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  • 2016/06/07 掲載

企業向けチャットの選び方、メールと何が違う?導入事例は?その効果は?

ガートナー 志賀嘉津士氏が解説

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今ビジネスシーンでも、LINEやFacebook Messenger、Slack、Chatworkのようなメッセージング・アプリが注目を集めている。人と人との結び付きを「エンゲージメント」と呼ぶが、メッセージング・アプリを活用することで、このエンゲージメントを強化できるからだ。それが顧客との関係強化による売上アップやビジネス現場の業務効率化といった具体的な成果にも結び付く。ただしメッセージング・アプリを企業に導入する際には、留意すべきポイントもある。ここでは具体的な事例と併せてメッセージング・アプリがビジネスにもたらすインパクトと、メッセージング・アプリ導入時に留意すべき5つのポイントについて考えてみたい。
ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント 志賀嘉津士

ガートナー リサーチ部門 バイスプレジデント 志賀嘉津士

情報システム/PC関連編集者、記者職を経て現職。データクエスト ジャパン (現ガートナー ジャパン) 入社後はPC産業/市場関連動向や個人、企業内個人のIT需要調査分析を担当。現在は企業向けアプリケーション・ソフトウェア分野で、電子メール、グループウェア、SNSなどのコラボレーション領域や、サーチ・エンジン活用、インターネット活用による新たなワークスタイルの変革など、情報活用領域全般をウォッチしている。著書に『[入門]ユビキタス・コンピューティング』(NHK出版、2004年) がある。


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企業でもLINEやMessenger、Slackのようなメッセージング・アプリを利用するケースが増えている

チャットとメッセンジャー、Webチャットの違い

 はじめに言葉の整理をしておきたい。メッセージング・アプリは、「チャット」と言われたり、「インスタントメッセンジャー」と言われたりするが、基本的には皆同じで、時代とともに呼び方が変わってきているだけだ。

 ただし、本稿では便宜上、利用シーンに応じて、次のように「チャット」、「メッセージング・アプリ」、「Webチャット」という分類をしておく。

 まず「チャット」はコンシューマ向けのアプリで、ユーザーは無償で提供されるアプリをスマートフォンなどにダウンロード(DL)して利用する。代表的なものとしては、MAUが9億のWhatsApp、同6億のFacebook Messenger、11億DLのWeChat、同5億DLのLINEなど、そのすべてを含めれば、現在のチャットの利用者数は全世界で40億人にものぼる。コンシューマの世界では、もはや非常にポピュラーなアプリだ。

Facebook Messenger、LINE、Skype、WhatsApp、WeChat、QQ、Viber、KakaoTalk

 次に「メッセージング・アプリ」は、企業内や企業間など主にビジネスシーンでのコミュニケーションに利用されるもので、有償もしくはフリーミアムで提供され、ユーザーはブラウザやスマホアプリを介して利用する。具体的には、以下のようなアプリが挙げられる。

Chatwork(チャットワーク)、Slack、co-meeting、InCircle、Talknote、Typetalk、direct、Spark、Cotap

 またWebチャットは、ユーザーが企業のWebサイトを訪問した際、ポップアップで立ち上がって訪問者をナビゲートするといったもので、ブラウザを介して利用される。

LiveHelpNow、Zopim、LiveChat、Comm100、Kayako、Netop Live Guide、WhosOn、WebsiteAlive、Velaro、Casengo

 我々は今、手元にあるスマートフォンで、当たり前のようにチャットやメッセージング・アプリを使って、簡単に、手軽に、タイムリーに、高頻度のコミュニケーションを取ることができるようになった。チャットの技術そのものは20年も前に登場した古いテクノロジだが、PCの時代にはそれほど普及しなかった。それがスマホと出会うことで、破壊的な威力を持つようになったのだ。

 このチャットやメッセージング・アプリによる高頻度かつ持続的なコミュニケーションが「単純接触効果」を生み出す。単純接触効果とは、米国の社会心理学者であるロバート・ザイアンス氏が提唱した理論で、対象に繰り返し接することで愛着心や共感が醸成されるというものだ。まさにスマホとメッセージング・アプリの出会いが、エンゲージメントの強化を生み出すという話である。

企業が使えば、販売成績は37%、生産性は31%向上する

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 米Gallup社の調査によれば、企業と顧客の間でエンゲージメントが高まると、顧客はその企業を好きになる、あるいはブランド価値を感じるようになり、知人にも勧めるといった行動を取るようになるという。

 一方、企業と従業員間のエンゲージメントが高まってくると、従業員の組織への信頼感が高まり、改善の要求も行うようになり、業務内容と全体像を理解するようになる。同僚への尊敬と協力も進み、献身的な取り組みをするようになって、強い組織に成長する。

 結果、企業のクリエイティブ能力は3倍に高まり、販売成績は37%向上し、一般的な従業員の生産性は31%向上するということも、分かってきた。

 ガートナーの調査によれば、現在メッセージング・アプリが企業の中で使われている割合は16.2%で、電子メールの99.7%やファイルサーバの95.7%に比べればまだまだ低い。しかし、普及率が10%を超えると、その後急激に伸びると言われており、まさに今がその時期なのではないかと思う。

 我々は2017年までに60%以上の日本企業で、社内コミュニケーションやコラボレーションの補助機能として、何らかのチャット機能を利用するようになると予測している。

 また2020年までに、20%の企業が人事部門とIT部門に共通のパフォーマンス目標として、従業員エンゲージメントの向上を掲げるようになるだろう。この2つのシナリオが重なり合ってくると、従業員エンゲージメントの向上を図るために、メッセージング・アプリの需要が増々高まってくることになる。

 今後は従業員の在宅勤務や、場合によっては地球の裏側の同僚とコラボレーションすることが当たり前になる。目の前にいない人と一緒に仕事するとか、目の前にいない部下を評価するという場面がどんどん出てくるということだ。その時に備えて、今から密なコミュニケーションを取ってお互いに信頼関係を構築しておくことは、組織として非常に重要な取り組みではないだろうか。

1枚絵で理解するビジネス・チャットのトレンド

 以下は最近のビジネス・チャットのトレンドだ。

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最近のビジネス・チャットのトレンド
(出典:ガートナー)


【次ページ】メッセージング・アプリの導入時に留意すべき5つのポイント
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