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  • 2021/09/28 掲載

ロレアルが推進する「本気のSDGs」、すでにほぼ全設備でカーボンニュートラル達成

連載:2030年への挑戦

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2030年を見据えた「SDGs(持続可能な開発目標)」の取り組みにおいて、化粧品業界大手のロレアルグループは世に先駆け、1970年代からサステナブルな企業作りに取り組んできた。2020年6月には、2030年を見据えた企業目標を公表し、多くの施策が実行に移されている最中だ。日本ロレアル ヴァイスプレジデント コーポレート・コミュニケーション本部長 楠田 倫子氏に同グループの取り組みを聞いた。
執筆:鈴木雅矩、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

執筆:鈴木雅矩、編集:ビジネス+IT編集部 渡邉聡一郎

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日本ロレアル
ヴァイスプレジデント
コーポレート・コミュニケーション本部長
楠田 倫子氏

ロレアルが予想する、2030年までに起きる5つの社会変化

 目標設定は現状把握から始まる。今後の10年を考えたとき、社会にはどのような変化が訪れるのか。楠田氏は「2030年までのグローバルの変化として、ロレアルが注目しているトピックは5つあります」と話す。

  1. 中産階級の台頭:
    新興国・途上国の経済が成長し、可処分所得の増加にともない大規模な中産階級が形成される。
  2. 若い世代の躍進:
    「Z世代」のような新しい価値観を持った若者が増え、消費動向が変化する。SNSによって若い世代の発信力が高まっている。
  3. シニア世代の変化:
    従来のイメージとは異なり、行動的で総人口も増えている。
  4. メンズコスメの普及:
    先進国を中心に少しづつ需要が顕在化してきているが、特に中国で消費量が増加傾向にある。
  5. 都市化の進行:
    中東・アフリカなどで都市化が進み、人々の生活様式や価値観に変化が起きている。

 これらは経済成長と関係が深い。近年では、経済活動に伴う環境破壊や社会課題の発生が問題視されてきた。経済は無限に成長を求めるが、地球の資源には限りがある。ロレアルグループも持続可能な企業へとかじを切るため、2020年6月にサステナビリティ・プログラム「L'Oréal for the Future」を発表。その中にSDGsの各目標を網羅的に盛り込み、各国で活動を進めてきた。


「ロレアルグループの社会貢献活動の歴史は古く、製品テストの動物実験を減らすべく1970年代から人工皮膚を活用してきました。今回の『L'Oréal for the Future』では、『プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を尊重した事業活動』『ステークホルダーを巻き込み、サステナブルなエコシステムを実現する』『火急の社会的・環境的ニーズの支援』の3つの柱を掲げ、SDGsの実現に取り組んでいます」(楠田氏)

 この計画は2030年に向けて進められているもので、いずれの施策でも測定可能な数値目標が設定されている。

日本の重点施策はCO2とゴミの削減、女性の社会進出支援

 ロレアルグループは世界各国に支部を持つグローバルな組織だ。環境負荷の度合いや社会的なニーズは国によって異なるため、「L'Oréal for the Future」も各国の状況に合わせてカスタマイズされているという。

 日本ロレアルでは目標達成率が低い「CO2削減」「ゴミの削減」「女性の社会進出支援」を重点的に推進している。

 まず「CO2削減」では、再生エネルギーの購入により、店舗・倉庫・研究所・工場など事業に関わる全設備のカーボンニュートラル化を推進した。この施策は完了間近で、残るのは工場のボイラー設備を入れ替えるのみ、となっている。加えて、営業車の電気自動車化や物流配送ルートの見直しなどを行い、CO2削減に努めている。

 「ゴミの削減」では、2030年までに事業ゴミのリサイクル推進を目指している。自社の11ブランド店舗に製品容器の回収箱を設置するほか、パートナー企業の協力の下、店舗改装時に出る廃棄物も再利用する。近年では社内にエコデザイン基準を設け、環境負荷が低いパッケージや店舗什器、販促物を作成しているそうだ。

 「女性の社会進出支援」では、シングルマザーの社会課題に取り組む。具体的にはシングルマザーの就業支援プログラムを展開。「コミュニケーション」「身だしなみ」などの基礎講座に加え、美容職コースと事務職コースに分かれて希望の職種にあったスキルや技術を学ぶことができる。

 女性の管理職登用にも積極的で、日本ロレアルでは役員の40%、管理職の51%を女性が占めているという。2020年の日本企業における女性管理職比率は11.9%(厚生労働省調べ)なので、同社の数値は非常に高い。

【次ページ】経営理念に沿って活動すれば、SDGsは自然と進む
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