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テクノロジーを活用することで、マス相手であっても顧客一人ひとりに最適なシナリオを構築し、それを実行できるデジタルマーケティングの時代に突入している。こうした中で、各種マーケティング施策やキャンペーンに反応する顧客を「イヌ型」とすれば、自分の好みを最優先し、世間のブームに流されず、これまでマーケティング担当者がなかなかリーチできなかった「ネコ型」顧客も重視するべきと主張するのが、デジタルマーケティングに長く取り組んできたネットイヤーグループだ。「ネコ型」マーケティングとは何か? またイヌ型マーケティングにも求められる新視点とは何なのか。
デジタルマーケティングでは「一人ひとり」
「いまはマスコミも大手企業もデジタルマーケティングという言葉を盛んに使っているが、5年前はまったく定着していなかった」
ネットイヤーグループ代表取締役社長 兼 CEOの石黒不二代氏はこう切り出した。同社は創業以来、デジタル時代のマーケティング戦略により、企業の成長を支援してきた。
石黒氏は「近い将来、すべての人類とすべてのデバイスが一つのIPアドレス、クッキー、メールアドレスなどのソーシャルアカウントを持つことになる」と予見する。
デジタルマーケティングの時代になると、特定の人に特定のメッセージを送ることができるようになる。つまりデジタルマーケティングの時代に必要なことは、一度にたくさんの人にリーチすることではなく、「一人ひとりのお客さまとのお付き合いのシナリオを作り、永続的な関係性を構築することだ」(石黒氏)。
インターネットが商用化されたことで、流通する情報は10年間で500倍になった。情報が溢れているので、企業が情報を発信しても、消費者に流されてしまうことがある。しかも消費者自身が声を出し、消費者同士でつながりを求めるようになった。
そんな時代に企業側に求められるのは、「欲しいものを把握し、必要な人に必要な情報を最適なタイミングで提供すること」(石黒氏)。だからこそ、消費者のリアルタイムの行動や興味・関心のデータを取得し、それを解析しながら、マーケティングをしていくデジタルマーケティングが必要となる。
従来の施策が効かないネコ型顧客
こうした中で今、同社が重視しているのが「ネコ型マーケティング」だという。研究を行うネコラボの研究員であり、ネットイヤーグループ 取締役の佐々木裕彦氏はマーケティングの分野では、RFM分析しても特性がわからないセグメントの人たちが一定量いると指摘する。
たとえば「ショップカードは毎回忘れる。ポイントの後付もまったくしない。でもよく買いにくる」「メルマガやクーポンに反応しないけど、特典もないタイミングでふと買いにくる」「オンライン/オフラインなど買う場所も一定しないし、買うタイミングも規則性がない」という人たちだ。
「マーケティングを担当している人なら、こういう人が存在していることに気付いているはず」(佐々木氏)。その問題は施策の中身にあるわけではないと考えた同社では、真偽を確かめるべく6万人にオンライン調査を行ったという。
「購入頻度が高い人は好きなブランドの施策(メルマガ、キャンペーン、クーポン、SNSなどの総合)に反応するか」という問いには57%の人が「反応しない」と回答した。そして「こういう人たちを『ネコ型顧客』と命名した」(佐々木氏)。
ネコ型と対照的な存在が、イヌ型の顧客だ。イヌ型がおススメなどを素直に受け取るのに対し、ネコ型は好きなモノしか求めない。情報感度についてもイヌ型が「メルマガはチェックする」のに対し、ネコ型は世間より自分の感度を優先し、口コミなどには興味をあまり示さない。
イヌ型顧客がトレンドに敏感なのに対して、ネコ型はマイペースで自分の興味が一番大事。距離感についてイヌ型は買い物中に声をかけてほしいと思っているのに対し、自分が声をかけるまでは近づいて欲しくないという人たちだ。
「ネコ型顧客とイヌ型顧客は確かにいる。だが、従来まで私たちもイヌ型顧客に対してしかマーケティングしてこなかった」(佐々木氏)
ネコ型を惹きつけるマーケティングとは?
そこで同社ではネコ型マーケティングを始めることにしたという。「ネコ型とイヌ型双方とコミュニケーションすることでリーチの拡大を狙う」(佐々木氏)。
ネコ型の最大の特徴は「信じるのは自分の感覚のみ」で、世間の評価には関心がないこと。つまりイヌ型に対して行っていた従来の施策は、ネコ型には効かないわけだ。「ネコはネコのまま育てることが重要だ」(佐々木氏)。
では、どのようにネコ型マーケティングを実践すればよいのか。それにはまず、顧客分析でイヌ型、ネコ型を分類すること。「1年間という長い視点で見ることが重要」と佐々木氏は語る。
自社のネコ型顧客を見分けるためのめの手法として用いられるのが、アンケートやインタビューである。過去1~2年間で一定以上の購入実績がある顧客に対して購入理由、メルマガやアプリの利用など販促施策が届いているかを探るのだ。たとえばアプリの利用について、「使っていない」「メールは読んでいない」「自分の趣味嗜好にマッチするイベントには興味がある」という回答が得られれば、「ネコ型顧客」に分類される。そしてネコ型のカスタマージャー二―を描くのである。
ネコ型顧客を捉える主な方法として、佐々木氏が最初に紹介したのがカスタマイゼーションだ。「ネコにはどんなものがどういうタイミングで欲しいのか、ストレートに聞き、好みに合わせてカスタマイズする」(佐々木氏)。
第二の方法はコンテンツマーケティングである。「ネコは自分が好む砂場に集まってくる。そして自分が欲しいタイミングで欲しいものをほしがる」と佐々木氏。つまりネコには商品軸ではなくて、ネコが興味を持つ文脈軸でコンテンツ、イベント、情報発信をし続けて砂場に誘い込むことが得策だと言うのである。
「ネコはどんな消費特性を持っているのか、など、そのアプローチ方法を研究していく。その成果をウォッチしていてほしい」(佐々木氏)
【次ページ】イヌ型顧客の「新視点」とは?
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