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年明け早々、ソニーが新会社「ソニーモビリティ」を立ち上げて自動車業界への参入を本格的に検討するというビッグニュースが舞い込んできた。「クルマ作りに革命を起こす」「ソニーにクルマは作れない」など、さまざまな反響を引き起こしているが、筆者は電動化や自動化が進むいま、この決断はまったく不思議ではないと考える。その理由を説明していくことにしよう。
スマホ主役の2010年代、2020年代はモビリティの時代に
家電見本市という本来の名称とは裏腹に、デジタルテクノロジーの披露の場になりつつあるのが、毎年1月に米国ラスベガスで開催されるCESだ。2021年の全面オンライン開催を経てリアルとのハイブリッド開催になった今年も、傾向は変わらなかった。
自動車関連の展示が多くなっていることも最近の傾向だ。しかも既存の自動車メーカーだけでなく、ベンチャー企業の参加も目立っている。モノが大きいだけにショーの主役となることも多く、それがさらなる出展を誘う結果になっている。
今年も例外ではなかった。ただし主役は自動車メーカーでもベンチャーでもない。家電見本市という本来の名称にふさわしい企業、ソニーグループだった。彼らはSUVタイプの電気自動車(EV)コンセプト「VISION-S 02」を公開するとともに、新会社「ソニーモビリティ」の立ち上げをアナウンスしたのだ。
CES 2022におけるソニーグループのプレゼンテーション
ただし、ソニーがコンセプトカーを世に問うのはこれが初めてではない。2年前のCESでセダンタイプの「VISION-S」を公開している。
そのときは、開発の目的として同社が持つイメージング・センシング技術、オーディオ・エンターテインメント機器、車載ソフトウェアなどの最先端テクノロジーを組み合わせることでモビリティの進化に貢献していきたいとしており、自動車業界に参入するとは言っていなかった。
しかしこれは、日本流のオブラートに包んだ発言だったことが、ソニーのウェブサイトにあるVISION-S
特設ページを見ると分かる。
プロジェクトに関わったスタッフは、スマートフォンが主役だった2010年代が終わり、次の10年はモビリティだという認識を持ち、「CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)」においてコネクテッド、自動化、電動化はすでに手がけていたことにも触れて、安全対策や法規順守を考えればリアルにデザインすべきと語っているからだ。
自動車業界の電動化・自動化の流れがソニーの追い風に
VISION-Sのデザインについては、スマートフォンやカメラなど社内のさまざまな分野のデザイナーが集結し、単なるスタイリングだけではなく、AV(オーディオ・ビジュアル)やIT機器を作り出してきたソニーならではの機能美、リアルなコンテクスト、UXストーリーなどを重ね合わせたと説明している。
生産はオーストリアのマグナ・シュタイアが担当する。同社はトヨタ自動車がBMWと共同開発したスポーツカー「GRスープラ」を手掛けるなど、既存の自動車メーカーの車両も多く請け負う企業だ。開発にはボッシュやコンチネンタル、ヴァレオといったビッグサプライヤーも協力している。
2021年にはオーストリアの公道でテストを開始し、ドイツのテストコースでは5Gを使った遠隔操作での自動運転にも挑戦。東京からの操縦で安全に走行可能という結果を出している。
単なる技術のショーケースとして作ったのであれば、ここまでデザインにこだわらないし、テストもしなかったはずだ。
しかもこの間、欧州や米国、日本でカーボンニュートラルのための電動化ロードマップが明らかになり、本田技研工業が市販車初の自動運転レベル3を実現するなど、自動車業界では電動化や自動化の流れが加速していた。
こうした世の中の変化を感じて「いける」と判断し、新会社を作って挑むという明確な姿勢に変わったではないかと、筆者は想像している。
【次ページ】「ソニーにクルマは作れない」は本当か? 思い出してほしいトヨタの始まり
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