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  • 2016/10/11 掲載

今さら聞けないチャットボットの基本、人工知能はどうやって実装すべきか

野村総合研究所 長谷 佳明氏が解説

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ユーザーとの会話やテキストチャット等に自動的に回答する「チャットボット(bot)」に注目が集まっている。Facebookをはじめとするプラットフォームがビジネス向けに開発ツールをリリースし、検索サービスには新たな市場形成が期待されるなど、市場の動向は急激に変化している。チャットボットを取り巻くテクノロジーの動向、コンシューマー、エンタープライズ向けの活用シーンや実装に向けた課題について、野村総合研究所 デジタルビジネス開発部 上級研究員の長谷佳明氏が解説する。

チャットボットがなぜ注目を集めているのか

 「チャットボット」とは、bot、すなわち、人間に代わって自動的に処理を実行するプログラムのことで、テキストや音声によるユーザーとの会話(チャット)に、自動的に回答するプログラムのことだ。

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チャットボットは最新のAI技術を取り込んで改めて注目が集まっている

 かつては会話を通じて「人のように振る舞う」点から、「人工無脳」などといわれることもあったが、そんなチャットボットを取り巻く環境が激変している。

 契機は2016年4月、Facebookがメッセージングアプリ向けのチャットボット開発ツールを公開したこと。メッセンジャープラットフォームをビジネス向けに開放することで、さまざまな企業がメッセンジャー向けに、ユーザーが「今日の天気は?」とつぶやけば、会話内のキーワードを認識して天気を教えてくれたり、航空機のフライト予約ができたりするようなチャットボットを公開したことは記憶に新しい。

 こうした動きは、FacebookだけでなくLINEなどにも広がり、コミュニケーションインフラとして定着しつつある。

「2016年は企業がチャットボットを新たな顧客対応のチャネルとして活用する動きが本格化し、まるで人と会話しているような『パーソナライズされた対応』で顧客と1対1でつながりたいという企業が増えてきた」(長谷氏)

 また、コンシューマー分野だけでなく、エンタープライズ分野でもチャットサービスが急増している。代表的なサービスが、2014年2月にサービス開始となった「Slack」だ。これは、チャットベースの企業向けコミュニケーションプラットフォームで、サービス開始以降、2015年10月にはユーザーが100万人を突破、2016年5月には300万ユーザーを超えている。

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企業でもチャットサービスの利用者が急増。それをけん引するのがSlackだ

「仕事相手との情報のやり取りやコラボレーション、スケジュール共有まで、チャットサービスの中で、1日の生活すべてを過ごすことができる。また、Googleカレンダー、Dropbox、Githubといった外部サービスとの連携による利便性もポイントだ」(長谷氏)

チャットボットの活用事例、コンシュマーとエンタープライズでは異なる

 コンシューマー向けには、ニュース配信やコールセンターの一次対応、あるいは商品説明、エンターテイメント分野での利用シーンがある。一方、エンタープライズ向けには、スケジュール管理、調整やタスク管理、ファイル管理など業務効率化が主な利用シーンとなる。

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チャットボットの主な利用シーン

 コンシューマー向けの活用事例で代表的なのが、日用品通販「LOHACO」の「マナミさん」だ。

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日用品通販「LOHACO」のマナミさん

 LOHACOでは、2014年9月に問い合わせチャネルにチャットボットを導入した。これは、同社への問い合わせのうち、時間外の問い合わせが全体の4割を占めていたことによるもので、この時間帯の問い合わせ対応をカバーする形で、チャットボットの「マナミさん」が24時間対応を実現した。

「2016年の3月には、すべての問い合わせ件数の3分の1をマナミさんが対応し、その工数はオペレーター6.5人分に相当する。また、検索する行為とは違った、文脈、キーワードを汲んだ回答が特徴で、7割の顧客が『回答が適切だった』と評価しているという」(長谷氏)

 一方、エンタープライズ向けの活用事例では、米国のスタートアップが開発する「talla」が挙げられる。これは、スケジュール調整やタスク管理などを行う「秘書チャットボット」ともいえるもので、前出のSlackや、Office365、Googleカレンダーなどと連携し、タスク管理や旅費精算、メールの未読件数など、ユーザーが設定したタスク目標をチャット形式で教えてくれるアシスタント機能が特徴。「将来は日報製作まで視野に入れ、日常業務をサポートするツールに進化することが想定されている」(長谷氏)そうだ。

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日常業務を支援するチャットボット「Talla」

チャットボットの作り方

 では、企業はチャットボットサービスをどのようにはじめたらよいか、活用目的と実装方法を考えてみよう。たとえば、既存サイトの高度化が目的であれば、自社のWebサイトへの導入が効果的だ。

 一方、新たなサービスを生み出すことが目的であれば、スマホアプリや、Facebookなどのプラットフォームを活用するのが有効となるだろう。

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チャットボットの実装方法

 しかし、スマホアプリの場合、競合の多いスマホアプリでどれだけ新規顧客にアプローチできるかを検討する必要がある。ユーザーにインストールしてもらうことには、思ったよりも高い障壁がある。

 新規ユーザーの獲得機会では、やはり専用プラットフォームに軍配が上がるが、それでも万能ではない。プラットフォームが定めるアプリケーションの制約やサービス規約に則る必要があるからだ。たとえば、過度な広告についての制約事項や、ユーザーへの返信時間に関するレギュレーションなど、厳しい制約下でサービスを開発する必要がある点を考慮する必要がある。

 また、専用プラットフォームが提供するのは、あくまでプラットフォームと連携してメッセージの取得や送信などの接続機能を提供するAPIだという点にも留意する必要がある。つまり、チャットボット本体の会話機能や、ボットを動作させるためのサーバー環境は自分たちで用意する必要があるのだ。

【次ページ】チャットボットの会話機能の実装方法とは
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