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  • 2018/06/04 掲載

「スマートストア」とは?実証実験中のトライアルにその技術や効果を聞いた

トライアルCIO 西川晋二氏インタビュー 

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人口減少の一途をたどる日本。人手不足に陥る小売現場には今、変化が求められている。そしてその変化を担うのが、さまざまな業界で革新を起こしているテクノロジーである。実店舗にいち早くテクノロジーを持ち込み、2018年2月から「スマートストア」の実証実験を行っているトライアルホールディングスに、その定義や効果、課題を聞いた。
(聞き手:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎)
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「スマートストア」の実証実験を行う、トライアル アイランドシティ店
(出典:トライアル)

スマートストアとは何か、なぜ必要なのか

 スマートストアとは、電子タグ(RFID)や人工知能などの技術を使って、流通におけるさまざまな課題を解決する実店舗のことである。

 たとえば米国では2018年1月、人工知能やコンピューター・ビジョンを活用して実現した“レジがないスーパー”、「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」1号がオープンした。



 また、日本でも2018年2月、福岡市に本社を持つトライアルカンパニーが「スマートストア」の取り組みとしてスーパーセンタートライアル アイランドシティ店をオープン、2018年現在実証実験を行っている。

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トライアルホールディングス
取締役副会長 グループCIO
西川 晋二 氏
 同社取締役副会長 兼グループCIOの西川晋二氏は、「日本におけるスマートストアは、止まらない人口減少を背景とする」と語る。国立社会保障・人口問題研究所によれば、日本の生産年齢人口は1995年~2015年の間で約1,000万人減少しており、今後も減少が見込まれている。そんな中、これまでのように従業員を募って店舗を運営していくのは厳しい。

 また、オンラインストアも当たり前になった時代、実店舗にはこれまでにも増して勝ち残りのための戦略が必要とされる。「そのためのイノベーションとしては品揃え、価格、立地などさまざまな要素が考えられるが、特に“お客さまにストレスない売り場”を少ない費用と人数で回すことが自ずと求められるだろう」と西川氏。

 加えて、現在スマートストアの代表例といえば「アマゾン・ゴー」だが、日本企業は“現実解”を探す必要があるとも西川市は話す。

 アマゾン・ゴーは店舗内に複数設置されたカメラおよびマイク、センサーによって、商品を手にとって店を出れば決済が完了する“Just Walk Out”を実現している。だが、小さな店舗であっても数千台ものカメラ・センサーと運用のための巨大なコンピューティング・パワーが必要となる。西川氏は「日本の一般的な店舗では、コスト面で展開が難しい」と指摘する。

トライアルのスマートストアを構成する、3つの要素

 では、日本における生きた例として、トライアルはスマートストアをどのように定義し、運用しているのだろうか。西川氏は、スマートストアの3つの役割を挙げる。

 第一に、商品の決済をスマート化する「チェックアウト革命」である。アイランドシティ店では、タブレット決済機能付きレジカート(スマートレジカート)を導入した。専用のプレペイドカードでログインして商品をスキャン、会計エリアでタブレットのボタンを押すと決済が完了する、という仕組みだ。

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スマートレジカートを利用した決済の流れ
(出典:トライアル)

 これにより、顧客のレジ待ちのストレスが無くなるとともに、店舗の従業員も削減でき、省人化およびコスト削減につなげられる。

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商品棚をウォッチするスマートカメラ
(出典:トライアル)
 第二に、店内に設置された、AI利用の「スマートカメラ」だ。アイランドシティ店では店内に700台設置されたスマートカメラのうち100台が画像認識エンジンで来客の属性と行動分析を行い、分析結果のみをクラウドに送信する。これにより、プライバシーを守った上で、来客の行動の可視化・定量化が可能となる。残り600台のカメラも画像認識エンジンと連動し、商品棚の商品陳列と顧客の商品接触を分析する。

 もともと小売業では買い物客の行動を観察して魅力的な売り場を作る「ショッパーマーケティング」という手法が取られていたが、その手段は、基本的に目視であった。それをスマートカメラによって自動化できるため、メーカーからの期待は非常に高いという。

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スマートカメラで収集したデータ活用の流れ
(出典:トライアル)

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 第三に、商品販促メディア、「リテールメディア」としての側面だ。スマートレジカート付属のタブレット・ディスプレイは決済を担うだけではない。商品をスキャンしたら、その商品と一緒によく買われている商品を薦める「リコメンド」や、商品のクーポンを表示するプロモーションなども行う。

 店内の大型マルチスクリーンや商品棚のスクリーンも、このような商品プロモーションの役割を果たす。これら複数の媒体を連動させ、実店舗の現場にひとつのメディアを作ることが狙いだ。

 上記のように、トライアルは「チェックアウト革命(スマートレジカート)」「スマートカメラ」「リテールメディア」の3つをして、スマートストア普及への実証実験を行っている。

 なお、日本におけるこのほかのスマートストアの動きとして、たとえば経済産業省は商品の効率的管理を目的として、電波によって非接触で個体を識別する「電子タグ」(RFID)の普及を目指している。電子タグの情報がメーカー・卸業にも共有されることで、効率的なサプライチェーン構築が期待される。

 また、購買データを統合し消費者の購買履歴を企業が分析できる「電子レシート」の実証実験も、経産省は行っている。

【次ページ】運用したからこそわかる、スマートストアの効果や課題とは
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