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- 2025/01/31 掲載
羽田に勝てない「成田空港」、返り咲ける?「改造計画」の中身
貨物輸送で国内1位の成田空港
成田空港から日本に出入りするのは、もちろんヒトだけではありません。「海外旅行の出発地」というイメージが強くて忘れられがちかもしれませんが、コンテナを含むモノを運ぶ貨物輸送においても、成田は日本の最重要拠点の1つといえます。
国際航空の貨物取扱シェアは56.3%(重量ベース)。68.2%(金額ベース)と、国内で圧倒的なシェアを占めています。
また、港湾と合わせた日本の貿易港ランキング(輸出額・輸入額の総合)でも、成田空港は3位の名古屋港(10.7%)、2位の東京港(10.8%)を大きく引き離して首位(16.0%)となっています。
ヒトの輸送のほうも活況です。インバウンド需要の増加に伴い、成田空港の外国人比率は55.3%(2019年)から72.7%(2023年)に大きく上昇しました。また、観光庁によると、訪日外国人旅行者数は2022年の383万人から、2023年は2507万人へと急増。さらに同庁では2030年までに6000万人との目標を掲げており、「観光先進国」に向けた首都圏空港のさらなる機能増強を促しています。
周辺の鉄道網についても、さらなる利便性向上の検討が進んでいます。「『新しい成田空港』構想検討会」が2024年7月に公表した報告書では、日本中からより気軽に成田空港へとアクセスできるようにするための新駅の設置案が打ち出されました。
この新駅について報告書では、新旅客ターミナルに直結、単線区間の解消、2030年代前半の供用開始といった案を示しています。関係者間の調整は簡単ではないにせよ、一連の整備プロジェクトを通じて国内での成田空港の存在感は一層高まることになるでしょう。
近隣国に押され気味な2つの理由
一方で「世界の中の成田空港」に目を転じてみると、明るい話題ばかりではありません。世界における航空貨物の取扱量ランキングにおいて、成田空港は1989年には1位でしたが、2022年には香港、仁川(韓国)、上海浦東(中国)、台湾桃園に次いで5位。上位は維持しているものの、アジア圏の他の主要空港にシェアを奪われ少しずつ順位を落としている現状があります。
近年、日本の空港利用をめぐる環境は大きく変化しています。その環境変化を大きくアジア圏における空港間競争の激化、日本のコンテナ港湾の国際競争力の低下という2つの観点から現状と課題を整理してみましょう。
・アジア圏における空港間競争の激化
近年、アジア圏の輸送拠点としての重要性がヒト・モノともに高まっています。世界の航空旅客輸送量の予測(2018年~2037年)は、世界全体の伸び率4.5%/年に対して、アジアは5.3%/年での伸長が見込まれています(日本航空機開発協会による)。
その中で、アジア圏における空港間競争が激化しており、仁川国際空港(韓国)、上海浦東国際空港(中国)、香港国際空港、チャンギ国際空港(シンガポールなど)アジア各国の主要空港における近年滑走路の新設、ターミナル拡張などの動きが相次いでいます。その中にあって、日本の空港整備は後れをとっている現状があります。
トランプ大統領の再就任によって国際的な物流環境が再び大きく変化する可能性もある中、経済安全保障の観点からも、成田空港の存在感を一層高めておく必要があるのです。
・日本のコンテナ港湾の国際競争力の低下
世界の港湾のコンテナ取扱個数ランキングを見ると、かつて1980年には神戸港が4位、横浜港が13位と上位にランクインしていましたが、2019年では東京湾が39位、横浜港が61位と低下傾向にあります。それに対して、航空貨物の取扱量ランキングにおいては成田空港が世界のトップ10を堅持しており、今後においても国際航空貨物の競争力を維持・強化する必要があります。
またヒトの輸送についても、成田空港においてはトランジット旅客の割合が37.0%と羽田(16.3%)、関西(0.3%)に比べて高く、このトランジット旅客のさらなる取り込みも課題となっています。
こうした環境変化を受け、これまでも首都圏空港(羽田・成田)では日本版オープンスカイ政策の推進などによるキャパシティー拡大に取り組んできました。2010年10月以前には52.3万回だった年間発着枠は、今日では82万回まで拡張。しかし国交省によると、首都圏空港の発着回数は2032年には94万回に達するとの需要予測もあり、ヒト・モノ両面において航空需要の長期的な増加を見込んだ対策が求められています。
そこで、成田空港では、空港機能の強化を図る計画を打ち出しています。
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