- 会員限定
- 2017/07/11 掲載
スマートスピーカーによる「家庭向けIoT」競争、アップルがアマゾンに勝てない理由
圧倒的なトップはアマゾン
HomePodは当然ながらアップルのSiriを使用する。これはAmazon EchoがAlexaを、Google HomeがOK Googleを使用しているのと同様に、音声コマンドにより他の家電機器を連動させてサービスを受けることができるシステムだ。これにより可能となる機能に関しては、アマゾンやグーグルとそれほどの違い、つまりアップルの独自性はない。強いて言うなら2台のHomePodを使ってステレオスピーカーにできる、という程度だ。
今後、マイクロソフトが独自のAIである「Cortana(コルタナ)」を使った同様のスピーカー「Invoke(インボーク)」を、サムスンが「Bixby(ビックスバイ)」を使ったスピーカー「Vega」をリリースする予定で、スマートスピーカーはIoTの要ともなるだけに各社が家電製品や車と連動したサービス、そしてシェアの奪い合いに発展しそうだ。
現時点では「Echo」「Echo Tap」「Echo Dot」と三種類の製品を販売するアマゾンがスマートスピーカーとしては全体の7割近くの売り上げを占めており、圧倒的なトップと言える。
2017年の第1四半期(1-3月)の販売実績データを見ると、Echo Dotが53%、Google Homeが30%、Echoが16%、Echo Tapが1%となる。興味深いのは2016年の第4四半期(10-12月)ではクリスマスなどホリデーシーズンによりスマートスピーカーの売り上げが一気に伸びたが、その時点ではグーグルが39%、続いてDot38%、Echo21%、Tap2%だった。(Adobeによるデータ)
スマートスピーカーの売り上げのほぼ4分の3がホリデーシーズンに集中していたため、シェアそのものはアマゾンが7割でも売上額で見るとトップは単独ではGoogle Homeとなる。ただしアマゾンの3種類のデバイスを総合するとグーグルに勝っている。
アップルがアマゾンに勝てない理由
この市場にアップルはどのように食い込めるのか。「非常に難しいのではないか」というのは消費者調査を行うモーニング・コンサルト社だ。同社ではアップルがHomePodの発売を発表した後、「スマートスピーカーを購入するにあたって最も重要な要素は何か」という調査を行った。その結果、全体の3割が「価格」と答え、「音声認識の正確さ」の14%を大きく上回った。Echoは定価が179ドル99セントだが、現在米国ではネットなどで実質150ドル前後で販売されている。Tapは129ドル99、Dotは49ドル99だが実勢価格は40ドル程度。Google Homeは129ドルで、Echoと比べると価格では競争力があるが、アマゾンのように製品バラエティがないこと、Dotのような廉価製品がないことがやや弱点と言える。
ところがアップルのHomePodは349ドル、という価格設定だ。
リサーチ会社eMarketer社では、今年の終わりまでに米国では3560万台のスマートスピカーが販売されている、との予測を出しているが、うち2490万台がAmazon Echoシリーズになる、としている。
アマゾンのシェアは70.6%、続くグーグルが23.8%。この残りの5%程度をアップルやサムスン、マイクロソフトが奪い合う形になる、という。
ただし同社では2024年にはスマートスピーカーは世界中で年間に120億ドル規模の市場を持つだろう、とも予測しており、今後急激に巨大化する市場にはもちろんアップルやマイクロソフト、サムスン、そしてその他の新興企業が参入できる余地は十分にある。
しかしそれも価格とサービスがリーズナブルである、と消費者に認められた場合。アップルのデザイン、性能には一定の評価はあるものの、他社製品と比べて2倍近い価格は大きなネックとなりそうだ。
iPhoneを例にとると、スマートフォンというコンセプトを世に出したのはアップルだが、その後他者に追随され2016年第4四半期のシェアは12.5%にまで落ち込んでいる。スマートスピーカーの場合アップルが追随する立場でもあり、HomePodの価格設定には首を傾げる向きも多い。
【次ページ】アップルが「逆転」に向けて取り組むユニークな戦略
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR