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昨年に引き続き、夏のボーナスが増額される報道が多く出ている。政府は賃上げに注力しているが、実際に賃上げを実感している人はどれくらいいるだろうか。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」をもとに、賃上げの実態と今後の展望を考察する。
賃上げと少子化対策が目玉、政府の「骨太の方針2023」
現在、政府が経済政策の目玉としているのは、少子化対策と並んで賃上げだ。この2つについては、岸田総理の会見や演説などで耳にする機会が多い。特に昨年からはこれらの言葉が何度も登場している。
2023年6月末時点での大きなトピックスとしては、6月16日に少子化対策や賃上げについても触れられている「骨太の方針2023」が閣議決定された。今後、この内容に基づいて来年度予算案が作られていくだろう。
また、6月21日には通常国会の閉会にともなう記者会見でも岸田総理は、「賃上げが当たり前となる経済」を目指すとした決意を語るとともに、今年の春闘の結果が30年ぶりの高水準の賃上げとなったことに触れていた。
6月21日の記者会見で総理が触れたように、実際に賃上げが行われたニュースを目にする機会は確かに増えている。しかし当たり前だが、すべての労働者の給料が上がったわけではないだろう。
どんな人の給料が上がり、どんな人は上がっていないのか、今年3月に厚労省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果をもとに考察する。
短時間労働者の賃金は男女ともに減少
「令和4年賃金構造基本統計調査」は、その名の通り令和4年(2022年)の賃金の統計調査で、2022年6月分の賃金を翌7月に集計したもの。1年前の集計結果だが、公的なまとまった資料としては最新である。
まずは厚労省の報道発表資料に記載された「調査結果のポイント」の内容を見てみよう。
1 一般労働者(短時間労働者以外の常用労働者)の賃金(月額)
男女計 31万1,800円(前年比1.4%増)
男性 34万2,000円(同 1.4%増)
女性 25万8,900円(同 2.1%増)
※ 男女間賃金格差(男=100)75.7(前年差0.5ポイント上昇)
2 短時間労働者の賃金(1時間当たり)
男女計 1,367円(前年比1.2%減)
男性 1,624円(同 0.4%減)
女性 1,270円(同 1.6%減)
このデータを見て気がつくのは、この資料では正社員を指す、一般労働者については、1年前より賃金が上がっているものの、短時間労働者、いわゆるパート・アルバイトについては、賃金が下がっている点である。つまり、正社員と短時間労働者との格差が拡大していると言える。
一方、男女間の賃金格差は、1年前と比べて格差が縮小している。実際にこの男性を100とした場合の、女性の賃金の75.7という数字は過去最高で、もっとも男女間の賃金格差が縮まった年だったと言えるだろう。
しかし、男女間の賃金格差についても注意すべき点がある。それは、この数字が正社員の男女間の賃金格差だということだ。
正社員の男女、短時間労働者の男女それぞれの賃金の前年比を見ると一目瞭然だ。男性正社員の前年比が1.4%増なのに比べて、女性正社員の前年比は2.1%増と大幅に伸びた。だが、短時間労働者は男女どちらも減少。男性が前年比0.4%減にとどまったのに引き換え、女性短時間労働者では1.6%もの減少となっている。
つまり、正社員の男女間賃金格差は過去最高レベルまで縮まったが、短時間労働者の女性を含めると、格差が縮まっているとは言えない。現に、総務省の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果」を参照すると、非正規の職員・従業員もパート・アルバイトも、男性に比べ女性が圧倒的に多い。
男性の非正規の職員・従業員が669万人であるのに対し、女性の非正規の職員・従業員は1432万人、女性の正規の職員・従業員は1249万人であるので、それより多いということになる。
男女格差が2年連続で最小となった報道も多く見られたが、うのみにしてはいけない。
【次ページ】広がる企業規模・地域・職種間の格差
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