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- 2024/01/04 掲載
Pathlightとはいかなる企業か? AIエージェントで「顧客との会話を100%分析」の真価
顧客対応に特化したAI企業Pathlight
マッキンゼーの予測によると、さまざまな産業で生成AI利用が広がることで、将来的に4兆4,000億ドルの経済価値が生み出される可能性がある。ビジネス機能ごとにさまざまなユースケースが想定されるが、マッキンゼーは、生成AIがもたらす価値は、4つの分野に集中すると推測している。その4つとは、顧客対応、マーケティング/営業、ソフトウェアエンジニアリング、研究開発だ。これら4つの分野で、全体のうち75%の価値が生み出されるという。
顧客対応分野では、生成AIの活用により現在のコストの30~45%に及ぶ価値の生産性向上が見込まれている。その額は、3,400億~4,700億ドルに上る。
この分野では、すでにいくつかのスタートアップが生成AIを活用したツールを展開しており、顧客企業における顧客対応の生産性向上を実現している。
注目株の1つは、2017年にシリコンバレーで設立されたPathlightだ。Pathlightは、顧客との会話をすべて把握し、AIでそれを分析することで、隠れた洞察、ビジネス機会、リスクを掘り起こすAIネイティブな顧客対応ソリューションを提供する企業だ。
共同創業者でCEOを務めるアレクサンダー・クヴァンメ(Alexander Kvamme)氏は、シリコンバレーにあるメンロー高校を2006年に卒業し、デューク大学に進学、その後アーリーステージ向けのエンジェル投資家として、ベクトルデータベース企業Chromaなど複数のスタートアップの支援を行っている。
公開情報は少ないが、スタートアップ分析企業Gorwjoによると、記事執筆時点のPathlightの従業員数は47人、年間売上高は推定520万ドル、従業員1人あたりの推定売上高は11万ドルとなっている。これまでの累計調達額は、3,420万ドルだ。
Pathlightへの注目度が高まり始めたのは、生成AIトレンドが勢いづき始めた2023年4月頃。顧客対応に特化した生成AIツールをいくつかリリースしたことで、米テックメディアでの登場頻度が増えていった。
Pathlightが注目される理由
Pathlightが注目される理由の1つは、生成AI分野で関心高まる「AIエージェント」を組み込んだツールを開発し、それを実際に顧客に提供しており、AIエージェントのユースケースと可能性を提示しているからだ。AIエージェントをどう活用するのかという議論は、生成AI界隈ではホットトピックとなっており、さまざまな試みが実施されている。ユースケースを特定し、実装・展開する事例はまだ少ない。
AIエージェントが注目されるきっかけを作ったのは、2023年4月頃に登場したAutoGPTなどの一連のChatGPT自動化ツールだ。マイクロソフトが最近、独自のAIエージェントフレームワークAutoGenを発表するなど、テック大手でも関心が高まっている。
AutoGPTは、OpenAIの大規模言語モデルであるGPT-3.5やGPT-4などにAPI接続し、ユーザーが「目標」を与えると、目標達成までの手順を明確にして、その手順をステップ・バイ・ステップで自律的に実行する自動化ツール。
たとえば、特定領域における市場調査レポートを作成したい場合、その旨を「目標」として与えると、AutoGPTは、まずWebサイトを調査し情報を集め、その情報をもとに価格・特徴・優位性・欠点などを評価、一定以上の評価を付けた製品のみを調査レポートにまとめるなどといった手順を提案する。
ユーザーがその提案を受け入れると、あとは目標を達成するまで、自律的にプロンプトを生成し、各ステップを実行していく。
これをChatGPTを使って手作業で進める場合、Webサイトを検索するプロンプトを入力するだけでなく、各製品の価格・特徴・優位性・欠点を分析・評価するプロンプトを、ユーザー自身で入力する必要がある。また、適切ではない結果が生成されない場合、同じ作業を繰り返す必要があり、多大な労力がかかってしまう。
Pathlightは、AutoGPTと同様の仕組みを顧客対応ツールに組み込み、AIエージェントが人間の代わりにカスタマーデータを分析する仕組みを作り上げたのだ。 【次ページ】AIエージェントが24時間365日データ収集・解析を行う
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