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- 2025/03/12 掲載
日立・ローソンも導入、ジョブ型雇用は日本に根付く?揺れる採用と4つの課題
日立やローソンでも、いよいよ日本もジョブ型雇用へ?
日立製作所やローソンなどの大手企業を中心として「ジョブ型」の雇用制度導入のニュースがある一方、政府は2024年9月に「ジョブ型人事推進会議」を開催するなど、ジョブ型雇用の定着に向けた旗振りを行っている。従来の日本式のメンバーシップ型雇用から脱却し、海外で一般的なジョブ型雇用を目指す議論はこれまでも活発だったが、依然として配置転換のある企業が多い。配属が入社後の教育を経て決まる新卒一括採用も続いている。
とはいえ、新卒エンジニア採用など、新卒でも職種を定めて採用する企業が増えており、いよいよ日本でもジョブ型雇用に切り替わるのではないかという雰囲気があるのは確かだ。
筆者が代表を務めるシニアジョブも、新卒採用の職種を分けているだけでなく、専門職など一部の職種は配置転換を行っておらず、かなりジョブ型雇用に近い。私たちが支援しているシニアの転職もまた、応募職種の経験・スキルが評価されるため、やはりジョブ型に近い状況だ。
筆者は今後、ジョブ型に近い雇用が増えると考えている。しかし、日本企業が海外のようなジョブ型雇用に向かうにはいくつかの課題があり、今すぐは難しいと考えている。
新卒一括採用で配置転換も容易だった日本
日本でのジョブ型雇用移行の課題について述べる前に、まずは日本と海外の雇用文化の違いについて解説しよう。よく日本はメンバーシップ型雇用、海外はジョブ型雇用と言われるが、メンバーシップ型とジョブ型の大きな違いは、配置転換の難易度である。
日本のメンバーシップ型では、従業員は企業の命令で異なる職種・業務内容にも比較的簡単に配置転換可能だ。対して、ジョブ型では異なる職種への転換のハードルが高く、国によっても異なるが、まるで転職したかのような雇用契約のやり直しに近い場合もある。米国のような解雇のハードルが低い国では配置転換よりも解雇が一般的だ。
海外のジョブ型では、ジョブディスクリプション(職務記述書)と呼ばれる職務の内容を詳しく書いたものを作成し、それに基づいた採用や雇用契約、そして仕事が行われる。ジョブディスクリプションに記されない仕事の担当することや、ジョブディスクリプションを見直さないままの配置転換は基本的にない。
配置転換の難易度のほかにも、日本と海外の雇用文化の違いはある。現在ではだいぶ変化してきたが、かつての日本では新卒一括採用や終身雇用が一般的だった。それに加えて日本は解雇のハードルが比較的高いと言われ、これらの特徴も日本の雇用文化を形作っている。
海外ではそもそも学校の卒業と同時に就職する文化がなかったり、資格取得が優先されたりする国が多いが、日本では新卒学生を一括採用後に企業が教育し、そこで能力や適性に合わせて人員配置している。その後、業績悪化や事業転換などがあっても、解雇する前に配置転換を含めて対応する努力が企業に求められ、それが定年まで続く。この一連のプロセスが日本のメンバーシップ型雇用を生み出してきた。
つまり、単に配置転換をせず、職種を固定して採用・活用するだけではなく、新卒一括採用や解雇の仕方なども含めて変化しなければ、海外のジョブ型雇用には近づかないだろう。その実行には大きく4つの課題が立ちはだかる。 【次ページ】日本でジョブ型が難しい4つの理由
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