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- 2024/12/24 掲載
マイクロソフトが世界中で2兆円超のAI投資、その狙いはどこにあるのか?
マイクロソフトの投資、アジアに焦点:日本、マレーシア、インドネシア、タイ、インド
マイクロソフトが2024年前半から、アジアへのAI関連投資を加速させている。焦点は、東南アジア、日本、インドだ。まず4月10日、マイクロソフトは日本への29億ドル規模の投資を発表。この投資は、同社の46年にわたる日本での事業展開において過去最大規模となる。今後2年間で日本国内のハイパースケールクラウドコンピューティングおよびAIインフラを拡充する計画だ。
さらに、今後3年間で300万人以上のAIスキル育成プログラムの展開、日本初となるマイクロソフトリサーチアジア研究所の開設、日本政府とのサイバーセキュリティ分野での協力関係強化なども盛り込まれている。
続いて4月30日には、インドネシアへの17億ドル規模の投資計画が明らかにされた。この投資は今後4年間に渡り実施されるもので、新たなクラウドおよびAIインフラの構築、84万人を対象としたAIスキル教育の提供、同国の開発者コミュニティ支援などが含まれる。こちらも、インドネシアにおける29年間の事業の中で、過去最大規模の投資になるという。
さらに5月1日には、タイへの初のデータセンター投資が発表された。投資額は明らかにされていないが、情報筋によると10億ドル規模とされる。このデータセンターは、Eastern Economic Corridor(EEC)に設置される予定だ。
翌5月2日には、マレーシアへの22億ドル規模の投資計画を公表。今後4年間で実施されるこの投資には、同国でのクラウドおよびAIインフラの構築、20万人を対象としたAIスキル育成機会の提供、マレーシア政府との連携によるAIエクセレンスセンターの設立、サイバーセキュリティ能力の強化などが含まれる。
また同社が2024年2月に明らかにしたインドにおけるAIスキル育成プログラムも無視できない。このプログラムは2025年までにインド国内200万人を対象に実施される予定で、新興都市や農村部の学生や求職者が主な対象になるという。
中南米や欧州でも数十億ドル規模の投資
マイクロソフトによるAI関連投資は、アジアにとどまらない。2024年後半に入ると、同社は中南米や欧州への投資意向も相次いで表明。AI時代における世界規模での基盤整備を加速させる姿勢を鮮明にしている。2024年9月24日、マイクロソフトは向こう3年間でメキシコに13億ドルを投資する計画を発表した。この投資は、AIインフラの強化とデジタルおよびAIスキル育成を目的としたイニシアチブに充てられる。具体的には、「Artificial Intelligence National Skills」プログラムを通じて500万人へのAIスキル教育の提供、中小企業のAI導入支援などが含まれる。
さらに2日後の9月26日には、ブラジルへの147億レアル(約28億ドル)規模の投資計画が明らかにされた。この投資も、同社35年間のブラジルでの事業展開において過去最大規模となる。サンパウロ州の複数のデータセンターキャンパスにおけるクラウドおよびAIインフラの拡充に加え、「ConectAI」と呼ばれるプログラムを通じて、500万人へのAIスキル教育などが実施される予定だ。
欧州でも、6月3日にスウェーデンへの32億ドル規模の投資計画を発表している。この投資は2年間で実施される予定で、同国のクラウドおよびAIインフラの拡充が進められるという。サンドビケン、ゲーブレ、スタッファンストルプの各データセンターに、最新のGPU(Graphics Processing Unit)2万台が導入される。またスウェーデン国内で、3年間に渡り25万人にAIスキル教育を提供する計画も明らかにしている。
これら一連の投資発表からは、マイクロソフトがグローバル規模でAIインフラの整備を急ぐ姿勢が浮き彫りとなる。各地域での大規模投資を通じて、AIの基盤技術とそれを扱う人材の育成を同時に進める戦略だ。こうした取り組みが、AI時代における同社の競争力強化にどうつながっていくのか、今後の動向が注目される。 【次ページ】ブラックロックとの提携、スリーマイル島原子力発電所再開
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