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2018年夏の日本列島は豪雨、台風、地震に酷暑と、過酷な自然災害が繰り返された。2011年の東日本大震災もそうだったが、被災地で頼りになる小売業態が「ホームセンター」だ。その商品はライフライン回復までの生活の維持、住宅の応急補修、仮設住宅への入居でも力になり、被災地以外の地域でも防災意識が高まって防災用品が買われる。「災害の夏」で、その存在価値は改めて見直されるのだろうか。複数のアナリストから最新の動向を聞いた。
2018夏、被災した家屋は東日本大震災の約9分の1
2018年の夏は、自然災害が繰り返し、繰り返し起こった「異常な夏」だった。
6月に最大震度6弱の大阪北部地震が発生、7月には中国、四国、九州を中心に西日本が記録的な豪雨(平成30年7月豪雨)に見舞われ、寸断されたJR山陽本線はいまだ復旧していない。
9月には台風21号が近畿地方を直撃して関西空港が水没し、空港連絡橋に貨物船が激突して不通になった。直後、北海道で最大震度7の胆振東部地震が発生。震源地の厚真町では地すべりが多発し、苫東・厚真火力発電所が被災して停止すると一時は全道が停電し、新千歳空港も閉鎖され、札幌市内でも液状化現象で住宅が被災した。
それに加え7~8月の日本列島は35~40度の猛暑に襲われ、埼玉県熊谷市は7月23日に41.1度を記録して日本最高を更新。消防庁の集計によると7~8月の全国の熱中症搬送者はのべ8万4630人に達した。
■大阪北部地震(6月18日)
全半壊家屋 488棟
一部損壊家屋 5万3751棟
死者・行方不明者 5人
(府県の被害状況集計 9月19日)
■西日本豪雨(平成30年7月豪雨/6月28日~7月8日)
全半壊家屋 1万6801棟
一部損壊家屋 4324棟
(床上浸水、床下浸水の合計2万9443棟)
死者・行方不明者 230人
(消防庁非常災害対策本部 9月5日)
■台風21号(9月3~5日)
全半壊家屋 55棟
一部損壊家屋 2万1920棟
(床上浸水、床下浸水の合計219棟)
死者・行方不明者 13人
(内閣府 9月14日)
■北海道胆振東部地震(9月6日)
全半壊家屋 392棟
一部損壊家屋 1846棟
死者・行方不明者 41人
(内閣府 9月20日)
※2018年9月20日時点
■2018年夏、自然災害4回の合計
全半壊家屋 1万7736棟
一部損壊家屋 8万1841棟
(その他、床上浸水、床下浸水3万棟以上)
死者・行方不明者 289人
※2018年9月20日時点
※参考:東日本大震災(2011年3月11日)
全半壊家屋 40万2748戸
一部損壊家屋 74万5162戸
(床上浸水、床下浸水1万1703棟)
死者・行方不明者 2万2233人
(消防庁 2018年9月7日)
2018年夏の豪雨、台風、地震の被害による全半壊、一部損壊家屋は合計約10万棟で、浸水被害を加えると約13万棟にも及ぶ。これは2011年3月の東日本大震災(約116万棟)のおよそ9分の1に匹敵する。
被災者は人的被害を免れても、住居が全半壊するとそこに住むことはできず、長期間の不自由な避難生活や仮設住宅への入居を余儀なくされる。一部損壊や浸水被害でも程度の差はあるとはいえ、これから住まいの補修は本格化してくるなど予断を許さない状況が続く。時には大がかりなリフォームを行ったり、新築で建て直すこともあるだろう。
被災時の頼れるパートナー、ホームセンター
震災翌日の9月7日、札幌市をはじめ北海道各地のホームセンターの店頭には、開店前から長蛇の列ができた。道内の多くの地域では停電がまだ続いていた。水道もまだ使えない場所が多い。電気、都市ガス、水道、ガソリン、道路、鉄道などライフラインの寸断が市民生活に大きな影響を及ぼしていた。
