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- 2017/07/28 掲載
コンパクトカーが売れなくて日本車ピンチ? 転換を迫られる自動車業界
なぜコンパクトカーが売れないのか
しかしその後、コンパクト、サブコンパクトは急速に売れなくなった。今年4月の数字を見ると、トヨタ「カローラ」、ホンダ「シビック」、日産「セントラ(サニー)」が含まれるコンパクトカー部門の販売台数は18万1191台で昨年同月比マイナス1.7%、年初からの4ヶ月間では昨年比でマイナス3.2%だ。
さらに酷いのはサブコンパクトカーで、同じく今年4月の売り上げは3万2743台で昨年同月比-27.9%となっている。この分野での落ち込みが激しいのはシボレー「ソニック」の-67.8%、現代「アクセント」の-46.3%などだが、トヨタ「プリウスC」も-30.7%と苦戦している。唯一売り上げを伸ばしているのはトヨタ「ヤリス」のみ、という惨状だ。
なぜこのような状況になっているのかについてはさまざまな分析がある。まず多くのコンパクト、サブコンパクトがモデルチェンジサイクルに差し掛かっているため、顧客による様子見、という点が挙げられる。
また、シェールオイルの安定供給により米国ではガソリン価格が1ガロン当り2ドル台に止まっていることも原因の一つだ。ガソリンが安くなったことから、本来米国人が好むピックアップトラック、スポーツセダン、大型SUVなどの人気が戻り、燃費の良さゆえに好まれたコンパクト、サブコンパクトから顧客が離れたことも大きい。
産業構造に与える影響とは?
こうした消費者の嗜好の変化は、産業構造にも大きな影響を与えている。昨年12月、トランプ米大統領は当時メキシコ国内に16億ドルをかけた次世代「フォーカス」の生産工場建設計画を持っていたフォード自動車を激しく非難した。同時に米オハイオ州に10億ドルを投資して工場増設を図ったフィアット・クライスラーを絶賛。これに影響されたわけでもないが、フォードはこの工場建設計画の中止を発表した。ただし代わりに工場を米国に建設するのではなく、既存のメキシコ国内の組み立て工場を増強する、という内容だった。
理由としてフォードは「元々メキシコで生産するフォーカスは南米、アジア、欧州への輸出目的であり、米国内に生産拠点を移す意味がない」とした。
メキシコは北米自由協定(NAFTA)以外にも世界46カ国と相互関税撤廃条約を結んでおり、自動車メーカーにとってはメキシコで作って無関税で輸出できる車を米国に持ち帰って関税を支払って輸出する意味がない。
ただしフォードはミシガン州に電気自動車と自動運転のための研究施設および工場を建設、7億ドルの投資と700人の雇用を生み出す、と確約してなんとかトランプ大統領の賛辞を受けるに至った。
その背後でフォードは、今度はメキシコでの米国向けフォーカス建設を完全に諦め、生産拠点を中国に移すことを検討中だ。フォードによると2018年からの1年間、米国内でのフォーカス生産は完全に中断する、という。ミシガン州内で生産されるフォーカスの工場は2018年の半ばで営業終了、その後中国での生産が開始するのは2019年後半となる。
【次ページ】国内回帰どころか、工場はメキシコから中国に
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