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- 2024/12/25 掲載
AIのマルチエージェントシステムとは? その構築方法、CrewAIでの導入ステップガイド
マルチエージェントシステムとは
マルチエージェントシステム(マルチAIエージェント)とは、複数の自律的なAIエージェントが協調して問題解決や意思決定を行うシステムのこと。各エージェントは特定の役割や専門知識を持ち、互いに情報(自然言語など)を交換しながら共通の目標達成に向けて協力する。たとえば、あるAIエージェントはデータの収集を行うことに長け、また別のAIエージェントはデータを分析することに長け、さらに別のAIエージェントはデータをもとに分析することに長けている場合、これらを組み合わせて目標達成を目指す。現在、完全なAGI(汎用人工知能)と呼べるレベルのAIが存在しない中、複数の専門AIを組み合わせたほうが最適な答えにたどり着けるという考え方に基づくもの。このアプローチは、複雑な課題を分割し、効率的に処理する上で有効とされる。
この分野では現在、LangChainとCrewAIがマルチエージェントシステムを構築するための代表的なフレームワークとして知られている。両者とも複数のAIエージェントを組み合わせてタスクを遂行する機能を提供するが、使いやすさの面でCrewAIに優位性がある。
LangChainは柔軟性が高く、多様なユースケースに対応できる反面、設定が複雑で学習曲線が急といわれる。一方、CrewAIはよりシンプルな設計思想に基づいており、直感的なAPIを提供している。
CrewAIとは?
CrewAIの特徴的な点は以下の通りだ:
- 簡潔な構文:エージェントやタスクの定義が簡単で、数行のコードで複雑なワークフローを構築できる。
- 役割ベースのアプローチ:各エージェントに明確な役割と目標を設定でき、人間の組織構造に近い形でシステムを設計できる。
- 自動タスク委任:エージェント間でのタスクの自動委任機能により、効率的な協調作業が可能だ。
- 統合されたツール:ウェブ検索やデータ分析などの機能が標準で組み込まれており、外部ツールの統合が容易である。
- デバッグのしやすさ:詳細なログ出力機能により、システムの動作を容易に追跡・分析できる。
これらの特徴により、CrewAIは、LangChainと比較して、特に初心者や中小規模のプロジェクトに適していると評価されている。複雑な設定なしで迅速にプロトタイプを作成し、段階的に機能を拡張していくことが可能だ。
また、CrewAIは人間の思考プロセスや組織構造を模倣しやすい設計になっているため、ビジネスロジックをAIシステムに落とし込む際の障壁が低い。これにより、技術者だけでなく、ドメインエキスパートも直感的にシステム設計に関与できる。
以下では、CrewAIのマルチエージェントシステムをPythonで実際に構築するプロセスをステップ・バイ・ステップで解説したい。
※以下はPythonとVS Codeがインストールされていることを前提として話を進める。
ステップ1:仮想環境の構築
ここでは、市場リサーチを行うマルチエージェントシステムを構築する。このシステムでは、リサーチャー、データアナリスト、ライターの3つのエージェントが、市場調査、分析、報告書作成を行う。
まず、ターミナルで仮想環境を構築する。(筆者はMac miniを使用)
cd crewai_project
mkdir crewai_market_research
cd crewai_market_research
python3 -m venv myvenv ※仮想環境myvenvを構築
source myvenv/bin/activate ※仮想環境を立ち上げ
仮想環境内で「code .」コマンドを実行し、VS Codeを立ち上げる。
ステップ2:必須ライブラリのインストール
まず、GitHubのCrewAIレポジトリを参照しつつ、ターミナルで必要となるライブラリをインストールする。今回は、以下の4つのライブラリをインストール。ターミナルで、以下のpipコマンドを使い、インストールしていく。関連コンテンツ
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