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  • 2018/04/17 掲載

AIによる「会話型プラットフォーム」は顧客体験をどう変化させるのか

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顧客との接触を改善するうえで、いま課題になってきているのがコストだ。テキストのコミュニケーションが増えたことや、顧客の嗜好が変化していることが挙げられる。こうした課題を解決するべく、Amazon Alexaに代表されるようなAIによる会話型プラットフォームが注目を集めるが、導入すればすぐにコスト削減につながるわけではなく、むしろコストが大幅に増える場合もある。ガートナー リサーチのリサーチ ディレクター、マグナス・レヴァン氏が会話型プラットフォームを5つに分類し、導入にあたって考慮すべき点を解説する。
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会話型プラットフォームに注目が集まっている
(©Vitali - Fotolia)

※本記事は「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス サミット 2018」の講演内容を基に再構成したものです。

会話型ユーザー・インターフェイスは5つに分類するとわかりやすい

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 これまでデバイスの画面が機械と人間の橋渡しの役割を果たしてきたが、AIやチャットボット、会話型ユーザー・インターフェースの登場によってパラダイムシフトが起きている。

 つまり、従来のインターフェース(使い方)は、ユーザーが学習しなければならなかったが、機械学習・AIの導入によって、ユーザー・インターフェースを理解して、学習する必要がなくなり、その責任がユーザーからソフトウェアへと移ることになった。チャットBOTのような「会話型エージェント」がユーザーに代わり、ユーザーの「意図」を聞いた上で運用していくことになる。

 ガートナーではこの「会話型エージェント」を5つに分類している。

 その5つとは、「VPA(仮想パーソナル・アシスタント)」「VCA(仮想顧客アシスタント)」「VEA(仮想従業員アシスタント)」「チャットボット」、そして人間とのやり取りのない「ボット」の5つだ。

 VPAとは、コンシューマー・デバイスで利用されるもの。Google AssistantやAmazonのAlexaなどがこれに当たる。

 VCAはVPAとは異なり、コールセンターなどで企業の対顧客コミュニケーションを支援するもの。チャット、FacebookのメッセンジャーやLINEなどのメッセージングプラットフォームを活用していくものもある。

 VEAは、エンタープライズソフトウェアのフロントエンドと考えてよい。企業システムとそのユーザー、すなわち従業員とのエンゲージメントを簡素化できるようサポートするものだ。

 チャットボットは、特定のユースケースに特化したもので、ほかの3つ、VPA、VCA、VEAのシンプルなバージョンと言い換えることもできるだろう。

 最後のボットは、チャットボットとは異なる。より広い概念で、必ずしも人間とやりとりするものではない。会話型プラットフォームとはいえないかもしれないが、自然言語または構造化言語を使用して、他のボットやアシスタントに話しかける。

 今、すべてのベンダーがこの「会話型プラットフォーム」に向かっている。2年前は、このVPA、VCA、VEAという3つのユースケースはそれぞれ独自のものであり、データも実装も異なると思われていた。しかし、今は収束して、すべて同じ方向(=会話型プラットフォーム)に向かっていて、お互いの領域も重なり合ってきている。

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VPA、VEA、VCAベンダーの動向。IBM WatsonやSlackなど、急速に統合に向かっている

会話型プラットフォームの基盤技術は同じ

 会話型プラットフォームのユースケースはさまざまだが、基盤となる技術は基本的には同じものだ。

 まずはユーザー・インターフェースがある。音声入力の場合は音声をテキストに変換する処理があって、そのテキストが言語処理へとフィードされる。言語処理で行われるのは、ユーザーが「言ったこと」から「意図」を読み取る作業だ。

 このうち、「魔法が起きる」のは言語処理のところ。AIはここでのみ使われている。言葉は「意図」に変換され、デシジョン・ツリーへと流される。ユーザーが何か曖昧なことを発言すると、何かしら明確な答えが返ってくるが、実はここではAIはほとんど関わっていない。

 たとえば、コールセンターでは、オペレータが常時画面上で、複数のアプリケーションを立ち上げている。ここにチャットボットを導入して、オペレーターのタスクの一部を肩代わりさせるとなると、それらのアプリケーションをすべて会話型プラットフォームに統合していく必要が出てくるだろう。

どのようにしてカスタマー・エクスペリエンスを強化するのか?

 会話型プラットフォームを導入することで、顧客と企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。

 そこは「スピード」「顧客満足度」「複雑なものを簡素化」「拡張性」「コスト削減」「売り上げの増加」の6つのキーワードが挙げられる。

 ただし、たとえば、ベンダーが「コールセンターを70%自動化した」という話をしたときに、コストが70%削減できると思うだろうが、実際は違う。

 自動化は、単純に処理できるトランザクションから先に行うため、対応が難しいものが後に残るからだ。それらは、従来通り人が対応しなければならない。

 したがって、コールセンターには、より優秀な人材が必要になるが、そのためにはより給料を上げていかなければならくなり、むしろコストは上がるかもしれない。

 また、自動化をより進めるためには分析にも人が必要になる。自動で対応できなかったものを確認して、デシジョン・ツリーに反映させて、情報をアップデートしていかなくてはならない。

 デシジョン・ツリーを策定して維持するための時間を過小評価してはいけない。コスト削減はせいぜい15~20%ということになる。とはいえ、15~20%でもかなりのコスト削減だろう。

 会話型プラットフォームのメリットは先の6つが主なものだが、実際のユースケースに当てはめるとすると、次の5つが挙げられる。

・リード・ジェネレーションとコンバージョン率の向上
・カスタマーサービスの問い合わせ対応
・支払い(決済)
・パーソナライズされたメディアとニュース
・ターゲットを絞ったアップセルとクロスセル

 新しい変化に対して、インターネットの時もモバイルの時もそうだったように、企業は3つのステップでアプローチしていくことになる。

 まずは、既存のサービス、たとえばオンラインバンキングを対象に選んだなら、オンラインバンキングのサービスそのものは変えずに、会話型インターフェースへの対応を最初のステップで実現していく。

 2つ目のステップでは、会話型にしていくために、既存サービスの何を変えていけばよいのかを考える。

 3つ目のステップでは、新しいパラダイムを前提とし、これまでの古いパラダイムでは不可能だった新たなサービスは何かを考える。企業は、このように段階的に新しいパラダイムに適応していくことになるだろう。

【次ページ】開発で使い分けるべきセルフサービス型とマネージド型
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