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あらゆるモノが相互接続するIoTでは、強力な標準化が普及の大きなカギを握っている。半導体製造においては、デジタル化とネットワーク化が早い時期から実現されているが、その実現を支えてきたのは半導体業界がエコシステムとして開発した規格「SEMIスタンダード」だ。そこで、IoT時代におけるSEMIスタンダードの位置づけと利点を整理することで、半導体以外の現場にも有効な活用方法を探っていく。
古くから標準化が進んだ半導体から、IoTは何を学べるのか
あらゆる産業を巻き込んで進展するIoTには、その「標準化」が強く求められている。2016年12月に開催された「SEMICON JAPAN」で、横河ソリューションサービスのソリューションビジネス本部 ビジネスマネジメント部 部長 藤沢 尚人氏が登壇。ひと足早くデジタル化・ネットワーク化が進んだ半導体製造において、広く利用されている業界自主基準「SEMIスタンダード」(SEMI規格)が果たした役割と利点を整理することで、IoTの標準化の道筋を紐解いた。
横河ソリューションサービスは、計測・制御機器分野で世界的なシェアを持つ横河電機の国内販売・エンジニアリング部門と、保守サービスを実行する横河フィールドエンジニアリングサービス、情報エンジニアリングを担ってきた横河ソリューションズを統合し、2013年4月に誕生した会社だ。なぜ、同社の藤沢氏が「IIoT階層モデルにおけるSEMIスタンダードの位置づけと利点」といったテーマで語るのか。
「IoTとはデータを仮想化・デジタル化して扱っていくということでもある。半導体の製造においては、製造装置とデバイスメーカーとの間で『SECS』(SEMI Equipment Communications Standard)や『HSMS』(High Speed SECS Message Services)といわれる通信手段を介してインターネットでのやりとりがあり、これまでもさまざまななことをデジタル化してきた。そこでこのような分野を応用すれば、IoTの世界でも何かいいことがあるかもしれない、と考えた」(藤沢氏)
IoT活用には、新しく得られたデータを使うビジネスが生まれるという面もあるが、製造業視点でIoT活用を見ると、自分が作っているものがネットワークにつながること自体で付加価値が付く、という面もある。「特に半導体製造における製造ラインの付加価値向上という点で、SEMIスタンダードが果たしてきた役割について解説してきたい」と藤沢氏は語った。
なぜ半導体製造にSEMIスタンダードが導入されたのか
従来からの製造管理システムは、ミッションクリティカルな部分を管理したり、24時間365日稼働する必要があったり、ジャストインタイムでものが届いて製造ができる世界を実現するというのが領域だった。そしてこれにIoTが加わると、いろいろなデータを取ってきて、そのデータを使い、外の世界とつながって、リモートからオペレーションをしたり、改善レポート、統計解析を行い、そのデータをフィードバックする、といったことができるようになる。
半導体製造においては、かなり昔から製造装置の動きを管理するシステムを構築してきた。藤沢氏は「半導体製造におけるSEMIスタンダードがなぜ作られてきたかというと、早くデータをデジタル化しないと扱えなかったからだ」と語る。
何百もの工程を繰り返して半導体は製造されるため、今どこの作業をしているのかが分かりづらい。製造されているモノを見ても分からないので、その状況を知るためにはデータ化する必要があった。しかしそのデータ量は非常に膨大になるので、1か所にまとめて管理することはできない。
ほかにも製造現場ではクリーンルームを導入せざるを得ないが、クリーンルームはコストがかかるので24時間365日動かしたい。また半導体製造装置自体が高価で、早く設備投資を回収したいという考えも起きる。そんな高い装置を使っているのにもかかわらず、微細化、集積密度により製造プロセスはどんどん変わっていく。すると製造工場の装置も入れ変わってくる。製造装置が入れ替わってもラインがつながるようにするために、スタンダード化が必要となった。このためデータをデジタル化し、ネットワークにあげて管理するという方式が早くから採られたわけだ。
【次ページ】 スタンダードが決まることで生まれた効果
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