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- 2024/03/06 掲載
「空飛ぶクルマ」は本当に実用間近なのか?参入相次ぐ一方、解決されない「二大課題」
CESで活況、中国EVメーカーXPENGが空飛ぶクルマで目指す世界
今年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で最も注目度の高かったブースの1つが、中国のEVメーカーXPENG Motors(シャオペン)の航空部門子会社であるXPENG AEROHTによる展示だろう。同社はモジュール型とする2タイプの空飛ぶクルマを発表した。1つ目は、グラウンド(地上用)モジュールとエア(航空用)モジュールを合体させたタイプ。グラウンドモジュールは4~5人乗りの3アクスル、6輪車両で、エクステンデッド・レンジハイブリッドパワーを搭載。これによりエアモジュールを充電することが可能だ。
グラウンドモジュールは6輪全輪駆動であるため、悪路の走行などにも多大なパワーを発揮する。エアモジュールはグラウンドモジュールの後部に収納されており、2人乗りでフル電動仕様となる。垂直離着陸機能(VTOL)で、270度のパノラミックビュー、手動でも自動でも飛行可能だという。
「地上走行と空中走行を組み合わせることで、人の移動の自由度が増す」というのがXPengの考え方だ。地上走行で行ける場所はグラウンドで、その先を進むためにエアを、という使い分けをすることで人が移動できる範囲は飛躍的に広がる。将来は小型の空港まではグラウンドで、そこからエアでの移動、ということも視野に入る。個人の使用のほか、救急サービスや過疎地へのデリバリーなどの用途も可能となる。
XPENG AEROHTが発表したもう1つのコンセプトが、地上走行からそのままVTOLで発進できるタイプの空飛ぶクルマだ。ローターシステムやアームなどの空を飛ぶためのシステムがスーパーカーのような見た目の車の上部に収納され、空を飛ぶ際はステアリングホイールやダッシュボードなどもワンタッチで空中仕様に切り替えられるという。
モジュラー型の空飛ぶクルマはすでに市販も視野に入っており、安全性を高めるために6つのローターのうち2つが破損しても空中姿勢を保てる技術を導入している。さらに複数個のパラシュートを内蔵しており、緊急時に人命を守ることを第一義とする。すでに2023年10月の飛行実験では、地上50メートルの飛行、着陸に成功した。
「地上走れる空飛ぶクルマ」で注目、日本人女性が設立ASKA
だがXPengと同様に、実際に地上走行できる空飛ぶクルマを手がける企業がもう1社ある。それが米カリフォルニア州のASKAだ。
ASKAは今年のCESには出展していないが、2023年、2022年と展示を行い、注目を集めた。同社は日本人女性であるカプリンスキー真紀氏が夫のガイ氏と立ち上げたスタートアップで、2023年にすでに米国から地上走行に関する型式証明を取得している。
ASKAの開発に至った理由についてカプリンスキー氏は、「シリコンバレー周辺の住宅価格の高騰が理由の1つだった」と語る。
もし通勤の範囲が広がれば、郊外のより安くて広い住宅に住むことができ、人々の生活の質を上げられる。そのためには大掛かりな発着陸を必要としない、VTOLタイプで継続走行距離が400キロ程度の空飛ぶクルマが適していると考えたのだという。「点から点」ではなく、地上走行を加えることで「面から面」への移動が可能になることがASKAの強みだ。
また、航続距離を確保するためにPHEV(プラグインハイブリッド車)システムを搭載している。ASKAにはすでに複数の予約が入り、企業や観光誘致などの目的での利用が予定されている。 【次ページ】トヨタら出資Jobyはデルタ航空と提携して空港送迎
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