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- 2020/05/01 掲載
マッキンゼーの7Sとは何か?図でわかりやすくフレームワークを詳解
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企業には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があるととらえ、それら7つの資源をもとに個々の企業に最適な事業戦略を考えることができるフレームワーク。7つの資源から組織の現状と組織の戦略(組織が望む状態)とのギャップを診断できます。マッキンゼーが考案したもので、経営者や組織変革コンサルタントなどに幅広く使用されています。
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組織変革には「ハード」と「ソフト」の両方が必要
組織変革に取り組む際、戦略や組織といった「ハード」と、人材やスキルといった「ソフト」の両面から見て改善をはかることが今でこそ当たり前とされていますが、この7Sが作られた当時は、組織の戦略や構造などのハードのみを新しく見直すことが主な解決方法であると考えられていました。この7Sの発案者の一人であるウォーターマン氏のウェブサイトに掲載されている記事「Structure is Not Organization」によると、当時マッキンゼー社のコンサルタントであったウォーターマン氏とピーターズ氏の二人は、組織の課題解決には上記以外の方法があるのではないかと考え、組織設計の分野で名をはせ、世界で活躍しているコンサルタントや顧客から話を聞くことにしたそうです。
自社内外に協力を仰ぎながらこの調査研究をさらに進めていく中で、当時の主なやり方であった構造、戦略、システムといったハードだけでなく、スタイル、スキル、スタッフ、そして上位目標(現在は共通の価値観)というソフトを合わせた7つの要素の相互関係を見てマネジメントすることが重要であるという結論に至りました。
この7つのS要素が図として表現されたものが「マッキンゼーの7つのS」と呼ばれるものです。
7Sでは、ダイアグラムの形そのものが重要な役割を持つと言われます。共通の価値観こそ企業の基礎的概念なので中心に描かれていますが、このダイアグラムには始点がありません。どの要素も組織が抱える課題要因となりえるため、始点が存在しない形をとっているのです。というのも、組織が置かれている状況や求める理想の状態によって、要因が戦略の場合もあれば、システムや構造が問題の場合もあるためです。
また、ご覧のとおり、それぞれの要素が他の要素と線でつながっていますが、これはその要素が問題の要因であると特定された場合でも、その一つだけを見て対策を講じるのではなく、その要素と線でつながっている他の要素も必ず見る必要があるためです。
要素ごとにつながっている線は相互関連性を表し、この関連性を無視して一つの要素だけに変革をもたらそうとするとことは組織にとって危険であり、企業が戦略などを導入する際に約90%がうまくいかず失敗に終わる理由として、他の要素に注意を払わず生まれている可能性があるのです。
7つのSがもたらすものとは何か
この7つの要素、実は開発当初は別の表現が用いられていましたが、今回はこの7Sの名づけの親であるアンソニー・エイソス氏が共著となり7Sモデルが紹介されている著書、『ジャパニーズ・マネジメント』に掲載されている7つのS要素をご紹介します。7S要素 | |
戦略(Strategy) | ある一定の目標を達成するために立てられる企業の限られた財的・人的資源の配分を目的とした一定期間の計画ないし行動方針 |
機構(Structure) | 組織のしくみの特徴(機能的である、分権化している、など) |
システム(System) | 一定の報告パターンおよび会議形式のようなルーティンな方法 |
スタッフ(Staff) | 企業内の人員を重要な職種・特質別に分類・配分すること(たとえばエンジニア、企業家型、管理のプロなど)。ライン対スタッフといった意味合いではない |
経営スタイル(Style) | 経営幹部が組織の目標をどのように達成するかという特徴、およびその組織の文化的特質 |
経営スキル(Skills) | 経営の中心人物ないし企業全体の持つ顕著な能力 |
上位目標(Superordinate Goals/Shared Value) | 組織がその構成員に植え付ける理念あるいは指標となるような概念 |
(出典:リチャード・T・パスカル、アンソニー・G・エイソス、深田祐介訳.(1981). 『ジャパニーズ・マネジメント』 (pp.103). 東京: 講談社.) |
なお、ウォーターマン氏とピーターズ氏の共著である『エクセレント・カンパニー』に掲載されている開発当初の7つの要素は、以下の通りです。:
その七項目とは、機構(structure)、戦略(strategy)、ひと(people)、経営の型(management style)、体系と手順(systems and procedures)、指針となる理念(guiding principles)、および企業文化ともいうべき共通の価値観(Shared values)、最後に現有する(または望ましい)企業の強さ、あるいは技術(Present and hoped for corporate strengths or skills)の七つである。『エクセレント・カンパニー』(pp.40)
各要素の理解をより深めるため、ウォーターマン氏らの記事に掲載されている7S要素も記事に掲載されている順序で簡単にご紹介したいと思います。
まず第一に、機構と記されているS要素ですが、これは昨今のビジネス書で良く目にする構造にあたります。ここで挙げられる機構のS要素とは、組織の構造(機構)の特徴であり、組織の構造を規模にあわせて分権化するか集権化するか、階層的かフラットかなどがこれにあたります。
戦略のS要素は、予期される外部環境(顧客・競合他社)の変化やその環境変化を見越した企業計画などを指します。価格改定(低コスト生産)やどのような価値を顧客にもたらすかなど、組織としてどのようなユニークな価値を提供するかを表すものです。
システムのS要素は、組織が日々や年毎の業務を遂行していくためのフォーマル/インフォーマルな手順のことです。資本予算システム、人事制度原価計算手順や予算制度などがこれにあたります。
経営スタイルのS要素は、今でいうスタイルと表現されている要素であり、組織の文化や風土、マネジメントスタイルを指します。組織ならではの象徴的な行動/態度、マネジャーがどのように時間を使うか、何に注意を払い許可するかなどです。たとえば、A社で求められているマネジャーのマネジメントスタイルとB社で求められているマネジメントスタイルは違いますが、これもスタイルの差です。
スタッフのS要素は、よくある報酬制度や育成制度、または社員のモラル、モチベーション管理などスタッフに関連する要素をただ述べているのではなく、組織に属するスタッフ(人材、特にマネジャーレベル)のマネジメントや既存/次世代マネジャー育成のプロセスなどを指し、経営幹部の基本的価値観がどのようなものかであったり、新しい社員をリクルートしどのように自社内のメインストリームへつなげキャリア開発を行うかなどもこの要素にあたります。
経営スキルのS要素は、組織の特質した能力のことです。企業として最も得意な点や、外部環境にあわせて自社能力を開発や変化させたりできる点はこれにあたります。たとえば、A社は市場に対する見識に優れ、B社はリサーチ力があり、C社は製品管理能力があるなど、企業として特に目立つ能力がここでいうスキルのS要素です。
上位目標のS要素は、共通の価値観と今では表現されます。組織の理念や指標となる基礎的概念で、その企業が建てあげられている基盤のようなものです。慣習的な企業目標や理念をこえた、企業に存在する価値観や野心のようなもので、そこを基軸にシステムが構築されます。
【次ページ】7Sを実践するワークシートとは
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