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  • 2015/02/18 掲載

すかいらーく 神谷勇樹氏が明かす、1か月半で100万DL達成の「ガストアプリ」開発秘話

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「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」など、全国に約3000店舗を構え、2014年10月には再上場を果たしたファミレス最大手のすかいらーく。同社の店舗には、年間のべ4億人がおとずれる。そのすかいらーくで、ビッグデータを活用したマーケティング施策を手がけているのが、マーケティング本部 インサイト戦略グループ ディレクターの神谷勇樹氏だ。第3回ITACHIBA会議に登壇した神谷氏は、2014年の上半期において「(前年同期比で)広告宣伝費を3億円削減したが、売上は40億円増となった」と取り組みの成果を明かした。

1/100のコストで高いROIをたたき出した「ガストアプリ」

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ガストアプリ
 すかいらーくの2014年の上半期の広告宣伝費は前年同期比で10%減となった。その要因について、神谷氏は「一番大きかったのは費用対効果の高い施策へ資源をシフトしたから」と語るが、その背景にはさまざまなプロモーション活動のROIを明確化し、ROIの低いプロモーションを改善したり、廃止するといった地道な取り組みがあった。

 また、2014年下半期に取り組んだのが「ガストアプリ」の開発だ。アプリ限定クーポンの提供、来店で貯まるポイントシステム、店舗検索、メニュー紹介などの機能を備えた同アプリは、10月9日のプロモーションスタートから約1.5か月で100万ダウンロードを達成した(追記:先週、200万ダウンロードを突破したそうだ)。

 実は同社では、2008年から携帯のクーポンサイトを提供していたが、アプリのリリースからおよそ1か月で、クーポン利用者数ベースでこれを抜いてしまったという。「現在だいたい1.5倍ぐらい使われている」(神谷氏)として、同社の主たる販促チャネルである新聞折り込みチラシ以上の効果をもたらした。

 アプリでのクーポン提供は、「コストでいえば(折り込みチラシの)1/100ぐらいに過ぎず、ROIでいえばかなりの改善につながった」という。

 このアプリ開発の正式発注が行われたのは5月の半ば。要件定義や設計、テストを並行して2か月ほどで行い、わずか2か月半でリリースした。まずはとにかくリリースし、そのうえで動作確認を実施。バグも減ってきた10月頭の段階で正式にローンチした。

 ガストアプリが目指したのは、MAU(月間アクティブユーザー数)で2000万ユーザー、DAU(一日あたりアクティブユーザー数)でピーク200万ユーザーに対応できるシステム。「これをすべて請け負ってくれるベンダーがいるかというといない。ゼロからつくって、必要最低限の機能を2か月半でリリースしてくれるベンダーさんも当然ながらいない」(神谷氏)という中で、同社のマーケティング部門主導で、開発に取り組んでいったという。

 実は神谷氏の前職はグリーだったため、当時のツテを辿って、大規模サービスのアーキテクチャをベンダーと一緒につくりあげていった。極めて短期間のうちにアプリ開発を実現した同社だが、開発期間の中で時間を使うと実感したのが「考えている時間だった」という。そこで、利用者の目線で、ここは機能レベルを下げてもいいところ、ここは絶対にダメだから譲れないという判断を、その都度即決していった。その上で、「プロジェクトリーダーであるマーケティング部門がやりきるところが大事だった」と振り返った。

なぜアプリ開発をマーケティング部門が主導したのか

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すかいらーく
マーケティング本部
インサイト戦略グループ
ディレクター
神谷 勇樹 氏
 では、そもそもなぜアプリの開発をマーケティング部門が主導したのか。神谷氏の答えは大きく3つある。

 1つめは、攻めのITと守りのITで、違う素養・スキルが必要とされるということ。攻めのITでは、今回のアプリ開発のように、ある程度の段階でリリースしてしまい、数字を見ながら改善していくことが必要だ。「その結果、当初考えていたものと全然違う姿になることもありうる」。また、スピードを出すために少人数で進めていく必要もある。

 一方、守りのITは、基幹系のように絶対に止められないシステムであり、カットオーバーのあとにトラブルが発生してはならない。また大規模なプロジェクトマネジメントのスキルも重要になる。「どっちも必要であり、できるできないではなく、向いているか向いていないかの話」。

 2つめは、ITの敷居が下がっているということ。今回のアプリ開発ではクラウドを積極的に活用したが、「(マーケティング部門は)インフラの面倒はあまり見たくないし、また見るスキルもないので、(クラウドは)そういった部分をあまり気にしなくてもよいというのが大きい」。

 コストの問題もある。今回の開発をオンプレ上に構築しようとした場合、「桁が1つ違った」という。「BtoC向けのシステムの場合、ピーク時に合わせて設計するととてつもなくコストが高くなる」。

 3つめは、消費者の目線で考えられる部門が主導したほうがよいということ。開発コストが低下したこともあって、「ダメだったら最悪作り直せばいいかという割り切りもあった」と神谷氏は説明する。

【次ページ】データから新しいメニューを考える
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