- 2025/03/13 掲載
日本人の強すぎる「新米信仰」、備蓄米流通の妨げに?過熱報道で“陰謀論”まで出現…
連載:インフレ時代の農業

コメ価格上げ止まり…備蓄米放出の影響は限定的
農林水産省は、米価高騰を抑えるため、政府備蓄米の入札を3月10日に始めた。だが、その放出が決まってからも、コメのスポット価格は上がってきた。スポット価格とは、スポット、つまりその場でコメを手当てすべく買い付ける際の価格をいう。長期にわたって取引する場合と比べ、高値がつきやすい。とはいえ、そうそう米価は下がらないという現状の相場観を反映したものには違いない。
米価を下げて国民のガス抜きをする──。それが備蓄米の放出に期待される役割なのに、入札の直前である本稿執筆時点でも、価格は上げ止まったままだ。

ブレンド米は「消費者が求めるコメではない」
放出する21万トンのうち、農水省はまず、3月10~12日に2024年産米10万トンと2023年産米5万トンを入札にかける。つまり新米が10万トン、古米が5万トンである。新米だけでなく古米が一緒に放出されることに、ある米穀卸はこう懸念を示す。「新米と古米を混ぜ合わせたブレンド米は、消費者が求めるコメではありません」
単一の銘柄を十分な量競り落とせなければ、落札した集荷業者はブレンド米にして売るしかなくなる。備蓄米の入札の条件を見ると、ブレンド米にせざるを得ない可能性があるという。
というのも、農水省が3月初旬に公表した「政府備蓄米の買戻し条件付き売渡し対象米穀一覧表」は13ページもの長大なリストになった。さまざまな産地品種銘柄が、最も等級の高い1等~3等や、フレコン・紙袋の包装の種類まで小刻みに記されているからだ。

そもそも、放出量が多い銘柄からして、消費者に人気とは言いにくい。多いのは、「青森県産まっしぐら」「宮城県産ひとめぼれ」「山形県産はえぬき」「新潟県産こしいぶき」など。いずれも値ごろ感があり、中食・外食といった業務用に向き、コメ業界ではいわゆる「B銘柄」とみなされる。「新潟県産コシヒカリ」や「北海道産ゆめぴりか」に比べ、ランクは落ちる。 【次ページ】日本人の強すぎる「新米への信仰」…実際“新米”って良いの?
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