ジャーナリスト 山口 亮子
愛媛県生まれ。京都大学文学部卒。中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信社を経てフリーに。新刊に『日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―』(新潮新書、2024年1月)、共著に『人口減少時代の農業と食』(ちくま新書、2023年)、『誰が農業を殺すのか』(新潮新書、2022年)など。日本の食と農に潜む課題をえぐり出したとして、食生活ジャーナリスト大賞ジャーナリズム部門(2023年度)受賞。雑誌や広告など企画編集やコンサルティングなどを手掛けるウロ代表取締役
日本の農業の最も差し迫った課題は、農家が減ることでも、高齢化することでもない。物価の上昇に農産物価格の上昇が追い付かないことだ。実際、「食料インフレ」と言われさまざまな食品が値上げされる中、コメは異常なまでに値下がっている。現在は秋の収穫を前にした端境期(古米が新米に入れ替わる時期)のため、一時的に値上がりしているが、新米の出来次第では再び下がるだろうし、仮に値上げが維持されたとしても長続きはしないだろう。背景には、日本の農業における構造上の問題がある。また、日本は農家が高齢を理由に一斉に廃業する「大量離農時代」に突入している。このような状況はアジアの発展途上国と似通っている。日本の農業は大丈夫なのだろうか。