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- 2024/11/01 掲載
自給率よりよっぽどヤバい「肥料不足」、埼玉県に聞いた「下水汚泥」の可能性
「インフレ時代の農業」
円安が続き、輸入に依存する「化学肥料」の価格の高騰が危惧されている。食料安全保障では自給率が注目されるが、実際には化学肥料の輸入ができなくなることが、日本農業に最も深刻な影響を与える。そこで、肥料の代わりとして「下水道由来の汚泥(おでい)」が注目されている。なぜ、下水汚泥が肥料として役立つのだろうか。行政として初めて下水汚泥由来の肥料を「菌体りん酸肥料」として登録した埼玉県下水道局の製造現場を訪ねて、同局下水道事業課管理運営担当の井村 俊彦氏、下水道事業課長の水橋 正典氏、荒川左岸南部支社の矢作 英智氏に話を聞いた。
食料安保で最も重要なのは「化学肥料」
食料安全保障というと、食料自給率の低さばかりが注目されがちだ。食品の輸入が止まれば日本人は生きていけない、だから自給率を上げなければならない。よくこんなふうに言われる。“農政の憲法”とも呼ばれる「食料・農業・農村基本法」が2024年5月に改正されたときも、緊急時にいかに食料を確保するかばかりが注目された。実のところ、輸送が途絶えると最もまずいのは、化学肥料のほうだ。もし輸入できない事態になれば、日本の農業は早晩立ち行かなくなる。
化学肥料の原料は、ほとんどを輸入に頼る。海外からの供給に頼り切っているところに起きたのが、2021年に始まった原料価格の高騰だ。世界的に肥料の需要が高まり、国際市況が上がったところに円安が重なった。
世界の人口は増え続け、有限である肥料の原料は埋蔵量を減らし続ける。今後、化学肥料の価格が値上がり基調で推移することは間違いない。これまで通り輸入し続けられなくなったら、食糧の生産は止まってしまう。
肥料の原料を選ぶとき、重要なのは安価で大量に入手できること。肥料は利幅の少ないもうかりにくい産業だ。原材料は比較的安価で値動きが少ないものを選んでいくことになる。海外産の原料は量を確保しやすいが、今後の値動きは需給や為替の動向が影響して読みにくい。
肥料不足を救う「下水汚泥」
そこで注目されたのが、下水汚泥だった。下水を処理すると生じる泥状の物質。これは下水に含まれる有機物を分解した微生物の塊、つまり「菌体」である。関連コンテンツ
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