- 会員限定
- 2024/12/27 掲載
異常気象で高騰する果物価格、こたつでみかんも無理?スーパーの売り場に起きた異変
「インフレ時代の農業」
イチゴは2年連続で猛暑により値上げ
イチゴはクリスマスシーズンに入る前から、不足に伴う値上げが続いてきた。私自身、12月に入って、イチゴをあしらったケーキのカット技術の巧みさ、要はイチゴのかつてない薄さに驚かされた。イチゴが高騰する中で価格を維持するためのケーキ店の苦労がしのばれた。イチゴは秋以降も続いた猛暑が影響して、供給が不足気味。需要はクリスマスシーズンに最も高まり、価格も上がるので、農家はこの時期に出荷できるよう調整する。それが温暖化で狙った時期に出荷できなくなっている。2023年も同じことが起きた。
果物は、収穫の秋に流通量が減って、価格が上がる。2023年からすでにあったこの流れが今年、輪をかけて進んだ。少なくないスーパーで、今秋以降、果物売り場は歯の抜けたような、スカスカした状態になっていた。
スーパーの売り場で「訳あり」と書かれた果物が多かったのも、今年の特徴だ。柿の実の日焼けや、猛暑によるリンゴの着色不良などを知らせるポップが目についた。
リンゴは昨年に続き今年も、猛暑で供給量が減り値上がりした。
柿は、猛暑による日焼けと、各地で大発生したカメムシの食害で、傷物が多かった。
年末にかけて需要の増えるみかんは、不作。
そもそも大産地が、今年は収穫量の少ない年に当たっていた。かんきつは、収穫量の多い表年と少ない裏年で差が出る「隔年結果」が起きやすい。今年は「裏年」だった。さらに、猛暑やカメムシの食害が重なり、ダメ押しになった。
温州みかんの出来が悪いだけではない。贈答用に引き合いのある「紅まどんな」といった中晩柑(ちゅうばんかん)も、高値で推移している。中晩柑とは温州ミカンの収穫が終わった1~5月ごろに出回るかんきつの総称だ。主産地の愛媛が不作である。
豊作の方が珍しく輸入も高い
今年の秋冬、順調だったのは増産し過ぎの感があるシャインマスカットと、豊作だったラ・フランスくらい。シャインマスカットは貯蔵がきくので、冬場も安定して供給できるようになっている。高騰するイチゴの代わりに、シャインマスカットをあしらったクリスマスケーキも見られた。輸入果実も、不作や円高でかつてのような値ごろ感が失われつつある。
農林水産省は、農業版の消費者物価指数といえる「農業物価指数」を公表している。2020年を基準として、現在の農産物や資材の価格がいくらになるのか算出したものだ。
それによると、24年10月に農産物価格指数は126.5だった。9月に比べると6.8%、前年の10月に比べると5.3%上昇している(図1)。
前年同期比を押し上げた最たる理由は、コメの高騰だ。けれども秋以降の指数の上昇でいうと、9月に比べて27.5%上がった果実も影響した。
果実の指数の推移を見ると、2023年も秋以降に値上がりする、似たような傾向にあったと分かる(図2)。
そもそも果実は、生産者の高齢化という時限爆弾を抱えている。作付面積は、高齢農家の離農で減り続けている。 【次ページ】農家の高齢化という時限爆弾
関連コンテンツ
PR
PR
PR