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  • 2025/01/23 掲載

グーグルのWaymo「自動運転タクシー事業」を加速できるワケ、「初の海外」は日本に

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グーグル親会社のアルファベット傘下で自動運転事業を手がける「Waymo」。ロサンゼルス、サンフランシスコ、フェニックス、オースティン、アトランタの5都市で自動運転タクシーサービスを展開する計画を明らかにした。この分野では、近年、アップルやGM傘下のCruiseなど競合各社が相次ぎ事業を停止しているものの、Waymoは週10万件以上の配車実績を達成するなど、着実な事業拡大を続けている。Waymoが先行できる理由はどこにあるのか。自動運転テクノロジーの動向、同社初の海外進出先として日本を選んだ理由、韓国の自動車大手とも手を組む同社のスケール戦略などを見ていこう。
執筆:細谷 元  構成:ビジネス+IT編集部
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サンフランシスコの都市部でも運行できるWaymoの無人車
(Photo:Michael Vi / Shutterstock.com)

アルファベット傘下のWaymoが配車サービスの拡大を加速

 アルファベット傘下の自動運転企業Waymoは2024年10月、56億ドルの大型資金調達を実施した。投資家には、親会社アルファベットのほか、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、フィデリティ、ペリー・クリーク、シルバーレイク、タイガーグローバル、T.ロウ・プライスなどが名を連ねる。

 この資金は、主にWaymo Oneと呼ばれる配車サービスの拡大に充てられる見通しだ。同社の共同CEOを務めるテケドラ・マワカナ氏とドミトリー・ドルゴフ氏は、ロサンゼルス、フェニックス、サンフランシスコに加え、ウーバーとのパートナーシップを通じてオースティンとアトランタでもサービスを開始する計画を明らかにした。

 Waymoのサービス規模は着実に拡大している。現在、ロサンゼルス、フェニックス、サンフランシスコの3都市で週10万件以上の有料配車を実施。特にフェニックス都市圏では、完全自動運転タクシーのサービスエリアとして世界最大となる180平方マイル(466平方キロ)をカバーしている。

 一方、競合各社の状況は厳しい。最大のライバルとされたGM傘下のCruise(クルーズ)は、2023年10月にサンフランシスコで歩行者を引きずる事故を起こし、事業を一時停止。再開に向けた準備を進めているものの、12月には撤退を発表した。Cruiseにはホンダも出資して共同開発を進めていたが、これも中止となる。

 アップルも2024年2月に自動運転機能を持つEV開発プロジェクトの断念を発表している

 こうした中、イーロン・マスク氏が率いるテスラは独自のデータを強みにして存在感を発揮。来年にはテキサス州とカリフォルニア州で無人の配車サービスを開始すると発表した。ただし、現状のテスラ車は依然として人間のドライバーが必要な状態だ。実現のためには、既存車両の自動運転システムをアップグレードする必要があるとしている。

 Waymoは、今回の資金調達で累計調達額が110億ドルを超えた。内訳は、2020年3月の22億5,000万ドル、2021年6月の25億ドル、そして今回の56億ドルとなる。アルファベットのルース・ポラットCFOは今年7月、Waymoへの複数年にわたる投資として、最大50億ドルを拠出する方針を示している。

大規模言語モデルも活用、Waymoの技術の「強み」とは

 Waymoが他社に先駆けて自動運転タクシー事業の規模を拡大できているのは、安全性を重視した独自のハードウェア・ソフトウェア開発戦略にある。

 2024年8月には第6世代となるWaymo Driverシステムを発表。13個のカメラ、4基のライダー(LiDAR)、6基のレーダー、複数の外部音声受信装置を搭載し、車両の周囲最大500メートルを昼夜問わず監視する機能を実現した。

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安全性を重視したWaymo Driverシステムの第6世代
(出典:Waymo

 第6世代システムの特徴は、センサー数を削減しながらも、安全性に不可欠な冗長性を確保している点にある。複数の種類のセンサーによって重複した視野を確保し、予期せぬ天候変化や機器の不具合に備える。また、気候条件に応じてセンサー構成の変更が可能で、寒冷地ではセンサーのクリーニング方法を調整するなど、柔軟な対応ができるようになった。

 これらのハードウェアと連動するのが、独自開発のWaymo Foundation Modelと呼ばれるAIモデルだ。このモデルは、大規模言語モデル(LLM)や視覚言語モデル(VLM)の「世界知識(World Knowledge)」と推論能力を、自動運転に特化したAI技術と組み合わせることで、周囲の状況理解から運転計画の生成まで、高度な判断を可能にする。

 このような技術開発の成果は、具体的な安全性データとして表れている。2024年6月までの2200万マイルの走行データ(自社測定)によると、Waymoの自動運転車は人間のドライバーと比較して、エアバッグ作動を伴う事故で84%減、負傷事故で73%減、警察への報告を要する事故で48%減を達成したという。

 交通ルールの厳格な遵守に加え、飲酒運転、疲労運転、注意散漫な運転といった人為的なミスを完全に排除することで、この安全性改善が実現した。また、赤信号無視など他の車両による危険な行為も事前に検知し、迅速な回避行動を取る仕組みも高い安全性を実現する要因になっている。

 こうした安全性へのこだわりは、今後の事業展開においても重要な意味を持つ。サービス地域の拡大に向けては、シミュレーションによる徹底的な検証に加え、実地走行テストを組み合わせた段階的なアプローチを採用。第6世代システムでは、シミュレーションと実地走行の組み合わせにより、人間のドライバーなしで運用を開始するまでの期間を従来の半分程度に短縮できる見込みだ。 【次ページ】Waymoの売上・利益は?収益化への道のり
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