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- 2024/10/29 掲載
自動運転の「覇者」はテスラかNVIDIAか? まったく異なる両者の戦略のポイント
NVIDIAとテスラ、自動運転技術をめぐる開発競争
自動運転技術の開発動向を知る上で、テスラの動きは無視できないものとなっている。しかし、自動運転技術の開発において、テスラに並ぶ存在感を示す企業がもう1社存在する。生成AIトレンドで、世界最大級の企業に成長したNVIDIAだ。
ハードウェアからソフトウェアまでAI開発インフラを提供するNVIDIAは、生成AI関連企業にとって不可欠な存在となっているが、自動運転分野においても欠かせない存在として、同社の動きに注目が集まっている。
興味深いのは、NVIDIAとテスラの自動運転技術開発アプローチが対照的である点だ。どちらのアプローチがより良い自動運転技術を開発できるのか、業界の大きな関心事になっている。
NVIDIAは、AIプラットフォームとハードウェアを自動車メーカーなどに提供しつつ、外部からデータを収集し、主にシミュレーションを活用しつつ自動運転技術を開発するアプローチを取っている。NVIDIAのプラットフォームを活用し、自動運転技術を開発している企業には、メルセデス・ベンツ、ボルボ、アウディなどが含まれる。
一方、テスラは自動運転スタック全体を社内で開発する垂直統合アプローチを採用。「Full Self-Driving (FSD)」システムのもと、ハードウェアからAIソフトウェアまでを包括的に開発を進めている。独自の「HW」シリーズチップは、各種センサーからのデータをリアルタイムで処理し、意思決定を行う。
テスラの強みは、大規模な車両群を活用したデータ駆動型アプローチにある。すべてのテスラ車両から膨大な走行データを収集し、AIの学習に活用しているのだ。また、OTA(Over the Air)アップデートにより、既存車両のFSD機能を継続的に改善している。
技術的な面でも、テスラがカメラ主体のビジョンベースアプローチを採用しているのに対し、NVIDIAは幅広いセンサーをサポートするなど、対照的な戦略を展開している。
NVIDIAのアプローチ、自動車メーカーとの連携が鍵
NVIDIAは、AI定義型自動車の実現に向けて、包括的なハードウェアとソフトウェアプラットフォームを提供している。その中核となるのが、NVIDIA DRIVE AGXプラットフォームだ。DRIVE AGXプラットフォームの要となるのは、254 TOPSの処理能力を誇るNVIDIA DRIVE Orinチップ。このチップは、レベル2+から完全自動運転のレベル5まで、幅広い自動運転機能をサポートしている。これに次ぐ次世代のチップが現在開発中のDRIVE Thorだ。NVIDIA Blackwell GPUアーキテクチャを採用しており、トランスフォーマーモデルや生成AIなどにも対応することが可能という。
ソフトウェア面では、NVIDIA DRIVE OSが基盤となる。これは車載加速コンピューティング向けのOSで、NVIDIA CUDAライブラリ、NVIDIA TensorRT、NvMediaなどに対応している。
NVIDIAの技術がすでに実際の自動車に搭載され始めていることも注目に値する。ボルボの新型電気自動車EX90は、NVIDIA DRIVE Orinチップを搭載。これによりEX90に装備されたレーダー、LiDAR、カメラ、超音波センサーのデータを360度リアルタイムに処理することが可能になった。
さらに、ボルボは将来のモデルにDRIVE Thorを統合する計画も明らかにしている。先進運転支援システム(ADAS)と自動運転機能をさらに強化させるだけでなく、生成AIを活用した新しい車内体験の開発も見据えているという。
NVIDIAの技術は車載だけでなく、クラウド側でも活用されている。ボルボとその子会社Zenseactは、クラウドでのAIモデルトレーニングにNVIDIA DGXシステムを導入。これにより、将来の車両群に最先端のAI駆動安全機能の提供を目指す計画だ。 【次ページ】テスラの強みは自社が持つ「あのデータ」
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