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  • 2019/03/14 掲載

そのオープンイノベーションが「的はずれ」なワケ、コンテストでは意味なし?

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FinTechを含め、国内のオープンイノベーションが過熱している。一方、その目的や評価基準が曖昧なまま、ブームに踊らされているように見える企業も出てきた。オープンイノベーションをブームで終わらせないためには、改めて本来の目的と取り組むべきことについて確認する必要がある。大手企業のオープンイノベーションを支援してきた、500 Startups Japanのマネージングパートナー(現 Coral Capital 創業パートナー) 澤山 陽平氏に「オープンイノベーションの本質」と成果を出すための考え方を聞いた。
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500 Startups Japanのマネージングパートナー(現 Coral Capital 創業パートナー)の澤山 陽平 氏が考えるオープンイノベーションとは

そもそも何のためにオープンイノベーションに取り組むのか

 科学技術が多様化している現在、他分野の専門家でも「ITの知識」が必要であり、専門分野を1つ持つだけではイノベーションは起こせなくなっている。

 イノベーションは、さまざまな領域が融合して、形作られていくものでもあり、「オープンイノベーション」がより重視される理由がここにある。

 ビジネスでの「自前主義」が根付き、雇用の流動性も低い日本では、「大企業×スタートアップ」という組み合わせで、オープンイノベーション施策として数々の「提携」や「概念実証(PoC)」が繰り返されてきた。

 一方、オープンイノベーション施策を「発表」したものの、成果を出すのに苦心しているように見える企業も複数存在する。
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データに見る国内オープンイノベーションの現状 日本の「自前主義」が示されている
(出典: NEDO報道発表

 「そもそも『何のためにオープンイノベーションに取り組むのか』、定まっていない企業が多く見受けられます」と指摘するのが、大手企業のオープンイノベーションを支援してきた、500 Startups Japanのマネージングパートナー (現 Coral Capital 創業パートナー) 澤山 陽平氏だ。

 まずは、澤山氏の経歴を紹介しておこう。澤山氏は、JPモルガンでバンカーとして大手企業のM&Aを支援した後、2012年に野村リサーチ・アンド・アドバイザリーへ転職した。同社では、ベンチャー企業のリサーチと支援に従事し、大手企業へベンチャー企業を紹介することも少なくなかったという。

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 つまり、大企業とベンチャー企業の双方について知見を有し、国内でオープンイノベーションが注目される前から、大手とベンチャーを結び付けるための活動をしていた。

 2015年に500 Startups Japanを立ち上げてからは、ベンチャーキャピタリストとして活躍する澤山氏が、日本企業のオープンイノベーションを支援するのには理由がある。

「500 Startupsは世界中でシードステージの投資を行っています。つまり、シリコンバレーと異なり、ベンチャー企業のエコシステム(生態系)ができていない地域でも投資を行います。エコシステムがなければベンチャー企業の成長が制約されてしまうため、500 Startupsは大企業や政府などへもアドバイスやサポートを行い、エコシステムの発展に貢献しています」(澤山氏)

 ベンチャー企業のエコシステムとは、ベンチャー企業の成長を育むコミュニティのようなもので、起業家、ベンチャーキャピタルなどの投資家、弁護士などのスペシャリスト、技術を提供する大学などで構成されている。

 そしてその中には大企業も含まれ、投資、提携、買収などを通じてベンチャー企業に関与する。それを大企業の側から見ると、オープンイノベーションということになる。澤山氏は、その目的についてこう語る。

「何のためにオープンイノベーションをやるのかと言えば、結局のところ新規事業をつくるためです。我々はそのための方法を3つに分けて考えています。すべて自社で行うのがR&D(Research & Development)、でき上がった事業を買ってくるのがM&A(Merger & Acquisition)、その中間がオープンイノベーションです」(澤山氏)

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新規事業をつくるための方法3つ
(出典:500 Startups Japan)

「R&Dは、自分たちですべてを作ることができる一方、リスクが非常に高くなります。社内の優秀な人材を研究へ投じるのでコストが大きいですし、成果が出るとしても時間がかかります。他方、M&Aは、でき上がったものを買ってくるので、買収すればすぐに業績面での成果が出ます。買収後の統合リスクはありますが、そもそも事業が成立するのかという意味でのリスクは非常に低いはずです。ただし、そのような会社が安く買えるはずはなく、コストは大きくなります」

 澤山氏は、オープンイノベーションを、R&DとM&Aの良いとこ取りをした、3つ目の新規事業開発の手段であると定義している。

 では、新規事業開発とは、具体的に何をどうすれば達成したことになるのだろうか。

「新規事業開発は3つの目的に分解できると考えています、1つ目は、新規事業を作れる『人材』を獲得すること。2つ目は、『プロダクト(製品)』を獲得すること。3つ目は、『ユーザー』を手に入れること。3つ目のユーザーは、成熟度の高いベンチャー企業であれば、“売り上げ”も付いてくるかもしれません。また、既存事業ではアプローチできなかった顧客層へのリーチが手に入るとも考えられます」

 企業がオープンイノベーションの活動を通じて手に入れるべきなのは、「人材」「プロダクト(製品)」「ユーザー」の3つだという。そうであれば、これらを獲得できていない施策は、まだ途上にあるか、失敗に終わったということになる。

国内のオープンイノベーションの現状

 では、澤山氏の目には、国内企業のオープンイノベーションを現状はどう映っているのであろうか。

「各社とも目的があいまいなまま、とりあえず走りだしているのが現状だと思います。ただし、そろそろ自分たちは何をやっていたのか、目的は何だったのかと思う人が大企業の中から出てきている。オープンイノベーションの活動を3~5年行い、何が成果として出てきたのか、それはどのように評価するべきなのかが問われるようになってきました」(澤山氏)

 早い段階からオープンイノベーションに取り組み始めた企業の中には、活動を見直す時期に入りつつあるということだろう。一方、比較的最近になってオープンイノベーションに取り組み始めた企業には、必ずしもそうした段階にまでは至っていないところもある。

「プロセスに満足感を得てしまっている担当者もいると思います。たとえば、ピッチコンテストやアクセラレータープログラムを実施するのはとても大変です。アクセラレータープログラムでは、準備に3カ月から半年ほどかかり、運営には同じくらいの期間が必要です。その間に駈けずり回っていると、終了した時に達成感を感じてしまいます。しかしその活動だけでは、何かを達成したことにはなりません」(澤山氏)

 『手段の目的化』は、これまでも多くの日本人論の中で語られてきたことであるが、オープンイノベーションにおいても同じことが繰り返されているようである。

 そうならないためには、オープンイノベーションのゴールに至るまでのプロセスを方法論として確立することが望まれるが、それにはもう少し時間がかかりそうである。

「オープンイノベーションの動きは、取組む企業の『量』や、それを支援する企業は増えているという『面』の意味で広がったと思います。一方、全体としては『質』の部分で改善の余地があります」(澤山氏)

【次ページ】日本企業のオープンイノベーションに欠けていること
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