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- 2017/07/06 掲載
自転車シェアリングで都市激変、バルセロナ「Bicing」はなぜ大成功したのか
全世界1000以上の都市に広がる「自転車シェアリング」
世界中の各都市で、人口集中による渋滞の悪化や排ガスの問題などが叫ばれるようになり、環境改善の手段としても自転車が注目されている。
利用者側の視点から見ても「所有よりも共有」というシェアリングエコノミーの考えが一般的になりつつある。
自転車を購入するよりも、必要なときに必要なだけ使用できる共有自転車の方が経済的なメリットがある。健康志向の高まりによって自転車を使った運動をしたいという意識もあるだろう。
米紙シアトルタイムズによると、自転車シェアリングは2016年末の段階で全世界1000もの都市で導入されたと言われている。
中でも2007年に開始されたスペイン・バルセロナの「Bicing」は成功を収めたモデルの一つだ。160万人の人口を持つバルセロナにおいて、2017年6月の段階で10万人の登録者を抱えている。月間で100万回以上の利用回数を数え、市民の足として認識されている。
自転車シェアリング先進国スペイン・バルセロナの「Bicing」
バルセロナ在住の筆者は実際にBicingを利用している。420か所設置されているという自転車ステーションは密度が高いため、必要な際はすぐに利用可能で利便性は高い。海と山に囲まれたバルセロナはコンパクトにまとまった街なので、多くの場所は自転車で移動できる。特に、山側から海側へ移動する場合は下り坂となっているので、地下鉄やバスよりも自転車の方が速く移動できる場合も多い。利用の手順は以下の通りだ。まず、BicingのWebサイトより登録の申し込みを行う。年間で47.16ユーロ、電気自転車を利用する場合は追加で14ユーロかかる。外国人が利用する場合、外国人登録番号を求められるため、観光客は利用ができず、正規の学生や社会人のみに限られる。
30分までは利用無料であり、30分を超過した場合は追加料金が加算される。追加の支払いは登録時に利用したクレジットカードへ課金される仕組みだ。自転車は同じステーションに返す必要はなく、自分の行き先でステーションに返すだけでよい。
モバイルアプリを使えば、どこにステーションがあるかが一目瞭然になる。さらに、どこに何台止まっているかが分かるため、自転車がない場合は事前にその状態が分かる。
バルセロナの場合、山側から海側へ移動する利用者が多いため、自転車の配置にバラつきが出てしまうケースがある。運営会社はトラックで自転車を移動させ、6000台ある自転車の配置を平準化させる仕組みだ。
自転車の利用を促進する仕組みは都市計画にも反映されてきた。大きな通りでは自転車専用道路があるので、安心して走行できる。車道を走行できる場合は、道路に大きく自転車のマークがある。歩行者との棲み分けも進んでいるといえよう。さらに、バルセロナでは、密集した繁華街への自動車乗り入れを禁止する動きもあり、自転車の利用は今後も広がっていくだろう。
中国、アメリカ、イギリス、フランスなどでも普及
バルセロナに限らず、スペインの各都市でも同様な取り組みが見られる。マドリードやセビリア、サラゴサといった都市では自転車シェアリングが導入された。自転車やステーションの仕様はおおむね同じである。料金体系は、最初の30分から都度課金される場合があるなど、細かな違いが見られる。他の都市に目を向けると、ニューヨークやロンドン、パリといった大都市でも自転車シェアリングが始まっている。渋滞解消や環境問題といった問題意識から利用が促進されてきた。日本でも東京、神奈川、宮城、広島などで自転車シェアリングが導入されている。NTTドコモが主導し、自転車とモバイル技術を融合したシステムを各自治体に提供しているのだ。
公共交通機関を補完するという位置づけがあるため、自転車シェアリングは自治体が主導となっている場合が多い。自治体が企画したり、運営資金を補助したりしながら、民間企業が実際の運営を行っている。一方で、トロントや上海など一部の都市では公共事業として自転車シェアリングが運営されている。
【次ページ】2020年を見据えた自転車シェアリングの未来は
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