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- 2017/05/29 掲載
グーグルやマイクロソフトに猛追されるDropbox、CEOが語る今後の注力点
Google DriveやSlackよりもDropbox Paperが優れている理由
2007年創業のDropboxは、今年5月で創立10周年を迎えた。現在は利用者数が5億人に上り、20万超の企業が有料版を利用、2016年の売上は10億ドルに達している。フリーキャッシュフローは増大傾向で、「経営は安定している」と米Dropboxの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のドリュー・ヒューストン氏は自信をみせる。ヒューストン氏によると、「最近、Dropboxは提供するサービスのフォーカスポイントをシフトさせている」という。創業当初は画像、音声、テキスト、動画といったファイルをクラウドに格納できる「パーソナル・オンラインストレージ」の提供に注力していた。しかし、それが達成された今では、「チームでファイルを共有/同期すること」に注力しているという。
「チームのメンバーが作業効率を向上させ、利便性を享受できる環境を提供すること。それが今のフォーカスだ」(ヒューストン氏)
とはいえ、グーグルの「Google Drive」やマイクロソフトの「OneDrive」、アップルの「iCloud」など、パーソナル・オンラインストレージサービスの領域は競合が多い。では、Dropboxの強みは何か。ヒューストン氏は、「シンプルなデザインと使いやすさ、そして、どのようなプラットフォーム(OS)でも利用できるという利便性」を挙げる。
「複数の調査で明らかになっているが、労働時間の60%は、過去のメールを探したり必要な情報にアクセスしたりするまでの時間――いわゆる『仕事のための仕事』――に費やされている。これでは人間の潜在能力に対する無駄遣いだ。Dropboxの利便性は、こうした無駄をなくすことに貢献している」(ヒューストン氏)
同社は2017年1月、複数人でファイルを共同編集できるドキュメント共有サービス「Dropbox Paper」の正式版をリリースした。共同編集機能やプロジェクト管理機能、コラボレーション機能を備えているのが特徴だ。
ただし、同分野にも競合は多い。その代表が「Google Drive」や「Slack」である。モデレータを務めたウォール・ストリート・ジャーナル 日本版編集長の西山 誠慈氏の「Google DriveやSlackなどとの違いは?」という問いに対し、ヒューストン氏は以下のように説明した。
「他のコラボレーションと比較し、ドキュメントが探しやすく整理されているのがDropbox Paperの優位点だ。たとえばSlackの場合、チャット機能は優れているが、(アプリ内での)グループ分けがわかりにくい。その点、Dropbox Paperは仕事用と個人用のアカウントを切り替えのしやすさなどで(Slackよりも)定評がある」(ヒューストン氏)
クラウドストレージはオンプレミスより安全だ
オンライン・ストレージはどこからでもアクセスできる反面、セキュリティ面での懸念が指摘されている。特に最近は有名人のアカウントが乗っ取られ、プライベート写真が流出するといった事件が相次いだ。こうした課題に対し、Dropboxはどのような対策を講じているのか。西山氏の「情報流出で、クラウド(オンライン)ストレージに逆風が吹いているのでは?」との指摘に、ヒューストン氏は「クラウドでサービスを提供する事業者は、セキュリティの確保に多額の投資をしている」とし、以下のように説明した。
「確かにサイバー脅威は深刻だが、Dropboxはセキュリティ専門チームが最新/最善の技術を駆使し、対策に当たっている。もし、企業がこうした対策を自前で実施するとしたら、コストも人件費も莫大になる。クラウドストレージは『より安全な所にデータを保管しておく』ものだ。その意味において、(ビジネスが)逆風にさらされることはない」(ヒューストン氏)
移民を制限する政策は「到底受け入れられない」
さらに話はトランプ新政権の政策にも及んだ。特定7か国の国民や難民の入国を制限する大統領令に対し、複数のIT企業は非難声明を発表している。ヒューストン氏は、「移民を制限する政策は多様性を阻害するものであり、到底受け入れられない」としたうえで、「米国の国力の源泉は、多様な価値観を持った国民を擁していること。それを否定するのは国家としてもマイナスだ」とコメントした。同社のサンフランシスコオフィスでは1,500人超の従業員が働いている。その中には移民も少なくない。ヒューストン氏は、「新政権の“不確実性の高い政策”は、現時点ではそれほど影響がないものの、特定の従業員はビザ発給の変更などで、出国/入国ができなくなる可能性がある」と指摘したうえで、「現在は西海岸のIT業界全体が連帯し、政府に対する影響力強化を考えている」と明かした。
【次ページ】“仕事のための仕事”はいらない AIの活用法
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