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アクセンチュアがすべてのビジネスがデジタルになると提言をして約5年、AIやIoTの登場により、今や企業の競争戦略にとってテクノロジーは必要不可欠な存在となった。その最新調査「テクノロジービジョン 2017日本版」が発表され、ビジネスの成功に不可欠な5つのテクノロジートレンドが明らかになった。
アクセンチュアは12日、「テクノロジービジョン 2017日本版」を発表した。本書はテクノロジーに目を向けながら、テクノロジーがビジネスや社会にとってどのようなインパクトをもたらすのかについて言及したもの。
最初に発表した2013年版では、「すべてのビジネスがデジタルになる」と予見。2014年にはグーグルなどのディスラプター(破壊者)をテーマにした。
2015年版ではWe Economyと題し、さまざまな企業とのパートナリングの重要性を指摘 。
2016年版では「People First:主役は“ひと”」を掲げた 。2017年版の発表にあたって登壇したアクセンチュア 執行役員 デジタル コンサルティング本部 統括本部長 立花良範氏は「当初は5年ぐらい先のテクノロジーの見通しを示していたが、変化が激しくなり、今は3年先に変更している」と経緯を語る。
「テクノロジービジョン 2017日本版」は1月に同テーマでグローバルに発表されたものを日本版として日本企業向けに提言したもの。2017年のテーマは「テクノロジーを“ひと”のために~インテリジェント・エンタープライズの時代~」。ただし、「今年はグローバル版と日本版の差異がかなり小さかった」という。
「昨年に続き今年もヒトということで、一見同じに見えるが、テクノロジーをどう使うのかという概念を拡張し、具体化してきている動向を示した」(立花氏)
今年のトレンドは以下の5つ。
AI is New UI:AIは新しいユーザーインターフェイス
Eco System Power Plays:無限の可能性を持つエコシステム
Work Force Market Place:人材のマーケットプレイス
Design For Humans:“ひと”のためのデザイン
The UN Charted:未踏の領域へ
1.AIは新しいユーザーインターフェイス(UI)になる
これまでの目に見えるUIではなく、音声やウェアラブルも含めたUIの拡張が続いている。立花氏は1月に米国で開催された家電見本市CES 2017で大いに注目を集めた音声認識エンジンのAmazon Alexaについてのエピソードを紹介。開発にあたり、アマゾンの開発陣が当初考えたことは、音声認識の処理時間を3秒にしようということだった。しかし、3秒間の沈黙はヒトにとって非常に気持ち悪い。そこで、Alexaの応答時間は2秒にしようと開発して、最終的に1.5秒になったという。
「ヒトが違和感を感じなくなるレベルに性能を上げることができるようになったということ」
また、画像認識の識別率も上がっており、場合によっては人間よりも精度が高くなった。AIについては、経営幹部も8割が期待を示しているという。Amazon Alexaを備えた音声認識デバイスのAmazon Echoを使っている人の8割はアマゾンで購入するなど、売上向上にも貢献できることを示した。
立花氏によると、AIの役割は大きく3つあるという。1つ目はキュレーターだ。たとえば、Spotifyでは音楽のおすすめをリコメンドしてくれる。2つ目はアドバイザーとしての役割。現状から判断し、プランニングしてアドバイスをしてくれる。3つ目はオーケストレーターとしての役割だ。たとえばAlexaによる音声認識技術を使って、家電製品の操作も可能になる。さらに言えば、製品を組み合わせて、いろいろな仕組みをオーケストレートしてくれる。
ではAIの強みとは何か。1つ目は、疲れないということ。2つ目は、永遠に成長できる。3つ目は、同時に1対多のコミュニケーションが行える。4つ目は、AIは機械同士の対話も可能。まだ汎用AIと呼ばれるような万能なAIは登場していないが、こうしたAIの強みを生かせる領域があると立花氏は説く。
「顧客と企業の間にAIが入ってくる。Echoを使ってSpotifyで流れる楽曲を操作する、Echoを使ってハフィントンポストの記事を読み上げるといったことが可能になる。そうなると顧客体験の満足度はAlexaに依存してくる」
たとえばある人が旅行するとしたとき、旅行先を決める、途中の移動方法を決める、ホテルを決める、レンタカーを手配する、食事をする、そのすべての接点のサービスハブになるのがAIとなる。
「AIには顧客とどう応対するのか、知恵と知見がたまる。したがって、AIは企業ブランドの顔になる」
2.無限の可能性を持つエコシステム
日本ではプラットフォーマーの重要性が強調されるが、それだけではない。いかに自社の強みを生かすのかを考えることも重要になるという。その1つがこのエコシステムの話だ。たとえば、Facebook Messengerを利用して、ハイアットホテルは予約確認やルームサービスが注文できる機能を提供した。また、Capital One BankはAmazon Echoを活用して、口座確認や支払いができるようにした。
日本でも日本交通がLINEと連携してタクシー手配ができるようになったり、バイト探しのanが求人情報を掲載できるといった具合に異業種、競合他社も組んで、エコシステムを作っていく。
「いずれにも共通しているのは、自社の強みを再確認して、市場に再発信していこうということ。自らマーケットを新しく作っていくという動きをしている」
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