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ITベンダーやユーザー企業、IT系メディアといった異なる立場(ITACHIBA)の有志が集まり、IT業界の将来を考える「第1回ITACHIBA会議」が開催された。記念すべき1回目のメインテーマは「今、問われるIT部門・SI(システムインテグレーター)事業者の存在意義」だ。業界に身を置く者にとって、かなりシビアな議題だが、各業界の若手からベテランまでが真剣な議論を交した。本稿では当日のプレゼンテーションから、パネルディスカッション、ワールドカフェ方式によるグループディスカッション、総括までをレポートする。
もう情報システム部門はいらない!?
まず司会を務めるネットコマースの斎藤昌義氏が、「いまITの世界は大きく変容してきている。IT部門、ユーザー企業、ベンダー企業の役割も本当にこのままでよいのか? そんな疑問を持たれる方も多いと思う。これはIT部門が変わればよいとか、ベンダー企業が変わればよいという単純な一方向の話ではないと考えている。やはり、それぞれが互いの役割を見直し、やるべきことを変える、あるいは進化させなければいけない時期に来ていると思う。ならば利害は同じ。これからどうすればよいのか共に考える場にしたいと思い、この会議を企画した」と、本会議の狙いについて述べた。
次に議論を深めるために、IT部門・SI事業者、ユーザー企業、ベンダー企業の立場から、現状報告と問題提起がなされた。全体を俯瞰する方向で、IT市場の調査や分析で有名なノークリサーチの伊嶋謙二氏と、日経コンピュータ誌で「崖っぷちのIT部門」を担当する岡部一詩氏が調査データを使いながら現状を示した。
伊嶋氏は、中堅中小企業(SMB)の実態について触れ、「最近では、業務システムを中心とする情報システム部門の投資が少なくなってきている。システムに対する充足感が企業側にあり、あえてお金を使わなくても良いという雰囲気だ。その変化は、スマートデバイス導入のきっかけで分かる」と指摘。
実際に2013年と2012年のデータを比べると、スマートフォンを導入する際に、社長や経営層といった上層部からの発案があったと答えた割合は約58%に上る。
一方、現場のIT担当者からの提案は30.8%から21.1%と約10ポイントも減少。この傾向はスマートフォンでも同じだった。つまり、情報システム部門離れが起きている傾向が顕著になっているのだ。
また、岡部氏は、エンタープライズ系の大企業ユーザーへのアンケート調査結果を報告。「IT部門とユーザー部門との間には、自社IT部門に対する意識の乖離が存在する」と問題点を提起した。
たとえば業務に対する基本姿勢の評価では、IT部門の30.5%が自発的と答えたのに対し、ユーザー部門では15.7%と半数ほど。
IT部門の置かれている立場に関しては、「必要な情報システムを、ユーザーの指定したとおりに準備する請負人」というイメージが両部門とも最も多かったが、一方でユーザー部門はIT部門を「ITに関する要求を慎重に見極める門番や、ITの要求になかなか動いてくれない抵抗勢力」と見る向きが多かった。
またIT部門の中でも、部門長クラスと現場の間ではミッションについて意識の差が出ていた。部門長クラスは、ビジネスに踏み込んだ業務まで考えているが、現場クラスはITに閉じた業務をミッションと捉える傾向が強い。
その結果、IT部門の存在意義も揺らいでいる。IT部門を通さずに、ユーザー部門からITベンダーとの直接商談をするケースが34%以上もあり、自社のIT部門を「ベンダーで代替できる」と約3割が考えているという。
「IT投資という面でみても、IT部門だけなく、ユーザー部門が前面に出るケースが多くなっている」(岡部氏)と、大企業でも中堅中小企業の調査結果との同様の傾向があることを裏付けた。
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