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銀行がGAFAに勝っている部分とは?
既存銀行と同等の業務ライセンスを取得し、モバイルアプリを中心にビジネスを展開する「チャレンジャーバンク」が躍進しているが、これらのチャレンジャーバンクを含む銀行が今後、ブロックチェーンを活用したサービスを展開する可能性は極めて高い。
それは、「KYC」が、銀行業界におけるラストワンマイル(エンドユーザーまでの最後の距離を詰める決め手)になりえるからだ。
KYCとは、“Know Your Customer”の略で、「顧客本人の身元確認」の方針やプロセスを表す。銀行で口座を開設するためには、その個人や企業が確実に存在しているのか、反社会的組織ではないかなどの審査が必要になる。
また、マネーロンダリングをはじめとした違法行為を防ぐため、厳格なAML(アンチマネーロンダリング)を実施しなければならない。そのためにどの国でも銀行業界は、他のサービスに比べて厳密なKYC とAMLが要求される。
銀行の強みは、お金を几帳面にやり取りすること自体にあるのではない。KYCを扱ううえでのノウハウ、経験の蓄積こそがそれなのだ。いまの時代、脱税などを目論まないかぎり、多額の現金を自宅に置きたがる人はほぼいないだろう。企業でも、お金のやり取りには銀行を経由するのが当たり前だ。なぜそれが当たり前かといえば、銀行がKYCを行ない、きちんとお金を管理してくれるという信頼があるからである。
そのお金と同じように、個人情報を安全に管理するためには、KYCに通じた事業者が不可欠になるが、もちろんKYCというラストワンマイルを、銀行が握れるとは限ら ない。すでに個人情報を取得しているインフラ系事業者や保険業者ほか、既存のプラットフォーマーをはじめとして、KYCを担おうとする企業はこれから多数登場してくるはずだが、銀行は一歩先行した有利なポジションにいる。巨大プラットフォーマーも自らがいきなり銀行にとって代わるよりも、銀行と組もうとする。
アップルはなぜカード発行と運営を金融機関に委ねたのか
たとえばアップルが2019年8月から開始した「Apple Card」でKYCやカードの発行、運営を行うのは、大手金融機関のゴールドマン・サックスだ。グーグルも大手銀行と組んで、銀行口座サービスを提供しようとしている。こちらもやはり大手金融機関のシティグループや信用組合と提携し、これらの金融機関がグーグルのサービス利用者に銀行口座を提供する。アマゾンも同様のサービスを提供予定だといわれている。
将来的にGAFAそのものが銀行になることはありえるかもしれないが、少なくとも現時点では銀行と組んで、KYCや口座の運営を任せるかたちになりそうだ。逆にいえば、コストも手間もかかるKYCは、すでにノウハウを蓄積している企業にとってはビジネスチャンスになる。
日本でも、NTTドコモや三菱UFJグループなどが、本人確認を支援するためのAPI提供を行なっている。低コストかつ安全に実施できるKYCの需要は極めて高いが、ある企業が収集したユーザーのアカウント情報をもとにKYCのサービスを行うことは、プライバシーの問題にかかわってくる。フェイスブックが行なっていたように、ユーザーが知らないところでプライバシーが利用されたりするのではないか、という懸念があるのだ。
そこで最近注目されるようになってきたのが、「自己主権型ID」もしくは、DIDs (分散型ID)という考え方だ。これは、どこかの企業ではなく、ユーザー自身がプライバシーを所有し、コントロールできるようにすることを指す。そこで、改竄ができないブロックチェーンが、次世代KYCのための基盤技術になりえるのである。
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