米国は2021年のもので15.1%なので、たしかに日本の15.4%という数値はさらに高い。ただ、OECDが掲載している日本の2018年のデータ(前回の厚労省公表データ)は15.7%なので、その時点からは若干下がったと言える。
日本の子どもの貧困率は11.5%、ひとり親世帯の貧困率は44.5%で、日本全体は15.4%。いずれも2018年のデータからは低下している。国民全体では6.5人に1人が貧困、子どもは8.7人に1人が貧困であるのに対して、ひとり親の2人に1人が貧困で依然として高いという報道の論調が多い。
日本の貧困は以前よりも改善されているものの、諸外国よりも貧困の割合が高いこと、そして、ひとり親の貧困の割合があまり改善されていないことに大きな問題があるように感じられる。
しかし、問題はそれだけにとどまらない。
貧困率とは?「相対的貧困率」と「絶対的貧困率」の違い
そもそも厚労省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」やOECD公表のデータにおける「相対的貧困率」と「絶対的貧困率」は何なのか。
相対的貧困率は、等価可処分所得の中央値未満の国民の割合を指す。ものすごくざっくり言えば、全国民のうち収入が真ん中より下の人が「貧困」となる。
一方絶対的貧困率は、最低限度の衣食住、医療などを得られない世帯割合を示す割合だが、具体的にどれくらいの収入以下かなど、国などで基準がまちまちである。
可処分所得や等価可処分所得についても説明しておこう。可処分所得とは、収入から税金や社会保険料を引いた、いわゆる手取りのことだ。2015年に基準が改定され、自動車税や企業年金も引いた金額が可処分所得となっている。
等価可処分所得とは、子どもなど収入がない人も含めて、世帯を構成する1人ひとりが使えるお金をリアルに表現するための考え方だ。
たとえば、それぞれ年収300万円ずつで世帯収入が600万円の夫婦と単身で年収300万円の人とでは、一人頭の収入は同じでも、一般的に複数人の世帯のほうが節約の効果が得やすく、大きい買い物もしやすい。そのため、単純に可処分所得の合計を世帯員の数で割るのではなく、世帯全体の可処分所得を世帯員数の平方根で割ったものが等価可処分所得だ。世帯員が増えるほど豊かという計算結果となる。
「子どもの貧困率」は、上記のような計算で子どもについても求められた等価可処分所得が、子どもの中で真ん中よりも少ない割合となる。
また、「ひとり親世帯の貧困率」というのは、正確には「世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯のうち、大人が1人の世帯」の貧困率のため、親ではなく兄弟の年長者が世帯主のケースや、1人で孫を養っているケースなども含まれる。
実は日本の可処分所得の平均は細かく見れば上下しているが、この20年間大きく変わっておらず「横ばい」という表現でも問題ない。むしろ2018年以降は伸びている。
冒頭のとおり、貧困率もわずかながら改善しており、子どもの貧困率の回復度合いはそれなりに大きい。この状況から、外国の貧困率の改善が大きいだけで、日本の貧困率の状況は言うほど悪くないのでは、と考える人もいるだろう。そもそも、貧困率の計算は所得のみでされていて、資産が計算されていないため、実態を正しく示していないという考えもあるだろう。
しかし、実はこの貧困率の計算方法自体、注意が必要である。実態はもっと深刻であるかもしれないのだ。
【次ページ】実態はもっと深刻?日本の貧困のほんとう
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