- 2025/03/15 掲載
転売ヤーの責任? コメの値段を上げているのは「自民党と農水省」と言えるワケ(2/2)
さらにコメ価格を上げる「ミニマム・アクセス米」問題
何より、消費者がコメ価格の高騰によって苦しめられていることにあまりに無関心であることは、江藤大臣の失言でもわかる。そして、この令和の米騒動のどさくさに紛れて、自民党と農水省は、まだまだコメの統制を続け、価格を上げようとしている。それはミニマム・アクセス米の廃止だ。
ミニマム・アクセス(MA)米とは、1993年のウルグアイ・ラウンド合意に基づき、日本が一定量のコメを輸入することを義務付けられたものである。国内需要の割合に応じて段階的に輸入量が増加し、加工用、海外援助用、飼料用として利用されている。輸入により減反政策が進み、国内生産が縮小したと指摘されている。輸入量の多くが米国産であり、対米依存の象徴と批判されてきた。
その批判は多岐にわたる。ミニマム・アクセス米の流通を支配する多国籍企業(豊田通商、丸紅、三井物産、三菱商事、住友商事)を名指しし、「対米追随の農政」と結びつけたもの。ミニマム・アクセス米が日本の食料自給率を低下させているというもの。ミニマム・アクセス米の受け入れを「屈辱的な譲歩」と捉えて、国際経済における交渉の現実を無視した単純な発想に陥るもの。過去にあった不正転売事件をミニマム・アクセス米と強引に結びつけたもの。
いちいち、このレベルの低い批判に答えるのも面倒だが、職業作家としてこれらに向き合ってみたい。
まず、商社がコメの流通を担っているのは、当然のことであり、コメをたくさん作って海外へ売り込む際も、商社を使う機会が増えるだろう。小規模も多い農家が、商社を経ずにどうやってものを売ろうとするのか。
日本の食料自給率が低下している主因は、国内消費の減少と農業の競争力低下であり、ミニマム・アクセス米の存在の責任にするのは、八つ当たりに近い。不正転売事件や転売ヤー批判にも同じことが言えるが、問題の本質は、政府の検査体制の不備と業者の不正行為であり、これらはすべて論点をすり替えようとする悪質な印象操作に過ぎない。
そして今、自民党と農水省は、このミニマム・アクセス米の廃止を訴えている。
共同通信(2月12日付)の報道によれば、
江藤拓農相は(2月)12日の閣議後記者会見で、日本が年間約77万トンを受け入れているお米のミニマム・アクセス(最低輸入量)について、縮小を求めて関係国との議論を始めたことを明らかにした。財政負担の軽減が目的。という。
海外で戦える「高付加価値」な農産物の重要性
ミニマム・アクセス米がダメな制度だったとしても、なぜ、コメの値段が高騰して、消費者から悲鳴があがっているこのタイミングで、コメの供給を減らす政策を開始するのか、誰もが疑問を持つことだろう。これは冒頭の江藤大臣の失言にもあったように、コメの価格を下げようなどとこれっぽっちも思っていないという決定的証拠である。コメの減反政策に代表されるような供給量を規制するのをやめ、供給量を増やすことに専念すべきだ。
農政においては、「守る」(海外産の米を輸入するな)ということばかりが強調されるが、日本の農業品質は世界的に極めて高い。輸入も輸出も自由にすることで、「攻め」(海外輸出)に転じることができる。
国内の規制に縛られるのではなく、積極的に海外市場を開拓し、高付加価値農産物の輸出を拡大すべきである。
保護主義政策は中長期的に見れば産業の衰退を招くことは明らかであり、いずれにせよ競争力を高めるしかない。「生きがい農業を守る」のような感傷的なスローガンでは農業の再生の実現は難しいだろう。合理的な農政改革を断行し、持続可能な農業へ転換すべきである。
米の供給を増やし、貿易自由化を進めることで、農家の収入を向上させ、消費者には安定した価格で提供できる。現在、農水省が行っている政策はその真逆である。農家の収入を固定化し、長期的には下落させ、補助金依存を強める一方で、消費者にとっては米価の高騰を招く亡国の政策を続けている。
日本人にとって大切な稲作文化を、自民党や農水省は本当に守る気があるのか。むしろ、破壊しようとしているのではないかと疑わざるを得ない。
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