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- 2017/12/27 掲載
SDGs ゴール4「教育」とゴール8「働きがい・経済成長」とは? 取り組みと企業事例を解説
誰でもわかるSDGs解説
世界で読み書きができない人のうち、約3分の2は女性
一方で、教育は国や地域、宗教によっても投資への考え方が大きく異なるのも事実です。児童を労働力とみなしている地域では、教育機会も不十分、かつ貧困率も高い傾向にあり、18歳未満の危険・有害な労働に就く児童は、世界でいまだ約1億5000万人、世界の子どもの10人に1人との数字もあります。また、世界の15歳以上で読み書きができない7億6000万人のうち、約3分の2は女性とされています。
ゴール4の開発目標は、「すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯教育の機会を促進する」です。誰もが、等しく基礎教育を受ける機会を得られること。それは、SDGsの理念である「誰ひとり取り残さない(No one will be left behind)」が謳う包摂性を強く体現したものです。
日本では、初等教育の就学率がほぼ100%、かつ大学や専門学校など高等教育への進学率も80%を超えるようになりました。その一方で、生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれる教育格差が社会問題化しています。親の経済格差が教育格差へとつながり、階層の固定化など社会全体の流動性や活力が損なわれてしまう懸念もあります。
国は、幼児教育の無償化や給付金奨学金制度など、経済的な支援を推し進めようとしていますが、学校外教育などで公的なセーフティネットからもれた児童を地域やNPOが必死に支えている現実もあります。
そして、日本人の平均寿命が男女ともに80歳を超えたいま、生涯を通じて学び続ける人が増えています。旧来の新卒採用、終身雇用という単線型社会から、社会人専門大学院での学び直しや人材交流も増えており、生涯を通じた多様な生き方や経験豊かな人材をいかに経済社会の活力につなげられるかが問われています。知識基盤社会ともいえる現代において、正解のない時代を生き抜く教育の重要性はますます高まっています。
三井住友信託銀行事例:持続可能な開発のための教育を地域で支援
では、ゴール4における企業の取組みをみましょう。三井住友信託銀行がCSR活動の一環として取組んでいる持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)です。ESDは、2002年に日本が提唱し、2005年から世界中で実施されてきた学習・教育活動です。持続可能な社会の実現にむけて問題解決への主体性を養い、身近な行動変容や価値観を育むことがねらいです。近年、金融機関が子どもたちへの金融教育を出前で実施する例が増えていますが、同行が取組んでいるのは、主に全国各地の学校拠点の周辺にある自然と人との共生をテーマにした地域自然学習です。
この取組みには地域で守られてきた自然を次の世代に託す(トラスト)意味が込められています。同行は、2012年より全国各地の教育委員会、学校、環境団体とのパートナーシップを組んで、出張授業を展開してきました。
その1つ、和歌山県田辺市天神崎を題材としたESD授業では、地元「天神崎の自然を大切にする会」の協力で、田辺市立田辺第三小学校5年生の児童と自然を守ることの大切さを考えました。
天神崎は、破壊や開発の危機にある文化財や自然の風景地を市民や自治体がお金を出して保全を行うナショナル・トラスト運動の先駆けとして有名です。授業では、教員資格を持つ行員が講師役を務めながら、天神崎の別荘開発計画を機に、市民が立ち上がり保全を進めてきた歴史や守るべき自然の豊かさについて、児童自らがフィールドに出掛けて活動団体の大人に話を聞きながら学習を進めました。
同行の取組みは、学校、生徒、そして地域の活動団体からも好評を得ており、多様なセクターが協働して質の高い教育機会を提供する「ゴール4(教育)」に相当します。
SDGsの実現には、人間の尊重、多様性の尊重、環境の尊重など世界が共有する普遍的な価値と、それを担うための多面的かつ総合的な思考力、批判的思考や分析能力などのコンピテンシーを備えた人材の育成が不可欠です。
日本では、ESDの推進は全国約800校近くのユネスコスクールを中心に実施されてきましたが、ESD自体の持つ考え方は、持続可能な社会を担う人材教育として、むしろすべての学校に適用してもよいものです。知識の量ではなく、知識の使い方が試される現代において、早くから社会や地域の課題に学ぶことは、課題解決を担うリーダーシップ能力の育成にも役立ちます。加えて、学校のみならず、地域の大人、そして企業も教育に参画することが、学びをより一層豊かなものにするでしょう。
【次ページ】ディーセント・ワークが持続可能な社会づくりの礎になる
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