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  • 2016/10/11 掲載

コトラー教授が日本に4つの提言、「日本はIoTでリーダー的な役割を果たせる」

World Marketing Summit Tokyo 2016 #wmsj2016

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「マーケティングとは経済成長のけん引役だ。マーケティングはものをつくった後のものではなく、何をつくるべきかということそのものになった。最高マーケティング責任者(CMO)は、製造責任者との時間をもっと増やすべきだろう」──都内で開催されたWorld Marketing Summit Tokyo 2016の基調講演で、「現代マーケティングの父」、フィリップ・コトラー教授が指摘した。コトラー教授は日本が抱える課題と、その解決に向けた日本の4つのチャレンジについて語った。
ビジネス+IT編集部 松尾 慎司

ビジネス+IT編集部 松尾 慎司

 World Marketing Summitとは、「マーケティングで世界をより良く」をスローガンに、世界各国からのマーケティング第一人者、経営者、マーケティング学者を招き、社会や経済の発展を促すマーケティングの活用について議論する国際会議。今年で5回目の開催となり、日本での開催は3年連続で3回目、そして今年が最後の日本開催となる。

 2016年のテーマは「成熟市場で成功するマーケティング/Marketing in the Developed Markets」。日本は少子高齢化の進む先進成熟市場で、その中で人々のニーズは多様化し、企業には次の段階のマーケティングが求められている。そこで今回、国内外の有識者約40名が「成熟市場で成功するためのマーケティング」について、11日、12日と2日間かけて話し合う。

 ここではまず、フィリップ・コトラー教授の基調講演の模様をお伝えする。

日本の課題とは何か

photo
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院
SCジョンソン国際マーケティング
ディスティングイッシュトプロフェッサー
フィリップ・コトラー氏
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 日本が長期的な停滞(Secular Stagnation:セキュラー・スタグネーション)からどう脱出するべきか。その前に日本の課題について触れておきたい。安部首相が掲げた3本の矢、金融政策、財政政策、構造改革のうち、特に深刻なのが「構造改革」だ。その中には特に大きな3つの問題がある。

 1つ目は、教育システムの問題だ。日本の教育システムは暗記に偏っている。日本人はものを覚えるのが得意だが、新しいアイデアを生み出せるようにクリエイティビティに軸足を置くべきだ。また日本の教職制度はうまくいっておらず、よい先生に置き換えていくプロセスが滞っている。

 2つ目は、保育施設の不足だ。子供を持ちたいと思っても、両親が仕事をしながら子供を育てるのが難しい。子供の世話をしてくれる人がおらず、その質が不十分だ。

 最後の3つ目は、高齢者の問題。引退後にどうするのかという問題だ。高齢者の面倒をみることができる施設が不十分だ。

 こうした構造的な問題があって家族が厳しい状況に立たされている。もっと子供を作りたいと思っても、もっと親の介護をしたいと思ってもできない状況になっている。

日本が取り組むべき4つのテーマ

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今年で5回目となるWorld Marketing Summit。
 日本は今後も成長できるのか、これが1つ目のテーマだ。経済成長の問題は、日本だけでなく、世界にかかわる問題だ。世界の成長が停滞していることを考えると、日本の急成長を考えるのは厳しいと考えられる。米国のサマーズ元財務長官などは悲観的な見方をしている。

 シュンペーターの言葉を借りると、構造を作って、新しい産業を作って、創造的破壊をして、みんなが参画してはじめて経済が拡大する。

 一方で楽観論者もいる。「楽観主義者の未来予測(Abundance)」の著者で、X Prize Foundationやシンギュラリティ・ユニバーシティを設立したピーター・ディアマンディス氏によれば、「ロボティクス、その他テクノロジー、ナノテク、バイオテクノロジーなどを考えてみると、人類はこれからとても豊かな時代に突入しつつある。したがって、飢餓も貧困もなくなるだろうと彼は主張している。

 2つ目のチャレンジは、日本がどういった業界に軸足を置いて成長するべきかということ。

 まず日本の最大の強みは自動車業界だろう。これだけ多くの国内に競争相手がいるところはない。トヨタ、日産、ホンダなど優秀な企業がたくさんある。日本は自動車業界で今後もリーダー的な役割を果たし続けていくだろう。

 しかし、自動車業界はまったく新しい脅威にさらされている。たとえば米国でも若い人々は「自動車の所有」に対する関心が薄れている。たとえ自動車を買う人であっても、中古車を買うようになった。実際、米国では中古車の品質が保証されるようになっている。また、ウーバーの登場が挙げられる。ニューヨークの街中で自動車を所有するぐらいであれば、ウーバーのような(ライドシェア)サービスを利用すればよいという考え方になっている。自動車業界は重要な業界だが、このような大きな変化にさらされている。

 次に有望なのがロボティクスだ。新しいポートフォリオにおけるスター業界で、今後も注目すべき領域と言える。また、製薬でもリーダーシップを発揮できるだろう。

【次ページ】CMOは製造責任者と過ごす時間を増やせ
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