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- 2023/12/11 掲載
空飛ぶクルマの開発競争の勝者は中国か?いよいよ目前に迫った実用化、2023年の現在地
連載:「北島幸司の航空業界トレンド」
中国が世界に先んじてUAMの飛行開始へ
2023年10月13日、中国のUAM製造企業であるイーハンは、開発する「EH216-S」が、中国民間航空局(CAAC)が正式に発行するTCを取得したと発表した。これは、EH216-SがCAACの安全基準と耐空性要件に準拠しており、旅客輸送商業運用を行う資格があることを示す。EH216-Sは、3年を超える工程を経て、すべての型式認証目標を無事に達成し、UAMを独自の設計で開発し、製造できることを証明した。EH216-Sは500を超える特定の試験項目、4万回を超える試験飛行をクリアしたのだ。
イーハンの創設者、会長兼CEOである胡 華智(Hu Huazhi)氏は次のように述べる。
「当社が自社開発したEH216-Sは、ついに世界のUAM業界で初のTCを獲得し、民間航空の歴史に重要な足跡を残しました。これにより、当社はUAMプラットフォームオペレーターになるという戦略的目標に向かって着実に前進し、安全で自律的で環境に優しいエアモビリティを誰もが利用できるようにするという、当社の使命に取り組むことができます」(華智氏)
今回イーハンが取得したのはCAACのTCであり、UAMの飛行は中国国内でのみ許可される。この先世界の空を飛ぶためには、米国航空局連邦航空局(FAA)や欧州航空局(EASA)の認証が受ける必要がある。商用運航の実現にはまだ長い道のりといえるが、中国国内での安全な商用飛行が続けば、将来的に他国でのTC取得は現実的になる。
日本国内のUAM実装に向けた動き
では、日本国内の動きはどうだろうか。日本でイーハンのUAMを普及させようと動くのは、東京を拠点とする「エアーエックス」である。ヘリコプター輸送から事業を始めた同社は、いち早くイーハンの製品を日本に持ち込み、実証実験を行う。同社の執行役員の藤園 光英氏は次のように語る。
「弊社は空のUberを目指すことを目標にイーハンとの提携を進め、沖縄と兵庫県尼崎の2拠点で、社会実装に向けた試験飛行を数回続けてきました。弊社は特に、商用飛行開始時期として関西万博を照準に定めているわけではありません。商用飛行開始を考える2020年代後半には、無人操縦機としてデビュー予定です。無人なものですから、我々は、技能から整備までの育成をより早めなければならないと考えています」(藤園氏)
JAL、ANA、トヨタらと提携する海外UAMメーカーの最新動向
そのほか海外の動向はどうだろうか。JALと提携するドイツの「ボロコプター」は、2023年6月に開催されたパリ航空ショーのフライトディスプレーで飛んだ。来年に迫るパリオリンピックでの飛行に期待がかかる中、11月にはニューヨーク市での有人試験飛行を成功させている。ANA・トヨタと提携する米国の「ジョビー・アビエーション」は、11月にニューヨークのダウンタウンにあるヘリポートからUAMを飛行させた。これまでと違った人口密集地での飛行だったが、低騒音と安全性が確認された。
航空機メーカーのエンブラエルが創業したブラジルの「イブ」は、英国の全国航空管制サービス(NATS)と11月に航空交通管制サービスについて提携したばかりだ。ようやく運航管理に目が向き、世界のUAMの交通整理ができることを歓迎したい。
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