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  • 2017/08/29 掲載

グーグル、アマゾン、FBなどの「ビッグデータ寡占」に独禁法が無力なワケ

連載:米国経済から読み解くビジネス羅針盤

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グーグル、アマゾン、フェイスブックなど各分野で一強の支配的地位を確立した米IT大手。現在、人々の消費活動やメディアから受け取る情報など生活の大きな部分を支配するばかりでなく、今や川上のベンダーやサプライヤーに無理な値引きを強要できる立場にある。こうしたIT時代の新しい現実に対し、現行の独占禁止法では対応できないとの声が上がる。今後、IT大手は規制・分割の道を歩むのか、また消費者の利益はどう確保されるべきなのか。
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IT大手はフェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグルの頭文字をとってFANGとも呼ばれる

IT企業の支配的地位を可能にするデータ独占

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 創成期には群雄割拠の状態だった米テクノロジー業界の多くの分野で、一強企業が独占的なシェアで支配的地位を確立するようになって久しい。検索のグーグル、ソーシャルメディアのフェイスブック、eコマースのアマゾンが代表例だ。

 これらの分野では新規参入が極めて難しくなる一方、独占的企業がサプライヤーやベンダーに価格面で多大な支配力を行使し、公正な競争を妨げているとの懸念が米論壇で日々高まっている。

 共通するのは、「ビッグデータの寡占的な所有と分析による独占的地位の濫用(利益相反)」「独占禁止法の概念や業界の垣根を超えた支配的地位の構築」など、現行の規制や司法解釈では対応できない、権力行使の実態だ。

 フェイスブックは、13億2000万人の1日当たりアクティブ・ユーザー(DAU)を誇り、傘下の写真投稿アプリであるインスタグラムの2億5000万人を合わせると、影響力は絶大だ。

 こうしたなか、フェイスブックが最近話題の「フェイクニュース」の防止に乗り出した。同社は「何が正しく、何がそうでないか」という世論形成にかかわる重要な判断を下し、フェイスブックからニュースのほとんどを得るユーザーと、ニュース商品の売り手であるメディアとの関係性を左右できる立場にある。グーグルの検索順位表示機能も、同社に似たような権力をもたらしている。

 さらに、これだけ利用者規模が大きくなると、ユーザーから得られる個人や集団のビッグデータによる正確かつ、より大きい広告効果を狙う広告主からの収入も巨大化する。フェイスブックとグーグルの2社は、米オンライン広告市場の58%を独占し、メディアと消費者への影響力を増大させている。データ独占は、大手企業の影響力を何重にも増幅させるからだ。

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デジタル広告市場のシェア

高まるIT企業の規制・分割論

 一方、アマゾンはシェア獲得のため、採算を度外視した安値とサービス精神により、米国の電子商取引分野で約3分の1のシェアを持つようになり、オンラインで買い物をする米消費者の半数以上の55%が、まずアマゾンのサイトをチェックする。

 消費者の買い物履歴・志向、スマートスピーカーのEchoでの検索履歴、さらに商品やサービスの売れ筋ビッグデータを蓄積するアマゾンは、企業向けクラウドのAWSで得られるデータも併せ、分野の垣根を超えて商取引全般で消費者とベンダー・サプライヤー双方に対する価格決定権を握るに至った。

 こうした中、民主党左派を中心にIT企業の規制・分割論が高まっている。しかし、現行の独占禁止法はその司法解釈において、短期的な価格下落による消費者保護のみを基準にするため、垂直統合によるアマゾンの規模拡大で消費者が安く商品を手に入れられることは、むしろ好ましいということになる。

 また、アマゾンが小売市場で急成長するシェアをテコにして、ベンダーやサプライヤーに持続性のない卸価格を要求することは、消費者保護とは直接関係がないため、規制の対象にならない。

 加えて、eコマースで独占的地位を築いたアマゾンは、「小売り全体では実店舗売上が90%以上を占め、電子商取引はまだ10%未満だ」「8月23日に米政府の認可を受けた米食品小売大手ホールフーズの買収で、アマゾンは年間6000億ドル(約65兆円)規模の米生鮮食品市場の2%を占めるに過ぎず、競合のウォルマートの20%のシェアに及ばない。それどころか、この買収で生鮮食品部門の価格競争が激化し、消費者が恩恵を受ける」と主張する。

 フェイスブックの世論形成力やグーグルの検索やスマホOSにおける支配も、「消費者の利便性や生活水準を向上させている」として、現行の独占禁止法による規制や分割の対象にはなり得ない。

 これは、1963年に米連邦最高裁判所が企業の権力肥大を戒め、「あらゆる市場で30%以上のシェアを持つことは、独禁法違反だ」とした判断からはかけ離れている。

 また、アマゾンのホールフーズ買収による垂直統合についても、「フィルム市場で独占的地位を持つイーストマン・コダックは、現像市場への参入で寡占を増大させてはならない」との1960年代の判例にそぐわない。

【次ページ】独禁法はIT時代を想定していなかった
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