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- 2017/03/24 掲載
ネットフリックスと時価総額で比較 ハリウッドメジャーがメジャーでなくなる日
新たな『ニッケルオデオン時代』
映画興業の市場規模は4.2兆円
世界の映画興業市場規模は2015年で383億ドル(約4兆2513億円)と推測される。比率を見ると、北米が111億ドル(約1兆2321億円)と30%弱を占める。一方、日本の映画興行市場は日本映画製作者連盟によると2171億円(2016年は2355億円)だ。約2時間もひとつの場所でじっと鑑賞しなければならない映画館は、定額制動画配信サービス(SVOD)時代にはふさわしいユーザー体験ではなくなるかもしれない。すでにCATVはネットへと「コードカッティング」(コード切り、つまりCATVをやめてネット系メディアに移ること)され始めているからだ。シネコンも完全に飽和してきている。
なによりも若者の映画館離れは深刻だ。米国のミレニアル世代は、スマホやSNSで忙しい。SVODを契約すればその動画視聴で忙しい。YouTubeやネットフリックス、Huluから優先して視聴する。これからさらに「YouTube TV」が登場する。100年以上の歴史があるハリウッドのメジャースタジオと、新興ネットメディアらで、ユーザーの可処分時間をめぐる壮絶な争奪戦が勃発しているのだ。
ハリウッドの6大メジャーがすべてコングロマリット企業の理由
4.2兆円の映画興業市場だが、その8割を占めるのがハリウッドを代表する6大メジャースタジオだ。しかしいくら「メジャー」といえども、親会社からのポートフォリオでは、決して興行収入の売上比率はそれほど大きくはない。映画の興業は当たりハズレが大きく、常にリスクを伴うビジネスだ。だから親会社がいるコングロマリット経営が必須となる。ハリウッドシステムの製作・配給・興行の縦軸から、CATV、テレビ放送、キャラクター、テーマパークに至るまで、映像を中心としたコンテツビジネスを横軸で展開している。
ここで、6大メジャースタジオの親会社を時価総額順に見ながら、新興のネットメディア企業や日本の企業の時価総額と比較してみよう。
・第1位 ウォルト・ディズニー・スタジオ
時価総額の1位はウォルト・ディズニー・スタジオ。親会社のウォルト・ディズニー・カンパニーの時価総額は19兆6721億円である。これは、日本ではトヨタ自動車の時価総額20兆1131億円に近い。ちなみに、アマゾンの時価総額は44兆9183億円。約2倍と圧倒的である。
・第2位 ユニバーサル
僅差で2位となったのはユニバーサルだ。親会社はNBCユニバーサルで、テレビのNBCなどのメディアグループ企業である。そして、NBCユニバーサルはコムキャストの傘下だ。コムキャストの時価総額は19兆4971億円で、ウォルト・ディズニー・カンパニーとの差は2000億円弱。時価総額の調査日によっては逆転する。日本で言えばウォルト・ディズニー・カンパニー同様、トヨタ自動車に伍する規模だ。
・第3位 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ
第3位はワーナー・ブラザース・ピクチャーズ。親会社はタイム・ワーナーで時価総額は8兆3236億円、日本で言えば日本たばこ産業(JT)の時価総額7兆5260億円に近い規模だ。ちなみにAT&Tが850億ドル(9兆4350億円)でタイム・ワーナーの買収を提案している。
・第4位 20世紀フォックス映画
第4位のスタジオは20世紀フォックス映画。親会社は21世紀フォックスで、時価総額は6兆3138億円。日本では三井住友フィナンシャルグループの時価総額6兆1200億円に近い。ちなみに、ネットフリックスの時価総額は6兆8152億円で、これらより一回りほど大きい規模だ。
・第5位 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(コロンビア映画)
第5位にソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが入る。ソニー・エンタテインメントの完全子会社で、同社は日本のソニー傘下だ。ソニーの時価総額は4兆4693億円。武田薬品工業の時価総額4兆1260億円に近い。
・第6位 パラマウント映画
最後はパラマウント映画だ。親会社はバイアコムで、時価総額1兆8843億円。日本で言うと電通の時価総額1兆7420億円に近い規模だ。
新興のネットメディアで言えば、2017年3月2日にIPOしたばかりのSNAP(スナップ)の時価総額は、一時3兆円を超えた。スナップの現在の時価総額は、2兆8027億円。10秒で消え去るスナップチャットが、100年続くパラマウント映画(バイアコム)の1.5倍もの時価総額となる時代なのだ。
日々ユーザーの好みを学習するネットメディアに脅かされる旧態依然としたハリウッド・CATV
今回のアカデミー賞受賞式のテレビでの視聴率は、過去9年間で最低となった。そして米国成人の5人に1人が有料TVを観なくなり、170万人が今年ケーブルや衛星テレビの契約を解除するという。業界最大手のCATVのコムキャスト(ユニバーサルの親会社)やバイアコム(パラマウント映画の親会社)の運命はどうなるのか?一方、ネットフリックスは、2016年末時点で総利用者数は9380万人。米国の利用者数はいまだに増えているという。米国外では利用者数が512万人増。さらに2017年1~3月期には利用者数が米国150万人、インターナショナルで370万人の合計520万人の増加を見込んでいる。とても鼻息が荒い。
ネットフリックスは、『ストレンジャー・シングス』や『ナルコス』などのオリジナル番組が好調だ。さらに、2017年にはオリジナル番組製作に60億ドルを計画している。ハリウッドメジャーの親会社のCATV会社たちが、レンタルビデオ上がりのネットフリックスのオリジナル番組に攻勢をかけられているという始末なのだ。10年前には想像できなかった世界が訪れている。20年前には影もカタチもなかった業界が、ハリウッドだけでなく、その親会社も震撼させているのだ。
一方、ハリウッドの映画産業も、CATV同様に旧態依然としたスタジオ・システムだ。当たりハズレが大きいので、当たる作品しか作らない。本数を絞り、宣伝にチカラをかける。しかも、原作が知られているマーベルのコミック作品やシリーズ物といったものばかりが続く。
ネットフリックスによる買収や、その逆もあり得る
ネットフリックスの時価総額は、6兆8152億円、ハリウッドのメジャーコングロマリットの中で第4位の21世紀フォックスの時価総額6兆3138億円を上回っている。さらに、ハリウッドの親会社で1位2位のディズニーやコムキャスト、3位のタイム・ワーナーともに、映像以外の事業も手がける複合企業だ。年々、ハリウッドの依存度は低くなる傾向だ。むしろ、映像事業単体のみの時価総額で比較すると、ネットフリックスのほうが勝っているともいえる時代なのだ。パラマウントを持つバイアコムの時価総額1兆8843億円であれば、ネットフリックスは十分に買収を検討することも可能だろう。もしくは逆に、1位のディズニーや2位のコムキャストにネットフリックスが買われることも、ビジネスのシナジーが生きることだろう。
アマゾン・スタジオ配給の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(日本公開5月13日予定)は、2017年第89回アカデミー賞で脚本賞と主演男優賞を受賞した
【次ページ】 「YouTube TV」参戦でさらに減るパイ、時価総額約82兆円のアップルは指をくわえて見るだけか?関連コンテンツ
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