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  • 2020/02/03 掲載

実はトランプ政権はGAFAにこれだけ「貢献」してきた 政策まとめ

米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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今年は、トランプ政権が4年目に突入する一方、米大統領選挙が行われる節目の1年だ。トランプ現政権のIT政策が米経済のけん引車であるテック産業に過去3年に及ぼしてきた影響を振り返ることは、米経済や政治の将来を占う上で示唆を多く与える。この記事では、テック大手への数々の“口撃”の裏で、実はどのようにトランプ政権がその繁栄に貢献してきたのか、法人税制、買収と合併、規制緩和、政府調達などさまざまな指標を通して一挙に評価する。トランプ氏の再選・不再選が将来的に米国のテック産業をどのように変えるかを占って行く。
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2020年11月に控えた米大統領選。この数年大きく伸長してきた米テック視点でトランプ政権を評価する。
(写真:ロイター/アフロ)


テックが大躍進した「トランプ・テック相場」(評価A+)

 まずは、トランプ大統領の就任以来の株価からおさらいしよう。米各種株価指標は過去最高値を更新し続けており、それを主に牽引しているのがグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの「GAFA」にマイクロソフトなども含めたIT大手である。

 S&P 500のテクノロジー分野は2019年だけで48%上昇し、iPhone11やAirPods、App Storeなどの売上が絶好調のアップルに限れば84%も上げた。ナスダック市場は2020年に入って史上初の9000ポイント、ダウ平均は29000ポイント超えを達成したが、その中でアップル、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベット、アマゾンとフェイスブックが米株式市場全体の時価総額の18%を占めていることは特筆に値する。

 さらに、アップル、マイクロソフト、およびアルファベットは米史上初の「時価総額1兆ドル企業」という偉業を成し遂げ、株価も過去最高値を更新し続けている。規制や分割で大統領選の候補者や当局から最もやり玉に挙げられやすいと見られているフェイスブックやグーグルでさえ2020年に入っても順調に上げていることは、IT大手に対するトランプ政権の姿勢が基本的に「フレンドリー」であると市場が見なしている1つの証左といえよう。


包括的税制改革法でテックの財政基盤を大幅強化(貢献度:A+)

 トランプ大統領は政権1年目に早くも、現在のIT企業の収益や結果としての「テック相場」に大いに貢献する重要な政策を、抜群の実行力で成し遂げた。

 それが、2017年12月に成立させた包括的税制改革法だ。最高法人税率を35%から21%へと大幅に引き下げる一方、米国の高い税率ゆえにアイルランドなど海外で税逃れ的に留保していた巨額の利益を米国に持ち帰る際の税率を、さらに低い15.5%にすることで、米テクノロジー企業の財政基盤を数兆億円規模で大いに強化した。

 また、アマゾンが2017年と2018年に連邦法人所得税をまったく支払わず、内国歳入庁(IRS)から1億2900万ドル(約141億9千万円)の「過払い還付」さえ受けていた案件についても、同社やジェフ・ベゾスCEOを鋭く口撃するトランプ大統領でも、問題化させる気配すらない。

 アマゾンの2018年の課税対象となる純利益は約112億ドル(約1兆2千億円)で、トランプ減税後の所得税率の21%を適用すると、本来であれば約23億ドル(約2500億円)の所得税を納めるはずであった。

 投資による税控除や幹部への報酬支払いの一部を課税対象にならない自社株で行うなど、アマゾンが使った手法は合法的なものであり、トランプ政権は政策的にそのような仕組みを不問に付すことにより、米IT企業の財政的な成功と成長を確実なものにしたといえる。こうした中、アップル、グーグル、マイクロソフトが時価総額の1兆ドル超えを達成したのは象徴的だ。

表面的な批判の裏で独占容認(貢献度:B+)

 トランプ政権は、IT企業の合併や買収を奨励する政策を採用し、テック産業の発展に大きく貢献してきた。まず、トランプ大統領は「アマゾンは独占禁止法違反」と批判していたもかかわらず、実際には2017年に同社による高級生鮮スーパーのホールフーズ買収を認可している。

 さらに、トランプ政権は米携帯通信のTモバイルUSが同業のスプリントを265億ドル(約2兆9000億円)で買収する計画に対し、「助け船」さえ出した。具体的には、当該の合併がサービス価格の上昇につながるとして複数の州が差し止めを求めて起こした裁判で、米司法省と米連邦通信委員会(FCC)が共同文書を裁判所に提出し、「合併を承認すれば消費者の利益にかなう」と主張したのである。

 この裁判で証言したカリフォルニア大学バークレー校のカール・シャピロ教授は、「両社の合併で消費者が支払うサービス価格が最大で87億ドル上昇する可能性があるにもかかわらず、反トラスト当局は問題のある合併を阻止するどころか、実現に向けて応援している」と法廷で反論している。

 これらの実例から読み解けるのは、表面的なテック大手に対する反トラスト批判にもかかわらず、トランプ政権が本質的には独占に対して寛容であり、買収や合併を奨励して産業基盤を強化しているという姿だ。

 また、反トラスト当局が検討しているとされるアマゾンとそのクラウド部門であるアマゾン ウェブ サービス(AWS)の分割は、株主の利益になるものだとして、検討を求める投資家の声がここ数年高まっていたものであり、アマゾンの利益にもなり得るものである。顧客の不利益の是正や企業の権力の肥大化防止が第一義的な目的ではなさそうだ。

 一方で規制当局は、フェイスブックからメッセージサービスの「WhatsApp」やソーシャルメディアの「Instagram」の分離を検討していると報じられている。これらのサービスのシームレスな結合は、フェイスブックの暗号通貨構想「Libra」の実現にとって不可欠なものだ。もしトランプ政権が実際に分割に動けば、買収や合併を奨励する政策の例外として捉えられる。

 ただ、Libraは国家主権や金融政策への挑戦であるとみなされているため、買収や合併に好意的な政権であっても、「(WhatsAppやInstagramの統合により)国家の金融主権侵犯の一線は越えさせない」というメッセージがあるかもしれない。

 全般において企業寄りの姿勢、特にIT産業の保護が主眼であるというトランプ政権3年間の実績を変えるものではないだろう。

【次ページ】政府基幹クラウドの調達(貢献度:A+)
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