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ビッグデータの活用は、企業に新たなビジネスチャンスをもたらそうとしている。しかし一方で、ビッグデータは分かりにくい、ピンとこない、場合によっては面倒くさいと考える企業もあるようだ。ガートナー リサーチ部門 バイス プレジデントの鈴木雅喜氏は「実際にビッグデータを採り入れて、本当に成功している企業はほんの一握り」と指摘した上で、「だからといってまだ重視しなくてもいいと思っているなら、いずれ逃げ惑うしかなくなる」と取り組みの遅れに対して大きな警鐘を鳴らす。
ビッグデータは産業革命に匹敵するインパクト
ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2014にて登壇した鈴木氏は「ビッグデータは市場に現れた一匹のライオン。何も準備をしていなければ、逃げ惑うしかなくなる」と切り出し、「ビッグデータの活用は当たり前になる。もう止められない流れだ」と指摘した。
ただしその取り組みにおいては、十分な注意が必要だという。
「ビッグデータの活用で今一番陥りやすい罠は、短い時間軸の中で成果を出そうとし過ぎてしまうこと。そうではなく、未来を見据えてどうやっていくのか、というところが非常に重要になる」
また鈴木氏は、ビッグデータは産業革命が世の中にもたらした変化に匹敵するほどのインパクトを社会に与えるものだと強調する。
「18世紀半ばに起こった産業革命によって機械化が急速に進み、大量生産が可能になった。しかし反面、それまで大変重宝されていた熟練工が不要になってしまった。今、それと同じぐらい大きな変化が目の前に広がろうとしている。まさにデジタル産業革命だ」
たとえば、2020年までに知識労働者の3人に1人が、彼ら自身によって訓練されたスマートマシンに自分の職を奪われるという。
「コンピュータは単純に計算するだけでなく、学習するようになる。非常にショッキングな話だが、これが実際に起こるという前提で物事を考えていく必要がある」
こうしたデジタル産業革命の中で、ビッグデータは非常に大きな役割を果たすことになる。
「ロボットの記憶力はほぼ無限。その経験値をビッグデータによって高めていくことができる。また瞬時に最適化された答えを出すことができ、しかも絶対に疲れない。巨大なデータが未来を変える可能性がある、今できそうにないこともできてしまう可能性があるということだ。頭の中の古い枠組み自体を壊していく必要がある。待っているという選択肢はもうあり得ない」
ビッグデータの活用は長い時間軸の中で考えることが重要
続いて鈴木氏は、「ビッグデータという言葉は日本でも常識になったが、“ビッグデータは企業を成長させる”という一番大事なところまで理解している人はまだ少数。これからが正念場」だと指摘した。
2013年8月にガートナーが国内の従業員数500人以上の企業に対して行った調査によれば、6割近い企業がビッグデータに取り組むようになったが、そのほとんどが情報収集や検討、もしくは試行段階にとどまっているという。
ビッグデータの活用を阻む要因としては、予算や時間がない、自社に技術力がない、ベンダの力不足などが挙げられるが、「失敗した場合の責任を誰がどう取るのか、あるいは成功が認められないといった組織上の問題点が、取り組む人のモチベーションに大きく影響しているようだ」と説明する。
それではビッグデータの活用における失敗とは何なのか。
「たとえばビッグデータ活用の実証実験をして、結果を得るまでの過程の中で事業部門の人たちと一緒に取り組む形を作ることができ、組織的にいい体制ができたとしたらそれは大成功だ。仮に結果を活かせなかったとしても、それで失敗だったと決めつけてしまうのは長い時間軸の中で見た時には問題がある。現在から未来まで時間軸を長く伸ばし、その視野で考えることが重要だ。簡単に諦めるわけにはいかないという前提のもと、進めていただきたい」
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