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- 2017/12/06 掲載
警察でも利用進む人工知能(AI)、警官の役割はこう変わる
ファーガソン事件後にボディカメラ販売が急増
米ミズーリ州ファーガソンで、黒人青年マイケル・ブラウンさん(18歳)が白人警察官によって射殺された痛ましい事件が起きたのは2014年8月のこと。ブラウンさんは武器を携帯しておらず、白人警察官は大陪審にかけられたものの不起訴処分が決定した。これによりファーガソン、そして全米各地で抗議行動が起き、一時は全国的な暴動すら懸念された。白人警察官による黒人への暴行が実際に暴動に発展した事件としては1992年のロサンゼルス暴動がある。ロドニー・キングさんへの暴行事件をきっかけとして大規模な暴動に発展し、53人が死亡、負傷者は2000人を超え、被害総額は最大で10億ドルとされた。
こうした事件の記憶から「警察官のボディカメラ装着」を求める声は多かった。ボディカメラで警察官の行動を記録することにより、実際は何が起こり誰に非があったのかを裁判で明確にできる、という考え方だ。
しかし、ファーガソン事件では警察官はボディカメラを装着しておらず、批判の的となった。警察官向けのギアなどを販売しているAXON社によると、ボディカメラの販売は2013年から増加傾向にあったが、ファーガソン事件後には急激に増え、2014年末の時点で総売り上げが2500万ドルに達した。
いまだマンパワーで映像をチェック
しかし問題はこうして撮影されたビデオをデータ化し、分析する手法をどの警察もまだ確立していない、という点だ。
たとえばファーガソン事件のような出来事が起きて、初めてカメラの映像を分析することになる。日常的にカメラの映像から「警察官の捜査方法に問題はないか」を指摘するまでには至っていない。
しかも警察が分析すべきビデオ映像は警察官のボディカメラだけではない。2017年末の時点で世界中に存在する監視カメラの台数は1億2700万台に達するという(IHS Markit調べ)。IHSによるとこうした監視カメラの市場は今後も増大し、売上高は2018年には260億ドルに到達する見込みだ。
事件が発生した時、警察ではこうしたビデオ映像を検証し犯罪を立証する必要がある。よく刑事ドラマなどで警察官が徹夜で映像をチェックし、容疑者の姿を発見する、というものがあるが、実際に現時点ではマンパワーによってチェックが行われている。
【次ページ】さらに今後は警察官の「あの職務」を飛躍的に効率化
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