- 2025/03/10 掲載
GitHub Copilot対抗グーグル「Jules」とは? AIコーディングアシスタントの勢力図

グーグルのコーディングアシスタント「Jules」とは
ソフトウェア開発の世界は大きな変貌を遂げつつある。グーグルは2024年12月、開発者が就寝中でもソフトウェアのバグを自律的に修正し、コード変更を準備できるAIコーディングアシスタント「Jules」を発表した。グーグルのAIモデルGeminiがベースとなっている。
注目されるのは、Julesが単なるコード提案ツールではなく、GitHubのワークフローシステムと直接統合された自律型エージェントとして機能する点だ。
複雑なコードベースの分析から、複数ファイルにまたがる修正、詳細なプルリクエストの準備まで、人間の常時監視なしで実行できる能力を備える。
もちろん安全性も考慮されており、システムは行動を起こす前に、計画を提示しつつ、ユーザーがコード作成の進捗を監視できる仕組みを採用している。
開発現場での実証実験では、すでに顕著な成果が報告されている。Venture Beatによると、ローレンス・バークレー国立研究所の研究者らは、Julesと関連AIツールを使用することで、特定の分析タスクの所要時間を1週間から数分に短縮することに成功。これにより、より複雑な課題に注力できる環境が整ったという。
LiveCodeBenchの最新リーダーボードを見ると、AIコーディングツールのベースとなる基盤モデルのコーディング能力が着実に向上している状況がうかがえる。
特に、OpenAIのo1-2024-12-17モデルは、Pass@1スコアで72.4%を記録。簡単なタスク(Easy-Pass@1)では99.2%、中程度のタスク(Medium-Pass@1)では81.1%という高いスコアを達成している。グーグルのGemini 2.0もランキング上位に食い込んでおり、Julesが高い精度を持つことが予測される。

生成AIアプリの中で注目の「コーディング領域」
Menlo Venturesの最新調査によると、生成AIアプリケーションの中でもコーディングアシスタントは51%の採用率を誇り、企業の間で最も普及が進んだユースケースとなっている。これは他の用途、たとえばサポートチャットボット(31%)、企業内検索・情報抽出(28%)、データ変換(27%)、会議要約(25%)と比較しても、群を抜いて高い数値だ。
GitHubのコーディングアシスタント「Copilot」の年間売上が3億ドルペースに到達、またCodeiumやCursorなどの新興ツールの急速成長など、コーディングアシスタントの活況を象徴する事例には事欠かない状況だ。さらに、開発者の業務効率化にとどまらず、DevOpsエンジニアやQAアシスタントなど、タスク特化型のコパイロットも登場。All Handsなどのエージェントは、ソフトウェア開発のエンドツーエンドを担うまでに進化を遂げている。
スタックオーバーフローの調査では、開発者の76%がAIコーディングアシスタントを利用中か、利用を計画していることが判明。特に学術研究者(87%)、AIデベロッパー(76%)、フロントエンド開発者(75%)、モバイル開発者(60%)、データサイエンティスト(67%)の間で、利用率が高い傾向にある。
一方で課題も浮き彫りとなっている。38%の開発者が、コーディングアシスタントは半数以上のケースで不正確な情報を提供すると指摘。特に高度なアーキテクチャに関する質問や、ニッチなコンポーネント、NDAに関連するリソースなどについては、適切な回答を得られない場合が多いという。
ツールの採用に関して、プロフェッショナル開発者と学習者で異なる傾向が見られる。ChatGPTは、両者で同程度の利用率(プロ84%、学習者83%)だが、GitHub Copilotはプロの利用率(49%)が学習者(29%)を大きく上回る。これは、ChatGPTが無料オプションを提供する一方、GitHub Copilotは期間限定の無料トライアルにとどまることが要因とされる。

使い勝手に関しては、Codeium(84%)、GitHub Copilot(76%)、ChatGPT(61%)の順で使いやすさが評価されており、満足度も同様の順位だ。生産性向上の実感については、95%のユーザーが「少し」から「かなり」の向上を報告。ただし、多くの組織で生産性の測定方法が不明確という課題も残されている。 【次ページ】Julesの競合、注目はVS Codeベースの「Cursor(カーソル)」
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