その日、店頭でよく売れていたのはペットボトル入りミネラルウォーターのケース、給水車が来た時に使うポリタンク、水筒、炊事用のカセットコンロ、カセットガス、懐中電灯、乾電池、発電機、燃料携行缶などだった。自転車を買い求める人もいた。それは水道、ガス、電気、ガソリンなど、生活のライフラインの代わりを果たす商品だった。
そんな「ライフライン関連」と並んで売れていたのが、防水用のブルーシート、断熱シート、接着剤、合板、セメントなど「住宅の応急補修関連」の商品だった。とり急ぎ、割れた屋根や壁や窓をシートでおおい、補修をしないと雨が降り出す。北海道ではもうすでに秋で、夜は冷気が忍び寄ってくる。
そのように、市民は震災が起きてホームセンターの存在意義を改めて意識した。当然、店舗のほうも無事ではなく、商品が床に散乱したりガラスが割れるなど少なからぬ被害を受けていたが、店員総出で片付けや補修を行い、商品を緊急に手配、補充して、発生から24時間を経た7日朝までに大部分の店舗が営業再開にこぎつけた。
商品調達が困難を極め、物流もストップする中でも、生活を元に戻すために消費者への供給に全力を尽くす。ホームセンターの幹部にも店長にも店員にも、災害が起きた時は被災地のニーズに応えて役に立つのだという「使命感」がある。消費者の間に「ホームセンターはいざという時、本当に困った時に頼りになる店」となるため、各社の北海道内の店舗は停電する中、営業再開を急いだ。
停滞続くホームセンター業界だが……
一方で、全国的にホームセンター市場は停滞が続いている。業界団体の日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会が発表する年間総売上高の推移をみると、東日本大震災の前後で2.0%伸び、2010年度から2013年度までの3年間で3.45%伸びたが、4兆円の大台には乗りそうで乗らず、足踏みする状況が10年以上続いている。
年間総売上高を総店舗数で割った1店舗あたりの売上高は、2008年度から2017年度までの9年間で1.3億円。13.4%も減り、長期低落傾向だ。マーケットのスケールに対して店舗の数が多すぎる「オーバーストア」の度合いが年々強まっている。
最新本決算をもとにしたホームセンターの売上高順位は次のようになっている。
※()内は代表的な店舗名
1 DCMHD(カーマ、ダイキ、ホーマック、サンワ、くろがねや)
2 カインズ(カインズホーム)
3 コメリ(コメリ)
4 コーナン商事(コーナン)
5 ナフコ(ナフコ)
6 LIXILビバ(ビバホーム)
7 ジョイフル本田(ジョイフル本田)
8 島忠(島忠)
9 ケイヨー(ケイヨーD2/DCM傘下)
東日本震災直後は被災地で「ライフライン関連」と「住宅の応急補修関連」がまず売れた。関東は被災の程度は比較的軽かったが、東京電力の原発事故で「計画停電」が実施されたために「節電関連商品」がよく売れた。石油ストーブ、LED電球、電気がいらないエアーポットなどである。それと並行して全国的に保存食や懐中電灯など「防災グッズ」が売れ行きを伸ばした。
震災から数カ月たつと被災地では仮設住宅への入居が始まり、家庭用品、収納用品、家電、インテリアなどを買いそろえる需要が発生した。同時期に傷んだ住宅の本格的な補修が活発になり、工務店などプロ用の大工道具や建材、セメントなどが売れ始める。福島県では放射能の「除染」に使う高圧洗浄機がヒット商品になった。節電関連商品はその後も扇風機などが息長く売れ続け、ホームセンターを窓口とする住宅リフォームの需要も被災地周辺で続いたという。
当時、被災地のホームセンター店舗に勤務していた人物によると売場で女性の姿が目立ったという。昼、男性が仕事に行っている間、家庭ではそれまで日曜大工も敬遠していたようなビギナーの女性でも慣れない補修に挑戦した。店員はあれこれ質問責めにされ、店舗では女性のためのDIY教室などを開いてスムーズに補修ができるようサポートしたという。
【次ページ】2018秋冬ホームセンターはどう動くか?識者の意見は分かれる
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