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- 2025/02/27 掲載
コメ価格が「過去最大上昇」本当の理由、転売や備蓄米放出時期どころではない大失敗
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
コメ価格、「過去最大」の上昇幅
総務省が2月21日に発表した1月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、生鮮食品を除く総合が109.8となり、前年同月比で3.2%上昇した。食品価格の高騰が影響し、特に米類は7割以上の値上がりを記録し、過去最大の上昇幅となった。こうしたコメの価格高騰が続いている中で、世論の一部、識者の一部では「転売」が問題視されている。
2024年産のコメは、前年より18万トン増産されたにもかかわらず、JA全農などの集荷業者が買い集めた量は前年より21万トン少なかった。生産量が増えているにもかかわらず、市場に流通する量が減少しているという不可解な状況が発生している。
この差分となる21万トンの所在について、江藤拓元農水相は「どこかにスタック(滞留)していると考えざるを得ない」と発言しており、農水省ですらその流通状況を把握できていない。
坂本哲志元農水相も、「これまでコメを買わなかった人たちが急に買い始めたことで、コメが投機の対象となった。流通に不透明な部分があり、それを私たちが適切に判断できなかった結果、高値が続いた」と指摘している。
コメ価格上昇は「転売」が理由ではない
しかし、マーケットの全体から「転売」という現象を考えると、転売そのもの、もしくは「流通に不透明な部分がある」から価格上昇になっているわけではない。根本的な要因は供給の不足にあることがわかる。市場に十分なコメが行き渡っていないからこそ、転売や投機の動きが活発化するのであり、供給が安定していれば転売が成立しないことは市場の基本原理である。
価格が上がれば利益を狙う動きが生じるのは当然の市場の動きであり、転売規制のみで問題を解決しようとするのは、原因と結果を取り違えた短絡的な対応に過ぎない。コメ価高騰の本質は、生産と流通のバランスの崩れがある。
転売批判を前面に押し出し、市場の混乱を「外的要因」として片付ける姿勢は、行政の責任逃れとも受け取られかねない。市場の実態を精査し、根本的な供給不足の改善に向けた対策を講じることこそ、本来求められる対応である。
気になる証言もある。筆者は、農水省関係者と定期的に情報交換をしているが、そのときに得た証言が衝撃的なものが大きく2つあったので、次に紹介したい。 【次ページ】農水省関係者からの2つの衝撃証言
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