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  • 2019/05/27 掲載

現場の反応は?人手不足の外食店舗救う「配膳ロボット」最前線

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少子高齢化による労働力の減少傾向にある日本。その解決策としてロボット産業が注目を集めている。特に今後業界の主役となるのが「サービスロボット」だ。介護や警備、掃除、配膳などのサービス業務に携わるロボットを指す。中でも、飲食店向けの「配膳ロボット」は、人手不足に苦しんでいる外食産業からの期待が非常にも大きい。配膳ロボットの導入効果はどれくらいなのか。実際に配膳ロボットを導入している国内外食チェーンへの独自取材と、統計を基にした国内外の最新動向から探る。
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ミッドタウン日比谷 Q Cafeで稼働する配膳ロボット


国内外食チェーンで進む配膳ロボット導入、現場の声は

 日本の外食産業が今、配膳ロボットの導入に動き始めている。大手外食企業のロイヤルホールディングスは2018年3月、東京の「ミッドタウン日比谷」内に開店した「Q Cafe by Royal Garden Cafe(キューカフェ・バイ・ロイヤルガーデンカフェ)」にシャープ製の箱型配膳ロボットを初めて導入した。配膳ロボットはレンタルスペースである「ワークスペース」内での注文のみに使われている。

「お客さまのそばを通るため安全性を最重要視するので『配膳のスピードが遅い』など、まだ課題は多いのですが、食事を終えた食器をキッチンへ運ぶほうは問題なく稼働しており、有効に活用できています。広々とした環境であれば活躍の場はより増えると考えています」(ロイヤルホールディングス 経営企画部コーポレートコミュニケーション)

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キッチン前からカフェスペースを抜けワークスペース内へ。配膳が終わると店外の通路(写真左側)に出て、元の場所に戻る
 ロボットの関心度は高く、わざわざロボットを見たくて来店する人までいるという。その意味では、集客効果も見込めそうだ。まだ検証段階なので今後の導入予定は未定というが、同社は「ITによる効率化と顧客サービス向上は矛盾しない」と考えている。

 和食店チェーンのがんこフードサービスも2017年12月に懐石料理の「がんこ高瀬川二条苑」(京都市中京区)で試験導入を始めた。シャープ製の箱型配膳ロボットである「AGV(Automatic Guided Vehicle)」は、工場や倉庫で資材運搬用に使われている磁気センサーで運転制御する無人搬送ロボットを改良したもので、産業技術総合研究所が開発に協力した。

「省人化やさらなる付加価値を求める機械化『レストランテック』は、来店されるお客さまにとっても身近な関心事になっています。ロボットだけでなく企業としての新しい取り組みが好評価を得ていると感じています」(がんこフードサービス 営業推進部)

 同社は今後、毎年1~2店舗のペースで導入を計画しているという。

ロボット産業の主役を目指す「サービスロボット」

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 ロボットは大きく「業務用(産業用)ロボット」「サービスロボット」の2種に分けられる。業務用ロボットとは、主に食品などの製造工場の生産現場で稼働するロボットを指す。人間の手の動きに似たアーム型をした産業用ロボットがイメージしやすいだろう。

 一方、ロイヤルHDやがんこフードサービスが導入したような配膳ロボットはサービスロボットに含まれる。サービスロボットは物流、小売、サービス業など非製造業、サービス部門で働くものを指し、技術的にも商業的にも進境著しい。

 サービスロボットの世界市場はこの数年、急速な成長を遂げている。国際ロボット連盟(IFR)の「World Robotics Report 2018」によると、2016年から2018年(推計値)にかけて、台数ベースでは約2.8倍、金額ベースでは約1.8倍まで拡大した。

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全世界の業務用サービスロボットの売上台数、売上高の推移

 2018~2019年の成長率予測は台数ベースで85%、金額ベースで39%となっている。IFRは2019~2021年の年平均成長率(CAGR)を台数ベースで21%、金額ベースで19%と予測している。その他、市場調査会社の富士経済では、サービスロボットの世界市場は2025年に5兆7479億円(518億米ドル)に達すると予想している。

 経済産業省・NEDO「ロボット産業将来市場調査」による予測も紹介する。日本国内においては2020年時点ではまだサービス分野より製造分野のほうが市場規模で勝る見通しだ。しかし2025年には逆転、2035年にはサービス分野の市場規模は製造分野の約1.8倍に拡大すると予測されている。国内でも今後、ロボット産業の成長の主役はサービスロボットになると見込まれている。

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日本のロボット産業の将来市場予測

危機的状況が慢性化している日本の外食産業

 国内外で今後の成長が大いに期待できるサービスロボット。特に、外食産業の店舗で活躍する「配膳ロボット」は日本でも導入が進む余地が大きい。産業規模が大きく広範囲のニーズがあるからだ。

 外食産業の人手不足は深刻だ。帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2019年1月調査)によると、飲食業の企業が「人手不足」と回答した比率は、正社員は65.9%で全業種中で第5位、非正社員は84.1%で全業種中第1位だった。第2位の「飲食料品小売」の67.7%を16.4ポイントも引き離し、群を抜く人手不足が感じられる。飲食業は2年前の調査でも80.5%だったので、危機的状況は慢性化している。

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飲食店が「人手不足」と回答した比率の推移

 飲食店では「未経験者可」という条件も最近は増えているが、時給をアップしても人がなかなか集まらないところが多い。客数が伸びて業績好調な外食企業においても、優秀な店長候補生はいてもホールスタッフのパートやアルバイトが集まらないために開店を延期したり、出店計画を見直さざるを得ないという話は枚挙にいとまがない。

 ロボットがこれまで人手頼りだった「配膳」を自動化することで、人手不足を緩和できるのではないかと期待されている。

インサイト抽出まで、進化する配膳ロボット

 配膳ロボットにも機能に応じていくつかのタイプがある。最も単純なのは、厨房(ちゅうぼう)でトレーに料理を載せて、指示された客席のテーブル脇までゆっくりと「運ぶだけ」のタイプだ。

 客一人ひとりへの配膳はホールスタッフが手で行う「ロボットと人間のリレー方式」で行う。客が帰った後は、スタッフが手で回収した食器をトレーに乗せて、ロボットは厨房まで戻る。このタイプはすでに実用レベルに達している。ホールスタッフはロボットが来るのを待っていればいいので動線は短くなり、省人化できる。

 この「運ぶだけ」ロボットを発展させ、客への配膳までロボットアームが行いホールスタッフ業務を完全無人化できるものもあるが、まだ研究段階にある。「ロボットアームでお客さまにケガをさせたりしないか」「料理をこぼしたり、ひっくり返したりしないか」「ロボット導入のコストに見合うか」など解決すべき課題がまだまだ多いのが現状だ。

 上記以外にも「言語機能」を搭載する配膳ロボットも研究されている。シェフの代わりにロボットが料理を説明したり、客と対話して「お味はいかがですか?」と感想を収集したり、おすすめ料理をPRして追加注文を受けるような役割を担う。

 客が注文した料理や服装、言葉、態度などを観察して集めたデータをクラウドに吸い上げて分析。その結果から「この店は客筋が良い。もっと高価格帯の料理を出して客単価を上げるべきだ」というインサイト(隠された心理)をマーケティングに生かすことも考えられている。

【次ページ】“先進国”中国ではロボットレストランも登場
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