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早いスピードでの成長とイノベーションが求められる現在、組織で変革が起きるようにするためには、いかなる人材育成をすべきなのか。元LIXILグループ取締役 代表執行役社長 兼 CEOの藤森義明氏(元ゼネラル・エレクトリック・カンパニー シニア・バイス・プレジデント)は、「変革のためには人材の発掘と育成が大切」と語る。
米国企業は「人を大事にする」
藤森氏は自らの経営論、リーダーシップ論はGEの最高責任者を20年間務めたジャック・ウェルチの影響を強く受けているとしたうえで、GEの150年の歴史においてキーワードとなってきたのは、「変革」と「人」であると語った。
「米国の企業は短期的な経営方針と株主至上主義で、従業員やお客さまではなく株主を一番大事にすると言われています。しかし、私が経験したのは『人を大事にする』『常に変革を起こす』『長期的な視点で会社を変えようとしている』米国企業です。米国の素晴らしい会社はこの3つを一番大事にしています」(藤森氏)
藤森氏は、リーダーの条件とは「変革を起こす力を持っていること」「人材を集め育てる」ことだと語る。時代の変化が加速しており、企業も変化しないとその変化についていけないのが現状だからだ。
「『生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでない。それは、変化に最もよく適応したものである』というダーウィンの言葉が代表的です。力でも、頭でもなく、環境に順応して自分たちを変えられる人が一番生き残るということです。過去の100年200年とこれからの10年20年では、全く違う変化が起きるでしょう。加速度的に変化するので、どんな変化がやってくるかを見なければなりません」(藤森氏)
藤森氏は2025年までに必ず起きる大きな変化として、「第4次産業革命の加速」「グローバリゼーションの加速」「Disruptive Innovationが業界を変える」「中国が世界一の経済大国に」「先進国における老齢化の加速」を挙げた。
変革が起きない企業の特徴
現在の日本では、変革の必要性は認識されていても、実際に変革が起きないことが課題となっている。藤森氏は変革が起きない組織の特徴に「コンフォート・ゾーンに入りたがる」「リスクを恐れる」「外の変化が見えない(見たくない)」「変革を嫌う企業文化」の4つがあると語る。
「コンフォート・ゾーンに満足している人は自分の殻を打ち破れません。リスクが怖くて、リスクを取れない。つまり次の大きなステップを踏めないのです。そして変革を嫌い、外の変化を見ようとしなくなります。そういう集団が会社の多数になると、変化が全く起きなくなります。それを逆にした人が、これからの大きな変化についていける人たちです」(藤森氏)
GEでは「変革のプロセス」を教え込む
藤森氏は、ジャック・ウェルチが変革を起こしたアプローチを紹介した。ジャック・ウェルチは変革をプロセスと捉え、1週間かけて社員全員に「変革のプロセス」を教えることにしたのだ。社員にプロセスを共有すれば、必ず変革が起きる会社になると考えたのである。
変革のプロセスは、「危機感」から始まる。危機感があると社員は「どうしたらいいのか」と考えるようになる。これが、変革の第一歩だ。
次に目指す先である「ビジョン」を社員に「伝える」。すると「行動」が起き、会社が変わりはじめる。変わり始めたら、「モニタリング」をして、「組織・人事」を変え、恒常的な変革にしていく。これが変革のプロセスである。ジャック・ウェルチはGEの30万人もの全社員にこのプロセスを教え込むことで、変革の文化を醸成したのだ。
リーダーにとって大切なのは、ビジョン(将来を描く力)、コミュニケーション(伝える力)、エクセキューション(実行する力)の3つだと藤森氏。どういう将来を描くのか、それを社員に伝え、行動させるためにはどういう話し方をするのかが問われる。
LIXILの人材評価は9ブロックで
変革を起こせる資質を持った人材の条件として藤森氏は、「コンフォート・ゾーンを打ち破る力」「リスクを恐れない」「外の変化を常に学ぶ力、見る力」「変革を嫌う企業文化を変える力」を挙げる。そういう人材の集合体になることが、変革には大切だという。
これらの特徴を持つ人材を育てるためには、人事システムを整えなければならない。CEO、CFO、そしてHRM(Human Resource Manager)が「リーダーシップトリオ」となり、ビジネスレビューをすることが必要だと藤森氏。長期戦略を考え、その戦略を実現するためにはどんな人材と組織が必要なのかを3人でレビューするのだ。そして人事には、評価の仕組みをつくることが求められる。
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