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- 2019/08/13 掲載
MaaSの2019最新動向を解説:今後の市場規模は?「モネ」「Whim」はどう動く?
いまさら聞けない、「MaaS」とは何か
「100年に1度のモビリティ革命」「今年はMaaS元年」と言われ、ホットワードとなっている「MaaS(マース)」。英語のMobility as a serviceの略で、直訳して「サービスとしての移動手段」で「次世代移動サービス」と呼ばれることもある。“従来型の交通・移動手段”は電車、バスなどの公共交通機関、“シェアリングサービス”とは「Uber(ウーバー)」「Airbnb(エアビーアンドビー)」のような、物品シェアの仲介をする新興サービスを指している。両者をモバイル通信や最先端のICTを活用しながら統合し、移動経路や時刻の検索も、予約も、キャッシュレス決済による支払いも、すべて一気通貫で行えるようにするのがMaaSである。
MaaS市場は2030年、国内だけで6兆円に
なぜMaaSは自動車業界だけでなく産業界全体から、さらに政府や自治体からも注目されているのか?それは、その市場規模が世界的に21世紀前半、著しい成長を遂げると予測されているからである。三菱総合研究所が『MRIマンスリーレポート』2018年11月号で発表した「MaaSが普及した場合の世界の自動車関連市場予測」によると、自動車の製造、燃料のガソリンや電気の販売、有料道路まで含めた全世界の自動車関連市場は2018年現在、日本円換算で650兆円だが、それが2050年には約2.3倍の1500兆円に拡大し、その6割の900兆円がMaaS関連で占められるという。つまり、2050年までの30年余りの間に、現在の自動車関連の世界市場の約1.4倍というビッグマーケットが新たに出現することになる。MaaSの成長力は、極めて大きい。
プライスウオーターハウスクーパーズ(PwC)の「デジタル自動車レポート2018」でも、MaaSの市場規模はアメリカ、ヨーロッパ、中国の3地域合計で2030年、1.4兆米ドルに達し、2017年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は25%と予測されている。2030年には自動車業界ではMaaSが売上ベースで22%、利益ベースで30%を占め、新車販売と肩を並べるセクターに成長する。大きな構造転換が起きようとしている。
三菱総研のレポートでは、2050年のMaaS世界市場の地域別の内訳も予測している。それによるとOECD加盟国のような先進国は10%にすぎない。中国とインド、ロシア、南アフリカ、ブラジルなど現在の新興国をあわせても21%で、全体の69%は途上国などそれ以外の国々で占められる。
三菱総合研究所政策・経済研究センターの木根原良樹氏は次のように述べている。
「急成長を後押しするのは新興国や途上国。自動車の個人所有が進んでいないこうした国々ではライドシェア(相乗り)への抵抗感が少なく、政府もMaaS導入策を講じやすい」
21世紀半ばになれば、MaaSは国籍や民族や経済格差に関係なく、地球上のあらゆる地域に住む人々の移動の際、あまねく利用されるユニバーサルサービスになりそうだ。今はMaaSといえばカーシェアリング、自動運転、電気自動車、車載通信機(DCM)など自動車まわりの話題が先行しているが、途上国では自動車と、輪タクやロバやラクダやカヌーが連携することも、あり得るだろう。
では、日本のMaaS関連市場は今後、どれぐらいの成長が見込めるのだろうか?
2018年12月に矢野経済研究所が発表したレポート「2019年版MaaS市場の実態と将来予測」によると、2018年に845億円だったMaaSの国内市場は、2020年には約2.3倍の1940億円、2025年には約25倍の2兆1042億円、2030年には約75倍の6兆3634億円に達すると予測されている。
ゼロから立ち上がるサービスが多いために2016年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は44.1%で、PwCがほぼ同期間について予測した米欧中のCAGR25%よりも大きい。
世界でも日本でも2020年代にめざましく伸びると見込まれるMaaSは、企業経営的に見れば近未来、10年、20年先の長期ではなく、中期経営計画に織り込み本腰を入れて取り組むのに値する直近の成長市場と言える。
MaaSの代表的プロジェクト、トヨタ×SBの「モネ」
2018年9月には、豊田章男社長がクルマづくりの会社を超えて人々の移動を助ける「モビリティ・カンパニーを目指す」と宣言したトヨタ自動車と、ICTの有力企業ソフトバンクが共同で「モネ・テクノロジーズ(Monet Technologies)」というプロジェクトを立ち上げた。この「モネ」は2019年3月に日野、ホンダ、6月にはいすゞ、スズキ、SUBARU、ダイハツ、マツダと資本・業務提携を結び、「日産・三菱・ルノー連合」以外の国内自動車メーカーがほぼ勢ぞろいした。プロジェクト参加企業は自動車・ICT企業以外にも幅広い業種にわたり、6月には200社を超えている。豊田市、横浜市、福山市、伊那市、加賀市など地方自治体とも協定を締結。始動から間もなく1年、「モネ」はすでに「日本のMaaSの本命プロジェクト」と目されている。
【次ページ】なぜ三井不動産はフィンランドのMaaS「Whim」と組んだのか
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