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- 2016/01/08 掲載
消滅寸前の「限界集落」、孤独死・買い物難民・老老介護 それでも続く打開への挑戦
買い物難民対策で宅配サービス
中身は1か月分の酒とたばこ。急な山の斜面に建つこの家は町の中心から遠く、なかなか買い物にも行けない。山仕事の疲れを癒すささやかな楽しみは、注文した商品を自宅まで配送してくれる宅配サービスに頼っている。
このサービスは高知県長岡郡大豊町の「おおとよ宅配サービス」。大豊町商工会と町内にあるヤマト運輸高知嶺北センターが2012年に始めた。住民が加盟店に商品を注文すると、ヤマト運輸が宅配してくれる仕組みだ。
大豊町商工会によると、町内の約100世帯がサービスを受け、毎月120件ほどの利用がある。加盟店は10店。配達費に町が補助金を出すため、住民負担は150円で済む。利用者は高齢者がほとんどだ。
免許を持たない高齢者にとって、買い物が最大の悩みになっている。タクシーで町外へまとめ買いに行く人さえ少なくない。大豊町岩原の無職三谷美智子さん(60)は「家族でただ1人運転免許を持っている夫が病気で倒れ、買い物に行けなくなった。宅配サービスがあり、生活できる」と喜んでいる。
町内には小さな商店がいくつかあるが、店主が高齢化し、配達できなくなったところも少なくない。買い物難民の住民だけでなく、高齢化した商店主にもうれしいサービスだ。JR大杉駅前で商店を営む大豊町高須の久保繁雄さん(66)は「配達なしで営業が続けられる宅配サービスはありがたい」と笑顔を見せた。
町のほとんどが限界集落
町内には85の集落が点在する。うち69が限界集落、15は55歳以上が過半数を占める準限界集落だ。55歳未満が過半数の存続集落はわずか1つで、1集落は既に消滅した。11の集落では世帯数が10戸を割り、共同体の機能が失われようとしている。
独り暮らしの高齢者が死亡し、3週間後に発見されたことがあった。電動4輪車で路上に転倒した高齢者が救助されたのは5時間後。都会ではとても考えられないようなことが、日常茶飯事になりつつある。
宅配サービスが高齢化した地域の暮らしを支えていることは事実だが、働く場所の乏しい山村に若者は戻ってこない。大豊町商工会の宮中克典経営指導員は「これから先、町はどうなるのだろうか」と不安を口にする。
【次ページ】故郷と人をつなぐ「絆」さえ消失
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