- 2025/03/15 掲載
転売ヤーの責任? コメの値段を上げているのは「自民党と農水省」と言えるワケ
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
迷走を続ける自民党と農水省のコメ政策
農林水産省(農水省)は、3月3日に政府備蓄米の放出に向けた入札を10日から12日に実施すると発表したが、コメの価格高騰は続いている。そんな中、自民党と農水省の迷走ぶりを象徴するかのようなある事件が起きた。
2月28日の衆院予算委員会分科会で、日本維新の会の徳安淳子議員が政府備蓄米の放出について質問した。コメの店頭価格が高騰し、国民が購入しづらい状況を指摘したが、江藤拓農林水産相は「価格の安定なんて書いてありません、食糧法には」と4回繰り返した。
食糧法の正式名称は「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」であり、条文にも「価格の安定」の文言が20カ所近く明記されている。野党議員から「書いてある」とのやじが飛び、官僚も慌てて指摘したが、江藤氏は「はいはい。分かりました」と述べるにとどまった。徳安氏が「書いてあるのか、ないのか」と追及すると、「大変失礼しました。書いてありました」と訂正した。
江藤氏は1月31日の記者会見で「国会議員になってから目を通していたが、これほど隅々まで読んだことはない」と発言し、2月7日には「第3条2項、49条、1条を読み込んだ」と述べていた。しかし、実際の答弁では法律の基本的な内容を理解していないことが露呈するような失言であり、閣僚の資質を問う声が上がった。
農家の自由を制限し、供給力を抑える減反政策を継続
農水省関係者は匿名を条件に、この江藤氏の失言をこう庇った。「江藤大臣は、自民党の中では自他ともに認める<政策通>とされていて、この失言は本人にとっても恥ずかしいものだろう。しかし、あえて江藤大臣の失言を庇うのであれば、これまでの自民党のコメ政策は、供給の問題でしか捉えてこなかったという経緯がある。自分の仕事をコメの供給をしっかりとしたものにすることとしか捉えていなかったことから、『価格の安定』という文言がすっぽりと抜け落ちてしまっていた。ここ数年、日本ではコメの不作が続いていたが、対策を取るどころか、自民党や農水省は価格が上がるとしてポジティブに受け止めていたのですから」
自民党と農水省の農業政策は、農家の自由を制限し、供給力を抑える減反政策を続けてきた。食料安全保障を確保するには、自給率100%を維持するのではなく、120%や140%といった余剰分を確保し、飢饉や不作の際に国内供給を安定させるほうが合理的である。
農家に自由を与え、競争力を高めることで、日本の農業全体の生産力向上につながる。しかし、政府は依然として規制を続け、農家の成長を阻害し、食料安全保障を脆弱なものにしている。 【次ページ】さらにコメ価格を上げる「ミニマム・アクセス米」問題
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